51 ショタVSロリ
以下、属性魔法の相性です。
炎←水←雷←土←風←炎
光⇔闇
以上です。
「わらわの技をいとも簡単に防ぐとは……そうか、この頑丈な結界を作ったのはお主じゃったのか」
アルトのステータスを確認し、納得のいった表情をする神楽。アルトはそれに特に答えることなく、宙に浮いた玉座に座りながらミラへと話しかける。
「大丈夫かい、ミラ。君がここまで追いつめられるなんて、あの子相当強いんだね」
「アルト様……どうして」
「愛するメイドのピンチに、主が駆けつけないでどうするんだ。『回復』」
アルトはそう言って、ミラに向かって手をかざす。ミラの体が徐々に緑色の光に包まれていく。
「ありがとうございます。アルト様」
「礼には及ばないよ。それより、あっちの戦いに加勢してあげてよ。いくら彼女達でも、七幻魔の相手はキツイだろうからさ」
「かしこまりました、アルト様」
ミラはそう言うと、ガロウの相手をしている「ホワイトパール」のメイドたちの元へと向かっていった。
「さて、待たせてごめんね。ここからは僕が相手をしよう」
「レベル150の賢者……『転生』を2度迎えた強者か、これは楽しめそうじゃのう」
これまで涼しげな表情を見せる事が多かった神楽だったが、強敵であるアルトを前にして、玩具を与えられた子供のような無邪気な笑みを浮かべる。そんな神楽に対し、アルトは不愉快そうな表情を浮かべる。
「随分余裕そうだね。全生物の頂点であるショタを前にして、何様のつもりだい?」
「こんな理不尽な喧嘩を売られたのは生れて始めてじゃわい……。まぁ、お主が何を以てショタを頂点と定義しておるのかは知らぬが……」
一呼吸置いて、神楽はさらに続ける。
「それで言ったらわらわはロリじゃぞ。しかも和服ロリ。どう考えてもショタであるお主より、わらわの方が需要あるに決まっとろう」
「へぇ……面白い事言うね、君。じゃあショタとロリ……今からどっちが上かケリをつけようか」
互いに睨み合うアルトと神楽。妙な切り口から始まった2人の戦い……先に動いたのは、神楽の方だった。
「神風!」
神楽が手に持った扇子を素早く振るうと、巨大な竜巻の矛がアルトに向かって放たれる。竜巻の矛は大地を削りながら、神速の勢いで突き進んでいく。
「火、壁」
対するアルトは極端に短い詠唱を唱える。すると、巨大な火の壁が発生し、竜巻の矛からアルトの身を守った。それを見た神楽は、思わず感心した表情を浮かべる。
「ほう。それだけ詠唱を省略してここまでの魔法を発動させるとは、賢者の名は伊達じゃないのう」
「お褒めに預かり光栄だね」
「じゃが……残念ながらお主には致命的な弱点がある。それは……」
神楽がそう言った直後、神楽の姿がその場から消え──
一瞬にして、アルトの目の前に姿を現した。
「鎌風!」
蝶のように軽い動きで舞った神楽は、流麗な動きで扇子を何度を振るう。踊り子の舞踏のように美しい動きと共に、無数の風の刃がアルトを襲う。しかし……
「僕の弱点ねぇ」
無数の風の刃は、アルトが発生させた炎の壁によって防がれてしまった。
あっけなく散っていった風の刃を見ながら、アルトはどこか呆れたように口を開く。
「大方、君が接近戦に持ち込もうとしたのを見るに、僕の弱点は魔力以外のステータスの低さ、つまり直接的な戦闘に弱い事……とでも言いたかったんだろうけどさぁ、ホント……勘違いしてるよ君」
アルトは退屈そうに欠伸をしながら、目の前の神楽に向けて言い放つ。
「汗臭い肉弾戦なんて、今どき時代遅れなんだよ。攻撃やら防御やら……あんなステータスはお飾りさ。この世の中は、魔力を高め、魔法を極めた者が勝つようにできてるんだよ」
「ほう。随分と言い切るではないか。なら、魔法を極めたお主の実力とやら……見せてもらおうかのう!」
先ほど同様の素早い動きで神楽が舞う。
しかし、放たれたのは無数の風の刃を放つ「鎌風」ではなく……
「鏡花水月!」
今回、神楽が放った技は「鎌風」ではなく、水の斬撃を無数に放つ「鏡花水月」だった。アルトが風属性と相性のいい炎属性の壁で攻撃を防いでくることを見越しての攻撃だったのだが……
「電気、壁」
それを読んでいたアルトは、神楽が「鏡花水月」を発動させるのと同時に雷の壁を生み出し、これを防いだ。
「悪いけど、こんな幼稚なハッタリで僕の裏をかこうなんて百年早いよ」
「ふふっ、中々辛辣じゃな。ならお遊びはこの辺にしておくとするかのう」
「負け惜しみ?」
