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63 回顧


 2年前。

 僕、テッドは魔法学校を首席で卒業した。校長先生曰く、僕の卒業試験の点数はどうやら歴代最高得点だったらしい。僕の成績を見た校長先生は、卒業したら魔法学校で教鞭を執ってみないか……なんて言ってくれたけど、僕のやりたい事はもう既に決まっている。それは、冒険者になる事だ。僕たち人類を脅かすモンスター、魔族……それを束ねる頂点である魔王。誰かが奴らを倒さない限り、世界に本当の意味で平和は訪れない。

 奴ら魔王軍は、数年おきにいくつもの国や街を襲撃し、甚大な被害をもたらしている。確か、僕が魔法学校を卒業する1年前にも、どこかの王国が魔王軍によって襲撃されたって話だ。その際に、凄腕の勇者が魔王に挑んで行方不明になってしまったとかなんとか聞いたけど、恐らく返り討ちにあってしまったのだろう。そして、それを知った時、僕はある決意をした。そんな凄腕の勇者でも魔王を倒せないのであれば……僕がやるしかない、と。

 僕の卒業後の進路を知った校長先生と彼女であるノアは僕を心配してくれたけど、はっきり言ってそれは杞憂だ。自分で言うのもなんだけど、僕は魔法の才能に非常に恵まれている。その上、魔法学校を卒業した今も尚、魔法使いとしてまだまだ成長を続けている。歴史ある魔法学校を最も優秀な成績で卒業した、この僕がだ。つまり言ってしまえば、誰にも負ける気がしない……という事だ。まぁもし僕に勝てる人がいるとするならば、それは僕自身しかいないだろう。




 それからしばらくして。

 魔法都市を離れた僕は、晴れて冒険者となっていた。最初はパーティを組むのもありかと思ったけど、攻、守、支援の全てを一人で行える僕にとって仲間は不要なものだった為、今のところはソロの冒険者として活動を続けている。一応、ギルドにソロとして申請すればクエストを受ける事もできるみたいだけど、お金はモンスターからドロップするゴールドだけで事足りているし、いちいちギルドに顔を出すのは面倒な為、特に申請はしていない。

 そんなある日、いつも通りダンジョンでのレベル上げを終えて外に出ると、白衣の男女2人が出口で待ち構えていた。話によるとこの白衣の2人……と、その仲間たちは、魔王軍を倒す為の研究をしており、その為に優秀な冒険者を探しているらしい。正直怪しさ満載だった為、最初はスルーしようかと思ってたけど、2人から強く懇願された為、仕方なく協力してあげる事にした。まぁどんな研究をしているのかは気になるし、もし非道な研究をしているようなら、その時は僕が終わらせてあげないといけないしね。




 白衣の2人に付いていった先。そこは僕たちのいる世界とは別世界だった。先ほどまでいた場所とは別のダンジョンの最下層……そのさらに下の世界。そこは、無数の機材が並んだ科学の世界だった。魔法に比べると、まだまだ注目度の低い小さな分野だと思っていたけど、まさかここまで目を引くものだとは思ってもいなかった。幻想的な世界に呆気に取られていると、先ほどの白衣2人に別の部屋へと案内される。そこで、今この人たちが最も力を入れている研究について、掻い摘んで説明された。

 「クローン計画」という、優秀な冒険者をオリジナルとして分身(?)みたいなものを量産し、打倒魔王軍への戦力向上を試みている事。しかし、計画は難航していて、オリジナルと同レベルのクローンの生産に、まだ一度も成功していない事。その原因を探るべく、今は少しでも多くのデータを取っておきたい事。そんな事を説明された。長々と説明されたが、要は僕を実験体にしたいって事なんだろう。専門的な部分は全く分からないから、余計怪しく感じてきたけど、「魔王軍を倒したい」……という部分だけを信じて、僕はこの実験に協力する事にした。命を人工的に量産するという事が、果たして人道的に正しい事なのか、という疑問はあるけれど、人々の平和を脅かす魔王軍を倒したいっていう気持ちは僕も同じだしね。




 実験に協力して数日。

 地下施設の部屋の一つに寝泊まりしていた僕は、研究者たちの喜ぶ声で目を覚ます。どうやら、僕をベースとしたクローンを生み出すことに成功したらしい。しかも、今までのクローンに比べて遥かに高い数値を記録している上、どうやらそのクローンは、白衣の男たちの目標の一つであった「トリガー」と呼ばれる存在だったらしい。「トリガー」が何かは分からないけれど、まぁ最強の魔法使いである僕のクローンなんだし、今までのクローンとは出来が違くて当然だね。そんな風に心の中で自画自賛していると、僕の元へ何人もの研究者たちが駆け寄って来て、感謝の言葉を伝えてきた。最初はこの実験に対して半信半疑だったけど、ここまで感謝してもらえるのなら、協力した甲斐があったよ。




 どれくらいの時が経っただろうか。

 研究者たちは僕のクローンへの実験に夢中になっており、いつの間にかオリジナルの僕はデータを提供するだけの存在となっていた。まぁ結局、あれ以降僕のクローンほどの成功体は生まれてないみたいだし、研究者がここまで夢中になるのも分からなくはないけどね。そんなデータを提供するだけの日々に飽き飽きしてきた頃、この研究に大きな変化が訪れる。ここまで進めてきたクローン計画だが、どうやら本日を以て半永久的に凍結とするらしい。まぁ長々と続けてきたけど、結局、成功体は僕のクローンだけだし、そもそも正常にクローンが生み出せる確率も半分以下らしいし、当然と言えば当然か。結果が伴わなきゃ意味無いしね。

 じゃあ僕もようやくお役御免かな……と、思っていると、研究者の一人に声を掛けられ、別室へと呼び出された。話の内容は、僕のクローンの今後の事。そして……。

 



 地下施設から外に出た僕は、いつからか浴びていない日の光に目を瞑りつつ、ただ茫然と空を眺めていた。先ほどの研究者たちの話があまりにも衝撃的だったから、頭の整理が追いついていないんだと思う。


 今まで見えていた世界が180度一変してしまうほどの事実……僕は全てを知ってしまった。

 魔王軍の真の目的、そして、この世界の真実を。

 しばらく呆然と座り込んでいると、いつの間にか目の前にいた謎の3人組に声を掛けられた。男1人に、女2人だ。女の内一人はどこかで見た事あるような気がしたけど、頭の中が真っ白になり過ぎて、上手く思い出せなかった。


 この時の僕はまだ知らなかった。

 この3人との出会いが、僕の人生を大きく変えてしまう事を。

 そして後に、僕は自分自身を失い、新しい自分へと生まれ変わることになる。



お読みいただきありがとうございました!

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