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53 最強の盗賊


 結界を破壊し、魔王城へと侵入したレオとステラ。

 そこに待ち受けていたのは……


「ヒャッハァ! ようこそいらっしゃい冒険者共よ!」


「飛んで火にいる夏の虫とはこの事だなぁ! げひゃひゃ!」


 200体以上の重装備した魔族の大軍だった。


「治安わりーな、こいつら」


「あ、貴方がそれを言いますか……? というかとんでもない数ですよ! しかも全員AランクやA+ランクの魔族ばかり……」


 200対2。あまりの戦力差に顔面蒼白になるステラに対し、レオは欠伸をしながら気だるそうにステラの前に出る。


「さぁて。じゃあ準備運動がてら、こいつらを片付けるか。下がってろよステラちゃん」


「まさか一人でやるつもりですか!? 無茶ですよ! 私も加勢します!」


「マジで? ステラちゃん、戦いとか苦手そうだけど」


「確かに戦闘は苦手ですが、回復や強化バフのスキルはある程度使えるので、サポートとしてはお役に立てるかと……!」


「やっさしいなぁステラちゃん。けどマジで心配ねぇよ。雑魚の数合わせなんざ、何百いようが俺の敵じゃねぇ」


 首をコキコキさせながら、さらに前に出るレオ。

 そんなレオを見て、魔族たちは腹を抱えて笑い出す。


「ひゃっははは! 女の前だからってカッコつけてんじゃねぇよ! この数相手に……しかも魔具まぐで武装した俺たち相手に勝てると思ってんのかぁ!?」


「オイお嬢ちゃぁーん! この兄ちゃんぶっ倒したら次はお前だからよォ! そこでブルブル震えながら見てなァ! ひゃははは!」


「ひっ……」


 怯えるステラを見て、レオの顔から笑みが消えた。


「そこでいいのか?」


「はぁ? 何がだよ」


 誰に向けて放った言葉なのか分からず、思わずレオに聞き返す魔族たち。


「ロクに距離も取らず、そんな悠長に構えてていいのかって聞いてんだけど」


「何を訳分かんねぇ事言ってやがる! オイ、さっさとやっちまおうぜぇ!」


「ヒャッハァ!!」


 掛け声と共に、魔族の大軍が一斉に押し寄せてくる。


「そうか。なら、ちゃんと盗られないように気ぃ張っとけよ」


 そう言って、レオは片腕を軽く前に出す。

 そして、拳を軽く握りしめた。


「『強奪スナッチ』」


 レオがそう口にした直後。

 200を超える魔族たちの装備が、一瞬にして消え去った。


「はっ!? おいちょっと待て! 俺のデビルソードとデビルアーマーが消えたぞ!?」


「俺のダークアックスもねぇ! テメェ何しやがった!?」


 全ての装備を奪われた魔族の大軍に動揺が走る。


「ハハッ。だーから言ったろ。盗られないように気を付けろってよ」


 魔族たちが慌てふためく様子が面白かったのか、愉快そうに笑うレオ。


「テメェまさか……盗賊か!? どうりで……」


「けどよぉ! 一度に200以上の対象から武器を盗める盗賊なんて聞いたことあるか!?」


「おいおい。俺をそこらのコソ泥と一緒にすんじゃねぇよ」


 手首をぶらぶらさせながら、レオは呆れた様子で続ける。


「さーてと。中々いい武器が揃ったが、残念ながら俺の強化に繋がるレベルの物は無かったな。仕方ねぇ……」


 レオが軽く腕を振ると、いつの間にか、その手には紫色の剣が握られていた。


「少しは楽しませろよ、ザコ共」


 直後。

 レオの姿がその場から消え、一瞬にして魔族の大軍の中心へと現れた。


「てめっ! いつの間に──」


「デビルスラッシュ」


 残像すら視認できぬほど凄まじい速度で、刹那の間に十数体の魔族が細切れにされてしまう。


「な、なんだ今の!? いくらなんでも速過ぎる!」


「しかもデビルスラッシュは俺の技だぞ! なんでテメェが使えるんだよ!?」


「さぁな。つーか使ってみたけど大した技じゃなかったな。返すわ。『返還リターン』」


 直後。先ほどまでレオが使っていた紫色の剣が、魔族の一人の頭を貫いた。

 そして、レオの手にはまた別の武器が握られていた。


「そォら! どんどん行くぜ!」


 その光景を目の当たりにし、ステラは呆然と立ち尽くしていた。

 たった一人の人間が、次々と武器を切り替えながら、200体以上の魔族の大軍を一方的に葬っていく。

 ステラの目には、レオの姿が魂を狩り尽す死神のように映っていた。


「はぁ。なんだ、マジで頭数だけだったな。歯ごたえねぇぜ」


 レオは、200を超える死体の山を退屈そうに見下ろしながらそう言った。




----------------------------------------



レオ


レベル:270


職業:盗賊

攻撃:2700(10)

防御:2430(9)

速度:2700(10)

体力:2430(9)

魔力:540(2)



【スキル】

強奪スナッチ

相手の武器を奪う、盗賊の基本スキル。

奪える武器のレベルと数、また強奪スナッチの精度は使用者のレベルに比例する。


模倣ミメーシス

強奪スナッチで奪った武器の技を模倣するスキル。



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「(な、なんですか。このバケモノじみたレベルとステータスは……。一体どれだけの高ランクモンスターや魔族を倒したら、ここまで強く……)」


 レオのステータスを「鑑定」で確認したステラは、思わず唖然としてしまう。


「(しかも……奪った武器の技をコピーできるなんて……系統は違うけど、まるでテッドさんみたい……。この人もしかして、単純な戦闘力ならテッドさんより上なんじゃ……)」


「終わったぜ、ステラちゃん」


 何事も無かったように、軽いノリで話しかけてくるレオ。


「待たせて悪かったな。じゃあデートの続きしようぜ」


「何がデートですか! そんなのした覚え──」


 直後。

 ステラの頭に電気が流れるような衝撃が走る。痛みに耐え切れず、ステラは反射的に頭を押さえる。


「どしたん?」


「頭が……いったぁっ……!」


「マジか。あ、頭痛にはキスが効果的らしいぜ。する?」


「なんですかその嘘……。しま……せん!」


 唇に顔を近づけてくるレオを払いのけるステラ。

 すると、今度は小さく何かを呟き始めた。


「……危ないです」


「なんて?」


「ジャスパーさんの魔力が弱まっている……。このままじゃ危ない!」


 明後日の方向を見ながら、ステラは慌ただしく叫んだ。




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