「ふふっ。いや、本当の事じゃよ」
神楽はそう言って、アルトと再び距離を取る。
そして、禍々しく強大な魔力を全身に纏い始めた。
「五大属性奥義・画竜点睛!」
神楽が全身に纏った膨大な魔力が、4匹の巨大な風の龍へと姿を変えていく。そして、それぞれの龍の表面が、炎、水、雷、土の魔力によって覆われていく。その光景はまさに天変地異そのものだった。
「すごい……この世の災害をまとめて再現してるみたいだ……」
先ほどまで神楽を小馬鹿にしていたアルトだったが、現実離れした凄まじい光景を前に、思わず感心の言葉を口にする。
「はっはは! これがわらわの全力じゃ! さぁどうする小童よ! この規模の攻撃から、仲間を守りながらわらわを倒す事ができるか!?」
高笑いしながらそう口にする神楽。
しかし、アルトは首を傾げる。
「……? ごめん! そっちの龍がうるさくてよく聞こえないから! 取り敢えず消すね!」
そう叫んだアルトは、両手を合掌させ、先ほどの神楽よりも遥かに強力な魔力を纏い始めた。
「魔神の手・千手観音!」
アルトが詠唱した直後。
強大な魔力により、空間に歪が生じる。さらに、不可視状態の巨大な無数の腕がアルトの背後から飛び出し、神楽が司る4匹の龍をいとも簡単に消し飛ばしてしまった。
「なっ……!?」
暗雲に包まれていた空が、雲一つない晴天へと姿を変えた。
「バ、バカな! 今のはわらわのとっておき……あらゆる強者たちを幾度となく葬ってきた最強の技じゃぞ! それを……こうも簡単に消し去るなど、あり得ぬ!!」
「おーやっと聞こえた。まぁ君の声が聞こえようが聞こえまいが、僕のやる事は変わらないんだけどね」
そう言った後、一呼吸置いて、アルトは魔法の詠唱を始めた。
「火、ギガファイヤーボール。水、アクアドラゴン。雷、サンダータイガー。土、エンシェントゴーレム。風、ウインドフェニックス。光、シャイニング……ガトリング。闇……えーと、ダーク……ブラスト。あとは……」
アルトが詠唱する度に、巨大な炎の球体や、巨大な水の龍など……出鱈目な規模の属性魔法が次々と発動していく。
「ま、待て! お主! そんな超ド級の大魔法をそんなポンポンと! いくらお主でも、そんなの魔力が持つわけがッ──」
「全然持つよ。なんたって、僕はショタだからね」
意味不明な理屈を口にしたアルトは、凄まじい大魔法の連撃を神楽に放った。
◇◆◇
アルトと神楽の戦闘に決着がつく少し前。
「ホワイトパール」のメイドたちは、ガロウを相手に苦戦を強いられていた。少し前に、アルトの命令でミラが加勢に加わったものの、状況は一変しなかった。
「くっ! なんなのよこのオオカミ! 七幻魔って言っても、一番下の第七位だから私たちでもいけると思ったのにぃ!」
「確かに。いくらSランクとはいっても流石に強すぎるね。この魔力、もしかしたら魔王から力を分けて貰ってるのかも……」
冷静にそう分析するミラ。それを聞いたメイドの一人シホは、思わず涙目になってしまう。
「えぇ~そんなぁ! 一番下でこれなら、他の七幻魔はどんだけ強くなってんのよぉ!!」
「──ッ!! シホ! 危ない!」
「え?」
直後。泣きじゃくって一瞬の隙を見せたシホに、ガロウの魔の手が迫る。
「しま──ッ!!」
完全に反応が遅れてしまったシホ。
ガロウの鋭い電撃突きが、シホの胴体を貫きかけた、その直後。
上空から超高速で落下してきた隕石のような物体が、ガロウへと直撃した。
直撃箇所を中心に凄まじい衝撃波が発生し、メイドたちや辺り一帯のモンスター、魔法騎士団を吹き飛ばし、地面にクレーターを発生させた。
「た、助かった……の?」
ひとまずガロウに殺されることは回避できたものの、あまりに唐突な出来事に驚きを隠せないシホ。
「あーなんとか間に合った」
すると、衝撃によって巻き上がった粉塵の奥から、謎の男が姿を現す。
「……貴方は」
徐々に晴れていく粉塵の奥から現れた男を見て、ミラは思わず吐き捨てるようにそう口にした。
端正な顔立ち、金髪に黒いスーツ、首筋にトライバルタトゥーを入れた、ガラの悪いホストのような風貌をした男は、欠伸をしながら首をコキコキと鳴らす。
「ミラ様……あの人って……」
「彼はレオ。『ブラックファング』のリーダーにして、最も危険な男だよ……」
ミラは青ざめた表情で、小さくそう口にした。
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