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65 切り替え


 ポカリ街、結界の外にて。

 七幻魔の神楽、ガロウを退ける事に成功した防衛チーム(とレオ)。しかし、無尽蔵に現れるモンスターの勢いは未だ止むことは無い。


「はぁ……。キリが無い……。ホント冷める」


 「ホワイトパール」のメイド長ミラは、心底うんざりした様子で呟いた。

 それに対し、「ホワイトパール」のリーダーである白髪の美少年、アルトが答える。


「まぁ仕方無いよ。『魔法騎士団』の人たちがモンスター転送用の魔法陣を探してくれてるみたいだから、それが見つかるまで我慢だよ」


 そう言ったアルトは、自分とミラが入るくらいの小さな結界を作った。

 少し休憩しよう……という事らしい。


「ありがとうございます、アルト様……」


「大丈夫だよ。本当、いい加減うんざりしてきたよね。しかも……」


 アルトはどこか遠い目をしながら続ける。


「あの七幻魔のロリに逃げられた上、もう一体の大きなオオカミの七幻魔も彼女に回収されちゃったみたいだしね」


 苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべるアルト。

 七幻魔の序列三位である神楽と序列七位のガロウを取り逃がしてしまった事が余程悔しいのだろう。


「あの子、最初から逃走用の魔力は温存してたみたいだ。本当、舐めた真似してくれるよね」


「すみませんアルト様……。あの巨大なオオカミを逃がしてしまったのは、私たちの責任です」


「気にしなくていいよ。敵を逃がしてしまったのは僕も同じだ。それより、君たちが無事でよかった」


 アルトの一言に、常にクールなミラの顔がほんのり赤くなる。

 少し動揺しているのか、視線をきょろきょろさせるミラだったが、ふとあることに気が付く。


「あれ……アルト様。ステータスが……」


「あぁ、これかい?」



----------------------------------------



アルト


レベル:100


職業:魔法使い

副職:賢者(上級職・レベル150)

攻撃:300(3)

防御:300(3)

速度:300(3)

体力:200(2)

魔力:1000(10)



----------------------------------------




「職業と副職が入れ替わってる……?」


 元々、アルトの職業は上級職の『賢者』、『魔法使い』は副職なのだが、現在のアルトの職業は『魔法使い』となっており、パラメータも『魔法使い』のレベル100に準拠したものへと変化していた。


「いやぁ。実は七幻魔のロリとの戦いで調子に乗って天災級の魔法をボンボン使ってたら魔力が切れちゃってさ。今は本職である『賢者』を休ませてるんだ。まぁ、これが本当の賢者モードってやつかな?」


「本職を休ませる……? どういう事ですかアルト様……」


 子供らしからぬアルトのオヤジギャグ(?)をスルーし、ミラが疑問を口にする。


「そっか。まだミラには話してなかったね」


 そう前置きして、アルトはさらに続ける。


「『転職』の際、前職で得たスキルや魔法は副職として引き継がれる。これは『魔道戦士』に転職したミラならもちろん知ってる事だと思うけど、一部の強者は職業と副職を切り替える事ができるんだ」


「切り替える……?」


「そう。そしてこの切り替えの際に、パラメータが切り替えられた職業のレベルに合わせたものへと変化するんだ」


「確かに……今のアルト様のパラメータは『賢者』のレベル150のものから、『魔法使い』レベル100のものになっていますが……」


 パラメータを下げるだけの行為に何の意味があるのか、ミラには切り替えによるメリットがまだ理解できていなかった。


「確かに、職業と副職を切り替えても使用できるスキルや魔法に変化は無いし、副職のレベルが職業を下回っていたら、現在のパラメータをただ劣化版のものに上書きするだけで終わってしまう。けど体力と魔力のパラメータだけは、この上書きによる恩恵を受ける事ができるんだ」


「恩恵……。まさか、体力と魔力の回復……ですか?」


「その通り。ロリとの戦いで『0/1500』になった『賢者』の魔力が、切り替えによって『魔法使い』の『1000/1000』に上書きされる……つまり、一瞬で魔力を1000回復する事ができるのさ。まぁ魔力の最大値が1500から1000になっちゃうのは欠点なんだけどね。体力も同様だよ。『賢者』時『300/300』だった僕の体力は『魔法使い』の『200/200』に上書きされる。まぁ、さっきの戦いで僕はダメージを受けてないから、この場合は体力の最大値が減った上、現在の体力もその最大値と同じ数値になっちゃったけど。まぁ要は使い所が重要って事だね」


 なるほど……といった表情でミラが頷いた。


「ただ、この切り替えは一日にできて1、2回が限界だ。まぁ探せばもっとできる人はいるのかもしれないけど、僕はそのくらいが限界かな」


「……まさかそんな技術があったなんて、流石ですアルト様」


「まぁ僕はショタだからね。これくらいは当然さ。でも、君ならその内できるようになるよ」


「はい。ありがとうございます、アルト様……」


「はぁなんか疲れちゃった。ミラ、ぱふぱふして」


「かしこまりました、アルト様……」


 アルトの唐突過ぎる要求に対し、一切戸惑うことなく優しく微笑むミラ。ミラが膝を屈めて手を広げると、アルトは駆け寄ってミラの豊満な胸へと顔をうずめた。そんな中、その2人のやり取りを外から横目で見ている者たちがいた。


「おのれ邪悪なる使徒め! 我ら『魔法騎士団』が成敗してくれる!(あのガキ! ミラさんのおっぱいに顔面ダイブしてやがる! 羨ましい! あと甲冑脱ぎたい)」


「聖なる光よ! 魔王の下僕たちに裁きの鉄槌を!(いいなぁ、俺もあれくらい綺麗な顔した子供に生まれてればなぁ。あー帰ったらおっぱいのお店行こ。あと甲冑脱ぎたい)」


 甲冑の下から、まるで桃源郷でも見るかのようにその光景を目に焼き付ける「魔法騎士団」。そして……


「ギシャァッ!(おっぱい……あの美しく、優しく、柔らかい膨らみにそう名付けたお方に私は賛辞を送りたい)」


 「魔法騎士団」の攻撃を食らったモンスターは、死に際に光の速度で乳への思いを馳せていた。


「あーミラのおっぱいは最高だね」


 そんな連中の思いなど露知らず、アルトはミラの胸を満喫していた。


「ところでアルト様……」


「なんだい?」


「先ほど仰っていた切り替えですが……『ブラックファング』の『転生者』であるレオやゼキラにもできるんでしょうか」


 ふと、疑問に思った事をミラは口にした。

 アルトは、ミラの胸に顔をうずめながら答える。


「いや、レオとゼキラは『盗賊』一本でやってるからそれはないかな。まぁ仮に何かしらの上級職に『転職』したとしても、野蛮な彼らじゃその事に気づきもしないだろうね」


「仰る通りです、アルト様」


 そう言って、アルトの小さな頭をそっと撫でるミラ。

 だが、その冷たい瞳はアルトではなく、遥か上空の魔王城へと向けられていた。




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