58 私怨
ドラム街
「ブラックファング」が所属するギルド付近にあるスラム街。
幼少期、「ブラックファング」とサルタナはこの街で暮らしていた。
レオがやって来る少し前。
モンスターの大軍を倒した「ブラックファング」の前に、「レッドホーク」の元リーダーであるサルタナが姿を現した。
「お前……サルタナか! 久しぶりだなぁオイ!」
「あ゛? サルタナって誰だよ」
「ブラックファング」の一人がサルタナを見て叫ぶも、ゼキラは未だに思い出せていない様子。そんなゼキラを見た「ブラックファング」の一人が口を開く。
「ほら。昔俺らがドラム街にいた時に2個下くらいのガキがいたろ。覚えてねぇか?」
「……あぁ、ガキの頃俺らでサンドバッグにしてた弱虫か。そういえばいたなそんな奴」
ようやくサルタナの事を思い出した様子のゼキラは、猛獣のような目つきでサルタナを睨みつける。
「で。そのサンドバッグがなんでこんな所にいやがんだ? またぶっ殺されに来たのか? あ゛?」
「は。相変わらず知性の欠片も無い奴らだな」
ゼキラの威圧に一切動揺することなく、サルタナは続ける。
「なんでも何も、あの頑丈な結界を破壊してくれたのは他でもないお前らだろ?」
「……まさかテメェ、ずっと尾けてやがったのか?」
「元々はスカーレットたちを殺す為にポカリ街へ来たんだが、まさかお前らまで来てるとは思わなかったよ。本当、嬉しい誤算だぜ。まぁ魔王城に入って早々、別々の場所へ飛ばされることになるとは思わなかったけどな。おかげで探すのに苦労したぜ」
歪んだ笑みを浮かべるサルタナ。
そんなサルタナの表情が気に入らなかったのか、ゼキラはサルタナをさらに鋭く睨みつけ、舌打ちをする。
「で? テメェはなんで俺たちの方へ来たんだよ。殺してェのはスカーレット……『レッドホーク』の連中じゃなかったのか?」
「分かってねぇな脳筋ゴリラ。言っただろ、嬉しい誤算だってよ。ガキの頃から……俺はお前らを殺したくて殺したくて仕方なかった。スカーレットたちも当然殺すが、最優先はお前らだ」
「くくく。随分と恨まれてんなァ。心当たりはまるでねェが」
悪魔のような笑みを浮かべるゼキラ。
そんなゼキラを睨みつけながら、サルタナが口を開く。
「つーかレオはどうした? お前らいつもアイツに金魚の糞みてぇにくっついてたじゃねーか」
「さぁな。今頃オンナと遊んでるんじゃねぇの」
「女遊び? アイツが?」
納得がいかないといった様子のサルタナ。それを見たゼキラが薄く笑う。
「まァ驚くのも無理はねェ。今のアイツはテメェが知ってるレオとは別人だ。3年前のあの時からずっとな」
「3年前?」
「テメェが知る必要はねェ」
そう言って、巨大な手甲鉤を装備するゼキラ。他の「ブラックファング」たちも一斉に武器を構え始める。
「さァてクソガキ、お喋りはここまでだ。久しぶりに会ったと思ったら、随分とクソ生意気な口利くようになったなァ……あ゛ぁ゛!? また一から力関係教えてやっからよォ……後悔しろやクソガキ」
「サールタナちゃぁん! また指の爪ひん剥いてやるからよぉ! 楽しみにしとけよォーー! ギャハハ!」
下卑た笑い声を上げる「ブラックファング」。
それを見たサルタナは不気味な笑みを浮かべる。
「……ははは。安心したよ。テメェらが変わらず……いや、ガキの頃以上のゴミクズになっててくれて」
直後。サルタナの背後から巨大な邪気が放出される。
形の無い邪気は徐々に何かを形作っていき、やがてそれは、数メートルほどの黒紫の巨人へと姿を変えた。
「なんだ……このバケモノは……」
突如サルタナの背後に現れた巨人の威圧感に、思わず言葉を失うブラックファング。
サルタナは無機質な目でそれを眺め、小さく笑った。
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