61 レオVSガイア
「何だこれ。可愛い子が3人も倒れてやがる」
広間をざっと見渡すレオ。
その途中で、スカーレットの髪を鷲掴みにしているガイアと目が合う。
「フハハッ! 随分派手な登場だな! 何者だお前!?」
「レオ。お前こそどちらさん?」
「フハハッ! そうかお前がレオか! 俺は七幻魔の序列第二位! ガイア様だ!」
「わお、いきなり第二位か。こりゃほっつき歩いた甲斐があったかもな。つーか声デケェなお前」
レオはどこか楽しそうに笑いながら、視線をガイアから外す。
その刹那──。レオの姿がその場から消え、瞬間移動でもしたかのようにガイアの目前へ現れた。
「(──ッ!? コイツ速──!)」
「とりま放せよ、それ」
レオの弾丸のような凄まじい蹴りが、ガイアの顔面に直撃する。
蹴りの威力だけで大気が震え、衝撃で思わずスカーレットの髪を放してしまうガイア。
その一瞬の隙に、マシンガンのような勢いで拳を叩き込むレオ。あまりの威力に後ろへ吹き飛ばされそうになるガイアだったが、脚力で衝撃を押し殺し、その場に踏み止まる。
「……マジ硬ぇな。なんだお前」
手応えの無さに首を傾げるレオ。
「フハハッ! 俺の『硬化』に生半可な攻撃は通用しねぇ! まして素手の攻撃なんて……」
そう言いかけた直後。
一瞬、足に力が入らなくなり、思わずよろけてしまうガイア。
「(コイツ……。僅かだが、『硬化』越しに俺にダメージを……?)」
レオの凄まじい攻撃力に驚き、思わずレオのステータスを確認するガイア。
そして、大口を開けて笑い出した。
「フハハハハッ!! すげぇなオイ! レベル270で、しかも魔力以外のパラメータがほぼ最高値とは! こりゃとんでもねぇバケモノが現れたな!」
驚きつつも、どこか嬉しそうに話すガイア。
「フハハハッ! 俺も何百何千と戦ってきたが、お前クラスの相手は今回が初めてだ! もしかして、魔王城の結界を破壊したのはお前か!?」
嬉々として語るガイアだったが、レオの反応は薄い。
「あーあれか。確かにぶっ壊したが、俺が壊したのは多分スペアの方だ。メインのさらに頑丈な結界を壊した奴は別にいるぜ?」
「なんだと!? 嘘つくんじゃねぇよ!」
「嘘じゃねーよ。だって俺遅刻したもん」
あっけらかんとそう口にするレオ。
それを見て、ガイアは何かを考えるような素振りをする。
「そういや『レッドホーク』や『ブラックファング』が侵入してきたとき、レオは来てないって言ってたような気がするな! だが『レッドホーク』や『ブラックファング』だけで直ぐに破壊できるような結界じゃないしな! かといって、今回のメインターゲットのテッドって奴はジャスパーと同程度の強さだって言うし……フハハハ! 全然分からないな!」
「あのさー。独り言ぼやいてるつもりなのか知らねーけど、声デカすぎて丸聞こえだぜ?」
「フハハ! 構いやしねぇさ!」
レオの指摘を豪快に笑い飛ばすガイア。
大声で笑いながら、ガイアはさらに続ける。
「しかし、それだけの戦闘力があるならよォ! 職業は『盗賊』じゃなくて『格闘家』の方が良かったんじゃねぇか!?」
「ワリィが、俺は型にはめられた戦い方が好きじゃねぇんで」
ガイアの疑問に対し、レオは首をコキコキ鳴らしながらそう答えた。
「さてとさーてと。折角だし、ついさっき手に入れた新作ちゃんでも試すとすっかねぇ!」
直後。レオの腕が光り輝く。
そして、どこから取り出したのか、十メートル近くある巨大なハンマーを手に持つレオ。
「フハハッ! そのハンマー……七幻魔候補のギガスのものだな!」
「名前は知らねぇな。多分そうなんじゃねー……の!!」
巨人のハンマーを軽々と振り回し、ガイアに連続攻撃を放つレオ。
