72 弱肉強食
「うぃーす」
居酒屋へ入るような軽いノリで、魔王がいる部屋へと入るレオ。
「なんだこれ暗っ。マジで何も見えねぇじゃん」
そこは光一つ無い、完全な闇に覆い尽くされた部屋だった。普通の人間であれば何も見えないところだが、「盗賊」であるレオはスキル「暗視」を発動し、暗闇の中を突き進んでいく。
「想像以上に広いが、マジで何もねぇな。本当にここに魔王がいやがんのか?」
退屈を紛らわすように独り言を口にするレオ。だが、しばらく歩き続けても、景色は全く変わらなかった。
「え。もしかして俺迷子? あーマジか。なんか急に帰りたくなってきたな。つか普通に飽きた」
退屈した様子でそう口にし、地面に寝っ転がり始めるレオ。挙げ句の果てに欠伸までし始める始末。そのまま寝てしまいそうな勢いだった。
「スーテーラーちゃーんーすきだー。……駄目だ飽きたわ。しゃーねぇ。壁とか見当たらねぇし、床ぶっ壊しまくって下から魔王城の外に出るとするか」
退屈がピークに達したレオはそのまま起き上がり、魔王城から出る事を決意した。しかし、外に出る為に地面に向かって拳を叩きつけようとした、その時だった。
「──ッ!!?」
今まで感じた事の無い、得体の知れない冷たい気迫のようなものを感じ取るレオ。「暗視」を使っても尚、その実体を捉える事はできなかったが、レオは感覚でソレの正体に気が付いた。
「間違いねぇ……魔王だ」
人の恐怖心を最大限まで煽ってくるような、捉えどころの無い冷たく暗い気配を感じ、レオは狂気の笑みを浮かべる。
「やっと面白くなってきやがった……。今まで誰も見た事がねぇって噂の魔王。その姿……俺に見せてみろよ!」
レオはソレの気配を最も強く感じる方向へと視線を向けた。
しかし──
「は?」
ソレを視界に入れた途端、レオは思わず言葉を失ってしまった。
「……どうなってんだ。こりゃ間違いなく……。じゃあ、今までのは一体……」
情報を整理できず、まとまっていない言葉をそのまま口にしてしまうレオ。
そして、ソレのさらに奥……無限に広がる闇の世界。その果てにあったのは、あまりにも巨大な……
「……ふははははッ!!」
思わず声を出して大笑いしてしまうレオ。
「そういう事か……。それでお前らは……。ふはははッ!! 確かにこりゃ勝ち負けって話じゃねぇな!! まさかこんなモンが……!!」
想像を絶する光景に、口が裂けそうになるほど口角を上げ、歪んだ笑みを浮かべるレオ。恐怖感、危機感……それらを感じれば感じるほど、この男は刺激的な快楽を得る。今、レオの脳内はまともな思考が吹っ飛ぶほどの快楽で満たされていた。そして……
「ヒリヒリすんなぁ。これまでの強敵がカス同然に思えてくるほどの絶対的な存在。そんな奴から全てを奪って生き残った瞬間こそ、俺は生を実感できる!!」
レオの背中から、二本の巨大な黒い腕が飛び出す。
「悪魔の強奪」。
あらゆるチカラを無慈悲に奪い、弱者の烙印とも言うべき呪いを相手に付与する、強者の頂点たり得る能力。しかし──
ぐちぶちゃっ
「──あ?」
肉が潰れてちぎれるような、とてつもない嫌悪感を抱かせるような音がした。それと共に、レオの背中から生えた二本の黒い腕がナニかに食いちぎられた。
「はあははははは!! んだよ今の!! ワケ分かんねぇ!! はははははッ!!」
レオですら全く理解できない正体不明の攻撃に「悪魔の強奪」はいとも簡単に無力化されてしまった。
直後。
レオの体が、奥から飛び出してきたナニかに掴まれる。
そして、無限の闇の果てへと引きずり込まれていった。
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