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71 好奇心


「……ここは」


 一方。激戦によって荒廃した魔王城のとある広間にて。七幻魔・序列二位のガイアが目を覚ました。


「お。気が付いた?」


 軽い口調でそう言ったのは、「ブラックファング」のリーダーレオ。地面に倒れているガイアの横で、まるで自室でくつろぐかのように膝を立てて座っていた。


「レオ……。お前、どうして俺を殺さなかった」


 ボロボロの状態で、口を動かすのもしんどいといった様子のガイア。レオはしばらく考える素振りをした後、どこか眠たげな顔をしながら答えた。


「気分?」


「フハハ……どこまでも、ふざけた野郎だ。『悪魔の強奪(バンダースナッチ)』だったか……。あんな無敵の能力を持っていながら、この俺相手に手を抜きやがって」


「別に無敵って訳じゃねぇけどな。『悪魔の強奪(バンダースナッチ)』は、俺が相手の能力やら技の発動を認識して初めて使えるスキルだからな。俺が視認できないほど速い攻撃や、俺の意識の外からの攻撃に対しては使えねぇ。それに、覚醒したトリガーのスキルは奪えねぇしな」


「……フハハ。お前ほどの戦闘力を持つ男に速攻や奇襲を仕掛けられる奴なんてほぼいねぇよ……。トリガーに至ってはそもそも存在自体が希少だしな」


 どこか呆れながら苦笑いを浮かべるガイア。


「まーそうかもな。だからクソつまんねぇんだよ、このチカラは」


 吐き捨てるようにレオが答えた。


「まぁアレだ。お前を殺さなかったのはそれが理由かもな。『悪魔の強奪(バンダースナッチ)』抜きじゃ俺はお前に勝てなかった訳だし」


「……フハハ。まさか、今度はトリガーの力抜きで俺にリベンジしようってか?」


「そーそー。どうせお前ら、またこんな感じで襲撃しに来るんだろ? そん時にもっかいやろうぜ」


「……フハハ。アホか。俺の力は全部お前が奪っちまったじゃねぇか」


「あー。それだったらお前が寝てる間に全部返しといたぜ」


「……フハハ。この戦闘狂が」


「テメェもな」


 敵同士にも関わらず、まるで戦友のように笑いあう2人。


「さぁてと。なんか戦い終わったらムラムラしてきたな。ステラちゃん探そ」


「結局性欲かよ」


「まぁな。3年前にコイツを手に入れてから、異常に性欲が強くなっちまって──」


 軽い口調で話していたレオだったが、ふと何かに気が付き、口を閉じた。


「なんだあれ?」


 レオの視線の先にあるのは、黒と金で装飾された異質な扉だった。


「なんか今まで見てきた扉と違うな。もしかして……」


「……フハハ。そうだ。お前の予想通り、あの扉の向こうには……」


 一呼吸置いて、ガイアはその言葉を口にした。


「……魔王様がいらっしゃる」


 異質な気迫を放つ扉を見て、レオは不敵な笑みを浮かべた。

 そして、ゆっくりと扉に向かって歩き始めた。


「待てレオ……。どうするつもりだ」


「言わなくても分かんだろ。正体不明の魔王様に突撃インタビューだ」


「レオ……。俺を強敵として生かしてくれたお前に一つ忠告だ」


 真剣な顔つきでガイアが続ける。


「生き残りたかったら、その先には行くな」


「……へぇ」


「お前ほどの強者は……こんなところで死ぬべきじゃない」


「俺が負けるの確定かよ。マジウケんな」


 貼り付けたような微笑を浮かべるレオ。口調は普段と変わらないが、その瞳には禍々しい破壊衝動が宿っていた。


「俺のチカラを全部把握した上で言ってんの? それ」


「……そうだ。どっちが強いとか、勝つとか負けるとか……そういう次元の話じゃない。あの扉の先に行っても、待っているのは死だけだ」


 過剰に脅している訳では無い。ただ事実を淡々と述べるガイア。自分が強敵と認めた男にまだ死んでほしくないという思い。しかし、それを聞いたレオは顔を歪ませ、さらに凶悪な笑みを浮かべていた。


「ワリィな。それ聞いたら、余計に脳汁がドバドバ溢れてきて止まんなくなっちまったわ」


「……フハハ。イカレてやがる」


 説得する事を諦め、ガイアは笑みを浮かべながらゆっくりと目を瞑る。

 そして、レオは一切躊躇することなく、異質な扉を抉じ開けた。



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