07 テッドVSマンティスカメレオン
「グシャァ!」
俺たちの前に現れた巨大なカメレオン型モンスターは、怪物じみた鳴き声と共に長い舌をこちらに向かって伸ばしてきた。
「中々速い」
だが対処できないほどではない。俺は伸ばされた舌に向かって、素早く大剣を振り下ろす。
しかし──
「柔軟な動きの割に、随分と固い舌だな」
真っ二つにしてやるつもりだったが、ぐにゃっとした柔らかさの中にある重厚感によって、大剣の衝撃が殺されてしまう。
カメレオンは弾かれた舌を続けて2度、3度と鞭のように放つが、俺はそれを大剣を軽く振るうことで弾いていく。
「シャァ!!」
鳴き声と共に、カメレオンの攻撃はさらに勢いを増していく。
「速度と威力は上がったが、所詮ワンパターン。芸の無いトカゲだな」
俺はダッシュを使いながら舌を躱し続け、カメレオンに接近していく。
そして、カメレオンの頭が大剣の攻撃範囲に入ったところで、俺は怪物の首目掛けて大剣を振る。
だが──
「消えた?」
カメレオンの姿は、一瞬で虚空の彼方に消えてしまった。
「気を付けてください! そのモンスターは自在に姿を消すことができます!」
後ろから、そんな女の声が聞こえてくる。
いや、それ言うなら相手が姿を消す前に言わないと意味ないだろ……なんて思ったが、まぁアドバイスなど最初から求めてはいないから、別に問題ないか。
「スキル『超音波』」
俺は道中でコウモリ型モンスターからコピーしたスキルを発動する。
詠唱と同時に、キィィンという甲高い音がダンジョン中に鳴り響く。
「うっ……この音は……」
音の強烈さに耐え切れず、思わず耳を塞ぐ女。
それと同時に、透明化したカメレオンが再び姿を現す。
「反響定位で位置を探ろうかと思ったが、それ以前にスタン効果の影響で透明化を維持できなくなったか」
体が麻痺して動けない様子のカメレオンに向かって、俺はダッシュを発動し、距離を詰める。
舌一つ動かせないトカゲの頭に向けて素早く大剣を振る。
これで終わり──
「キシャァ!!」
直後、カメレオンの背中が割れ、中から巨大なカマキリが姿を現した。
「な──」
カマキリの死神のような鎌が猛スピードで振られ、俺の体は真っ二つに切断されてしまった。
「え?」
「キシャアァ!!」
「そんな。う、嘘ですよね……?」
「グシャァ……」
「こ、来ないで下さい! 私は、こんな所で死ぬわけには……」
「グギシャァ!!」
「いやぁぁぁ!!」
足が震えて動けない女に近づいていく、カマキリとカメレオンのキメラ。
あと一歩で女の首がカマキリに切られる、という所で──
「魔弾」
俺は手を突き出し、闇属性の魔弾を放つ。
しかし、間一髪のところでキメラに躱されてしまう。
射線上にあった岩に魔弾が当たり、粉々に砕け散った。
「外したか」
「え……? あ、貴方。どうして……」
俺を見て、まるで幽霊でも見たかのような反応をする女。
「まさか背中からカマキリが出てくるとは、油断した」
「じゃなくて! 貴方、どうして生きてるんですか!? さっき、確かに真っ二つにされたのに……」
「トリックだ」
まともに説明する気が無い俺は、そう一言だけ言い残し、再びキメラへと向き直す。
「さて。不意打ちだったが、思わぬところで『不老不死』の力を試すことができた。お返しと言っては何だが、お前も真っ二つにしてやるよ」
「グキシャァ!」
カメレオンと背中のカマキリが同時に鳴く。それと同時に、フェンシングの突きのような勢いでカメレオンの舌が放たれる。どうやら真っ二つはお気に召さなかったらしい。
「もう見切ったが、いちいち鬱陶しい舌だ。少し大人しくしてろ」
舌を躱しつつ、俺は大剣を左手に持ち変える。
そして、空いた右手に力を込め、カメレオンの舌に手刀のような一撃を繰り出す。
「スキル『ダーククロウ』」
手刀と同時に発動したスキルによって、右手の爪が黒く染まり、刀ほどの大きさまで伸びる。
俺は黒刀のような爪でカメレオンの舌を突き刺し、地面に縫い留める。
「スキル『分裂』」
さらにスキルを発動し、2体に分裂。
カメレオンの舌をダーククロウで縫い留めておくのは分身に任せ、本体の俺はカメレオンに向かって──
「スキル『ダッシュ』&『バットウイング』」
蝙蝠の翼を生やし、さらにダッシュを使って高速飛翔した。
「キシャァ!」
高速で距離を詰めてきた俺に対して、素早く攻撃を仕掛けてくるカマキリ。
だが、残念ながら二度も同じ攻撃を食らう俺ではない。
翼を素早く収納し、体をのけ反らせてこれを躱す。
そして──
「スキル『筋力強化2』」
全身全霊を込めて大剣を振り下ろし、カマキリとカメレオンの体を縦真っ二つに切断した。
数秒後、切られたことに遅れて気が付いたかのように、キメラの体から鮮血が吹き荒れる。
「(あの人が使ったスキル……。魔狼にスライムにゴブリン、ヒキコーモリ……全部このダンジョンのモンスターのものでした。そして、肉体を切断されたにも関わらず、瞬く間に再生するあの生命力……)」
女が不気味なものでも見るかのようにこちらを見ている。
そして、ゆっくりと俺の元まで歩いてきた。
「……貴方、一体何者なんですか?」
女は怪訝な表情をしながらも、強気な口調でそう言った。




