60 レッドホークVSガイア
一方。
魔王城のとある広間では、「レッドホーク」と七幻魔・序列二位であるガイアによる激戦が繰り広げられていた。
「蛇拳・キングコブラ!」
「奥義・アグニの舞!」
リンリンの掌底とスカーレットの連続突きがガイアに直撃する。凄まじい衝撃によって吹き飛ばされ、壁へと激突するガイア。しかし、2人の技をモロに食らっておきながら、ガイアは何事も無かったかのように起き上がった。
「フハハハ! 中々強力だな! 悪くねぇ!」
起き上がったガイアの全身は、漆黒の光沢によって塗りつぶされていた。それを見たスカーレットが、疲弊しきった様子で口を開く。
「『硬化』……全身の硬度を高め、防御力を極限まで上昇させる力。まさか、こんなシンプルな能力がここまで脅威になるとはな……」
「すみません……。本当はそんな事思ってないですけど、あんなに攻撃を叩き込んだのにノーダメージだと少し心が折れそうです……」
立ち上がったガイアを見て、戦意を喪失しかけるスカーレットとリンリン。それを見たガイアが豪快に笑い出す。
「フハハハ! どうしたお前ら! こんな調子じゃ俺にかすり傷一つ付けられないぜ!?」
「『風魔法・魔空弾』!」
直後。魔法詠唱と共に巨大な空気の大砲が放たれ、ガイアに直撃する。
しかし、ガイアはこれを再び「硬化」で防ぐ。
「あーあ。不意打ちでも駄目かぁー。『硬化』も厄介だけど、反応速度も尋常じゃないねー」
後衛から「魔空弾」を放ったノアがゆったりとした口調でそう言った。
「どうするノア……。ここまで攻撃してノーダメージとなると、これ以上攻撃しても……」
「うーん……」
唇に指を当て、考える素振りをするノア。
「あいつの属性は闇と土。そんで『硬化』は土属性の能力。つまり本体と『硬化』に共通する弱点である風属性で攻撃すれば、結構ダメージ入ると思ったんだけどなぁ……。弱点属性を食らってここまでノーダメージだと、最早絶対防御の域だよねぇ……」
今度はこめかみの辺りを指でぐりぐり押しながら、ノアはさらに続ける。
「でも、私たちの攻撃を必ず『硬化』で防いでるという事はぁ、逆に言えば生身の状態で攻撃を食らったら、流石のアイツでもダメージ入るって事だよねぇ……。つまり、アイツが生身の瞬間に不意打ちすればぁ……」
「ノア……それができるなら、今こうして苦戦していないぞ」
「だよねぇ……ごめん」
お手上げ……といった様子で髪をわしゃわしゃと掴むノア。
それを見たガイアが豪快に笑い出す。
「フハハハ! どうだ、相談は済んだか!?」
「まだかなー。あと30分くらい待っててぇー」
「オイオイ長ぇよ! こういうのは5分考えて何も出なかったら諦めるのが賢明だぞ!!」
「じゃあ5分待ってー」
「フハハ! 仕方ねぇな!」
とても戦闘中とは思えない弛緩したやり取りを終え、ゆっくりと横になるガイア。
視線はレッドホークを捉えてはいるものの、完全にリラックスモードだ。
「すいません。本当はそんな事思ってないですけど、私たち本当舐められてますね」
「残念だが認めるしかないな……。奴は私たちより遥かに格上だ。奴が手を抜いていなかったら、私たちはとっくに殺されているだろうな」
「だねぇー。というか、手を抜いた状態で防御も反応速度も超一級品って、正直嫌になる──あっ」
突如。ノアが何かを閃いた表情を浮かべる。
「どうしたノア。何か思いついたのか?」
「一応思いついたー。耳貸してぇ」
耳を傾けるスカーレットとリンリン。
ノアは小声で作戦を2人に伝える。
「なるほど! というか、本当は思ってないんですけど、そんな事できるならなんでもっと早くやらなかったんですか?」
「あーそれはごめん。正直、火力でゴリ押しする事に躍起になり過ぎてて、視野が狭くなってたかも」
「いや大丈夫だ。流石だノア、その作戦で行こう」
「でもぉ、私の魔力もそろそろ底を突きそうだからぁ、ぶっちゃけこれがラストチャンスになるかなぁ。だから2人共、ばっちし決めてよね」
