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52 タイプの女


「あの人がレオ……『ブラックファング』のリーダー……」


 アルト以外の「ホワイトパール」総出でも倒せなかったガロウを、着地の衝撃だけで倒してしまったレオを見て、思わず息を呑む「ホワイトパール」のメイドたち。そんな中、唯一平静を保っていたミラが口を開く。


「貴方、今までどこで何してたの?」


「おぉ、ミラちゃんじゃん。久しぶり、元気だった?」


「……そんなのいいから質問に答えてくれる? 冷めるから」


「相変わらず冷てぇな。何してたっつわれてもな。別に女と遊んでただけだぜ?」


 遅刻した事を一切詫びることなく、淡々とそう答えたレオ。すると今度は、ミラを含む「ホワイトパール」のメイドたちをまじまじと見始めた。メイドたちは思わずレオから視線を逸らす。


「な、なんですか……」


「よく見たらすげぇ可愛い子ばっかじゃん。お前ら「ホワイトパール」だっけ? あんなガキがリーダーやってるパーティなんて辞めてさー、俺らのパーティに来いよ」


「お前! アルト様を侮辱するな!」


 ミラ以外のメイドたちが一斉に武器を構え、即座に戦闘態勢に入る。


「つーか、なんだこのバカデケェ犬っころ。敵?」


 殺気全開のメイドたちだったが、レオは一切気に留めることなく、自分の下敷きになっているガロウを見てそう言った。


「……敵どころか、それ魔王軍の幹部だから。七幻魔の第七位。ホント冷める」


「は、これが七幻魔? なんだ全然大した事ねーな」


 あっけらかんとした様子でそう口にするレオ。

 すると……


「皆さん! 大丈夫ですか!?」


 少し離れたところから、小走りでステラが駆けつけてきた。


「『魔法騎士団』の皆様に『ホワイトパール』さんのサポートに向かってほしいと言われたのですが……わぁ! で、でっかいオオカミが倒れてる!? なんですかこれ!」


 状況を見るや否や、あたふたと騒ぎ始めるステラ。そんなステラを見て、レオが口を開く。


「お前、誰?」


「へ? わ、私はステラっていいます……というか……貴方こそ、誰ですか?」


 ライオンと対峙した子犬のように怯えるステラ。

 レオはステラの問いにすぐ答えず、ただただステラを黙って見つめる。


「な、なんですか?」


「お前……超可愛いな。俺と付き合おうぜ」


「……へ?」


 あまりに唐突なレオの言葉に、ステラは一瞬硬直してしまう。

 そして……


「ええぇぇぇぇ!?」


 声を上げて驚いた。


「な、なんですか急に! まだ出会ってから1分も経ってないですよね!?」


「そんなの知らねーよ。ステラちゃん、マジでタイプだからさ。なんか小動物みてーだし、アホっぽそうなところもマジ好みだわ」


「な、なんか褒められてるようでディスられてるような……」


「んな事ねぇよ。これでも褒めてるつもりだぜ? じゃあ決定。お前今日から俺の女な」


「なぁっ!? だ、駄目です! そんなの無理に決まってます!」


 近づいてきて肩に手を回そうとしたレオを、思い切り払いのけるステラ。


「えーなんでだよ。彼氏いんの? じゃあそいつ殺すから俺と付き合おうぜ」


「さらっと物騒な事言わないで下さい! 彼氏は……い、いないですけど! 好きでもない人と付き合うのは駄目なんです!」


「え、それマジで言ってんの? 超ピュアじゃん。尚更気に入ったわ。やっぱ付き合おうぜ」


「全然聞いてない!? だから駄目なんですって!」


「レオ。ステラさんを困らせないで……冷めるから」


 間に割って入ってステラを助けるミラ。

 だが、そんなミラを無視して、レオは話を続ける。


「つーかステラちゃんってどこのパーティ所属してんの? 『ホワイトパール』? まさかソロじゃねぇよな?」


「わ、私は『バイオレットリーパー』というパーティに……」


「はぁん。で、ステラちゃんの仲間って今どこにいんの?」


「私の仲間は……今、魔王城で戦っています」


 そう言って、遥か上空の魔王城を指差すステラ。


「へーそうなんだ。よし、じゃあ今から一緒に行こうぜ」


「え? それってどういう……きゃっ!」


 いつの間にかステラの背後に回っていたレオは、強引にステラを抱きかかえる。


「レオ……ステラさんはこっちの防衛チームだから、連れてくのは駄目。ホント冷めるから」