ガイアはこれを避けずに真正面から受け止めるも、その凄まじい衝撃に耐え切れず、モグラたたきのように何度も地面に叩きつけられてしまう。
「そらそらそォらァ!! このままじゃモグラどころか、薄っぺれェ紙切れみたいになっちまうぜーー!?」
「この威力に動き……ギガスの攻撃をほぼ完璧に再現してるな! いや、下手したらギガス以上だ! フハハッ! 全く大したモンだ! だが……」
レオの怒涛のハンマー攻撃を食らいながらも、余裕の笑みを浮かべ、片腕を軽く上げるガイア。
すると、凄まじい勢いで振り回されていたハンマーの動きがピタリと静止した。
「あ? なんだこれ。直接触れてもねぇのに……」
ハンマーと共に空中に浮遊したまま動けなくなるレオ。
直後。重厚感のある巨大なハンマーが、何らかの力によって、ぐにゃり……と曲がり始める。
「空間ごとハンマーが捻じ曲がってる……?」
「フハハッ! 今度は俺の番だぜ! 吹っ飛べェ!!」
そう叫び、ガイアは裏拳で大気を殴りつける。
すると、先ほどと比較にならないほど空間が大きく捻じ曲がり始めた。そして、ねじ曲がった空間から大気の津波が発生し、レオの体を大きく吹き飛ばした。あまりの衝撃に、レオが持っていた巨大なハンマーは粉々に砕け散ってしまった。
「いってぇな」
だが、当のレオは何事もなかったかのように直ぐに起き上がる。
「なんだ今の攻撃。空間魔法の類か? デタラメな攻撃しやがるな、お前」
「フハハハッ! 楽しんでもらえたみたいで何よりだ!」
「そうだな。摩訶不思議でサイコーだったよ」
適当な空返事をしながらも、レオはガイアについて分析を始める。
「(アイツの『硬化』は土属性……なら弱点は風か。だが、最初の打撃みてぇな打ち方じゃダメージは微々たるモンだな。さっきのハンマーみてぇに、力を外部ではなく内部に浸透させるような攻撃を再現する。そして、それを空間攻撃を回避しつつアイツに叩き込む……)」
僅か数秒足らずで分析を終えたレオは、両腕を前に突き出す。
すると、レオの両腕を小さな竜巻のような魔力が包み始めた。
「フハハハ! 俺の『硬化』が土属性だと気づいて風属性の魔力を纏ったか! だが、いくら弱点属性でもそんな小さな魔力じゃ俺には届かないぜ!?」
大声で笑うガイアだったが、レオはそれを鼻で笑う。
「生憎と俺は魔力量が少ない上、魔法の才能が皆無なんでな。風属性の大魔法で攻撃……みたいな事はできない訳だが……」
首をコキコキ鳴らしながら、レオはさらに続ける。
「魔力なんざ最低限ありゃ十分だ。攻撃、防御、速度、体力……テメェのパラメータを高める事こそが、全てをねじ伏せる膂力となるのさ」
「フハハ! 中々面白れェ事言うな! ならその膂力とやらを見せてもらおうじゃねェか!!」
ガイアが思い切り大気を殴りつけると、空間が捻じ曲がり、巨大な衝撃波が発生する。
だが、レオはそれを凄まじい速度で移動しながら躱し、ガイアの懐に潜り込む。
「流石に速いな! だが無駄だぜ!」
ガイアの全身を黒い光沢が覆っていく。
それは、全ての攻撃を防ぐ「硬化」が発動した事を意味している。
だが、レオはそれに構うことなく、風を纏った渾身のボディーブローをガイアに叩き込んだ。
「──ッ!? ぐふっ!?」
レオの打撃の威力に耐え切れず、ガイアの体が宙に浮いた。
なんとか衝撃を押し殺し、吹き飛ばされずに済んだガイアだったが、ダメージに耐え切れず、着地と同時に大きく膝を着いてしまう。
「ハッ! 楽しくなってきたな」
膝を着いたガイアを見下ろしながら、レオは無邪気に笑った。
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