そう言って、ノアは2人の背中に軽く触れる。
「『強化・攻撃』&『属性付与・風』&『強化・風』」
ノアが詠唱すると、スカーレットとリンリンの全身をノアの魔力が覆っていく。
それを見たガイアが、笑いながら起き上がった。
「おっ!? 相談は済んだみてぇだな!!」
「そうだねー。ようやくそのバカデカい声とおさらばできそうだよ」
ノアがそう言った直後。
スカーレットとリンリンが、疾風の如し速度でガイアの元へと突っ込んでいく。
「フハハッ! オイオイ! これじゃさっきと何も変わらねぇじゃねぇか! 呑気にお喋りでもしてやがったのか!?」
「どうだろうねー……」
そう言って、ノアは両腕を前に突き出す。
「『精神魔法・バリカナシ』!!」
ノアが詠唱した直後。
ガイアの体が、時を止められたかのようにピタリと動かなくなった。
「(なんだ!? 体が動かねぇ! 『硬化』も使えねぇし……まるで金縛りにでもあったみてぇな……!)」
「今だよぉ! 2人共!」
指一つ動かせない生身のガイアの前に、スカーレットとリンリンが姿を現す。
「虎拳・アルティメットタイガー!!」
「奥義・炎竜爆風斬!!」
ノアの風の魔力によって強化された2人の渾身の一撃が放たれ、生身のガイアへと直撃──
「オラよっと!!」
──する直前で、動けない筈のガイアが両腕をバッと突き出した。
たったそれだけの動きで、直接触れていないにも関わらず、スカーレットとリンリンの動きが空中で静止してしまう。
「なんだ……! 体が動かないっ……」
「すみません! なんで空中に浮いたまま体が動かなくなるんですか!?」
思わず動揺を口にするスカーレットとリンリン。
それを見て、ガイアがニヤリと笑う。
「いやぁ、まさか精神魔法で俺の動きを封じてくるとはな! お前、中々優秀な魔法使いだな! もっとレベルを上げりゃ、かなりイイとこまでいくんじゃないか!?」
「あはは、ありがとぉ……。ていうか、なんで動けるの貴方……。金縛りは?」
「フハハッ! もちろん気合で解いた!」
「なにそれぇ……デタラメすぎるよぉ……」
規格外すぎるガイアの力に、ノアは思わず下を向いて意気消沈してしまう。
「フハハッ! 中々楽しめたぜルーキー共! 次はもっとレベルを上げてくるんだなァ!」
そう言って、ガイアは掌をグッと握ると、何かを引っ張った。
直後。離れた場所にいるノアの体が、ガイアに向かって引き寄せられ始めた。
「(な、なにこれ!? 見えない何かに掴まれて引っ張られてる!?)」
凄まじい速度でガイアの元へと引き寄せられるノア。
数秒足らずで、ノアを目前まで引き寄せたガイアは、再び何かを掴むような動作をすると、両腕を思い切り地面に向かって振り下ろした。
「メテオォッ!!」
ガイアが叫んだ直後。
空中で固定されていたスカーレットたちが、凄まじい衝撃と共に地面に叩きつけられた。
隕石が直撃したかのような衝撃に、3人の体は巨大なクレーターと共に地面にめり込んでしまう。
「さぁて! 『レッドホーク』の『転生者』は確かスカーレットだったよな?」
そう言って、気絶したスカーレットの緋色の髪を掴み、持ち上げるガイア。
「他の奴らも回収してるかもしれねぇが、まぁ『転生者』が多い分に越したことはないだろ! 早速魔王様の元へ──」
ガイアが言いかけた、その直後だった。
ドガアァン!! ……と、大砲が撃たれたかのような衝撃音と共に、広間の壁が吹き飛ばされた。
「なんだァ!?」
破壊された壁に目を向けるガイア。
すると、衝撃によって巻き上がった粉塵の向こう側から、「ブラックファング」のリーダー、レオが姿を現した。
「おーいステラちゃーん! いるなら返事してくれ……って、なんだこの状況?」
崩壊した広間を見て、レオは呑気にそう口にした。
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