「防衛チーム? あーそういや、ここ来る前に立ち寄ったギルドのねーちゃんたちも、チームがどうとか言ってたな。まぁ関係ねぇけど」


「関係大有りです! 大体、ここからあんな高い場所にある魔王城までどうやって行くつもりなんですか!?」


「普通にジャンプで。じゃあ行くぜステラちゃん」


 脚に力を込め始めるレオ。

 たったそれだけの動作で、地面がビキビキと割れ始める。


「ちょっ!? 私まだ行くなんて言ってな──」


 直後。

 ステラを抱えたレオが、ロケットミサイルのような勢いで跳躍した。

 跳躍の衝撃により大地が砕け、ソニックブームが大気をビリビリと震わせる。凄まじい速度で飛んで行ったレオは、瞬く間に点となって見えなくなった。


「な、なんて男なのッ──! やる事なす事滅茶苦茶すぎるッ──!」


 衝撃波が生んだ爆音に思わず耳を塞ぐメイドたち。


「ホント……台風みたいな男だね。取り敢えず……ステラさんが可哀想すぎてホント冷める」


 「ホワイトパール」のメイドたちは、空の彼方に消えていったステラに思わず合唱した。




◇◆◇




 魔王城のさらに百メートルほど上空まで跳躍したレオ(と抱きかかえられたステラ)。


「これが魔王城か! 随分とデケェな!」


「嘘でしょ!? ホントにジャンプだけで着いちゃうなんて!!」


「さーてと! じゃあカチコミかけるとするか……ってなんだありゃ?」


「へっ!?」


 魔王城の周辺には、半透明の巨大な結界が張られていた。


「そ、そんな! 結界は突入チームの皆さんが壊したって聞いたのに!」


「へぇ。じゃあもう作り直したって事か。仕事がはえーな」


「そうですねー……なんて言ってる場合じゃないですよ! このままじゃ落ちちゃいますって!」


 跳躍の勢いが失われていき、レオとステラの体が徐々に落下し始める。


「よし、じゃあ結界ぶっ壊すか。ステラちゃん、ちょっと待ってろよ」


「へ!? こんな頑丈そうな結界をどうやっ──」


 ステラがそう言いかけた直後。

 レオは抱えていたステラを、思い切り上空にぶん投げた。


「え、えぇぇぇぇぇぇぇっ!!?? ちょっと!!? レオさあぁぁぁん!!?」


「だいじょーぶだって! すぐ終わっから」


 そう言ったレオは、大気を蹴り飛ばし、凄まじい速度で結界に向かって跳んでいく。

 そして……


「そォらッ!!」


 魔王城の結界を思い切り殴り飛ばし、たった一撃で粉々に粉砕してしまった。


「嘘っ!? あの結界をたった一撃で……って言ってる場合じゃないです! このままじゃパラシュート無しのスカイダイビングプレイヤーになってしまいます!! 落ちるぅぅぅぅ!!!」


 加速しながら落下していくステラ。

 それを見たレオは大気を蹴り飛ばしながら、落下するステラをキャッチし、そのまま魔王城を乗せた島の上へと着地した。


「楽しかった?」


「楽しい訳ないじゃないですか!! 危うく死ぬところだったんですよ!? 投げるなら投げるって先に言ってくださいよ! 怖かったじゃないですか! うわぁ~ん!」


 泣きじゃくりながらレオをぽかぽかと殴るステラ。


「まぁそう怒んなって。あ、待てよ? こういうのって、確か吊り橋効果って言うんだよな? もしかしてステラちゃん、俺に惚れた?」


「なんでそうなるんですか! 惚れてません!! いいから降ろしてくださいよ!」


「ははっ、なんか懐かねーペットが駄々こねてるみたいで可愛いな。可愛いからもう降ろしてやんねぇ」


「なんでですか!? は、恥ずかしい! 降ろしてくださぁい!」


 レオの手の中で生まれたての赤ん坊のように泣きじゃくるステラ。

 そんなステラを余所に、レオは先ほどまで結界が張ってあった場所に目を向ける。


「(今の結界が急ピッチで作り直されたモンだとするなら、時間をかけて作った元々の結界はさらに頑丈だった可能性が高いな。だが、それが壊されたって事は、ゼキラたちと同行したパーティの中に相当ヤる奴がいるって事か。ゼキラたちじゃ、今の結界ですらぶっ壊すのに相当時間がかかるだろうからな)」


 突入チームにいる強者の存在を感じ取ったレオは、思わずニヤリと笑った。


「楽しくなってきやがった」


「何がですか!! いいから降ろしてぇ!」


 じたばたと暴れるステラを抱えながら、レオは魔王城へと歩いて行った。




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