49 壁
もう一人のテッドによって分断された、魔王城突入チーム。
そんな中、スカーレット、リンリン、ノアたち「レッドホーク」が飛ばされた広間では……
「フハハハ! やっと現れたか! 待ちくたびれたぜ! 俺はガイアってんだ! よろしくなァ!」
金の装飾に包まれたゴージャスな広間に不釣り合いな3メートル程の大男が、「レッドホーク」を見て豪快にそう言った。
「何なのよぉコイツ……滅茶苦茶うるさいんだけどぉ」
「すみません! 本当は思ってないんですけど、それに関しては私も同感です!」
「……声が大きいだけなら良かったんだがな」
青ざめた表情でそう口にするスカーレット。
そんなスカーレットを見て、ノアは「鑑定」を発動させ、ガイアのステータスを確認する。
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名称:ガイア
ランク:SS+
属性:闇、土
備考:七幻魔・序列第二位
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「ランクSS+!? しかも七幻魔の序列二位なんて……ちょっと本当にヤバくないですか!?」
「いつもの口癖が出ないなんて珍しいじゃんリンリン……でもそれ同感。まさか、こんな大怪物がいる場所に私たちだけ飛ばされちゃうなんてねぇ……ついてないかもぉ……」
「以前、サルタナが倒した七幻魔のランクは確かSだったよな……まさかランクSを遥かに上回るバケモノがいるなんて夢にも思わなかったな……」
ガイアのあまりに桁違いのランクを前に戦慄する「レッドホーク」。
そんな「レッドホーク」を見て、ガイアが豪快に笑い出した。
「……何が可笑しい?」
「フハハハ! いやぁすまねェ! お前らの反応が初々しくてついな! そうか、破竹の勢いで成長している新進気鋭の『レッドホーク』でも、ランクSオーバーの魔族を見るのは初めてか!」
「……なんか、私たちすごいひよっこ扱いされてますね。本当は思ってないですけど、ちょっと腹が立ってきました」
「そうだねぇ。確かに私たちはランクS以上のモンスターや魔族を相手にするのは初めて……というか、そもそもそんなのいるとも思ってなかったけどぉ、だからといって貴方に勝てない訳じゃ無いからぁ、あんまり調子に乗らないでよねぇ」
「ハハハ! 威勢がいいなァ! なら、少しは俺を楽しませてくれるんだろうな!!?」
猛獣のような叫びをあげるガイア。
空気が大きく揺れると共に、戦いの火蓋が切られた。
◇◆◇
一方。別の広間に飛ばされた「ブラックファング」は……
「チッ。なんだよこの部屋は、雑魚ばっかりじゃねぇか! あ゛ぁ!?」
「まぁまぁ、落ち着けよゼキラ」
「クソがァ! 俺らなんてBランクAランク程度の雑魚で十分だってのか!? 舐めてんのかクソ魔王コラァ!!」
「ブラックファング」が飛ばされた広間には、広間中を埋め尽くすほどの大量のモンスター軍団がいたのだが、「ブラックファング」はそれを僅か10分程度で全滅させてしまった。
「つーか、なんかモンスターと戦うのも飽きちまったしよぉ、あれだあれ、『レッドホーク』の女の子たち探さね?」
「それアリだわ。なんっかムラムラしてきたしよー、見つけたら即ボコってレ〇プだな」
冒険者とは到底思えない会話を繰り広げる「ブラックファング」のメンバーたち。
だがそれに反対したのは、意外にもゼキラだった。
「今は女なんてどうでもいいんだよ。もっと強い奴をぶっ殺しまくってよォ、さっさと強くならなきゃなんねぇんだからなァ」
「強くなるってゼキラお前、これ以上強くなってどうすんだよマジで」
咥えた煙草に火をつけながら、「ブラックファング」の一人が呆れたようにそう言った。
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ゼキラ
レベル:185
職業:盗賊
攻撃:1665(9)
防御:925(5)
速度:1665(9)
体力:1110(6)
魔力:370(2)
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「まだまだだ……俺はもっと強くなって、いつかレオの野郎をブチ殺してェんだよ」
鋭い殺気を込めた目つきで「ブラックファング」の一人を睨みつけるゼキラ。だが、メンバーはそれを軽く笑い飛ばす。
「ゼキラ、お前がつえーのは認めっけどよぉ、マジでレオはやめとけって」
「あ?」
「だよなー。あいつは俺らとはモノが違い過ぎるんだよ……同じ職業とは思えねーくらい、あいつのパラメータと成長速度はずば抜けてやがる。仮にレオと同じレベルに到達したとしても、お前じゃ──」
メンバーがそう言いかけた直後。
ゼキラの鋭い拳が、メンバーの顔面を捉えた。
「がっっっぁ!? な、なにひやがんだデメェ!!?」
「次、同じことを口にしてみろ。テメェの脳天ザクロみてェに真っ赤にハジいてやるからよォ」
そう言って、ゼキラは壁の方へ歩いていき、全力で壁を蹴り飛ばした。
その衝撃で、広間全体が一瞬地震が起きたのように揺れ動く。だが、それでも怒りは収まらないようで、大きな足音を鳴らしながら先へ進んでいった。
「(クソがあの野郎! いきなり殴ってきやがって! これが終わったらマジでぶっ殺すッ!)」
「(レオも好き勝手やりやがるが、コイツも大概だよなー。一緒に行動すんのマジダリィ)」
「(つーか、レオと同じ路線でお前が勝てる訳ねーだろ。せめて転生した時に上級職にでも就いてりゃよかったのによぉ、マジでバカだろアイツ)」
「ブラックファング」の中でも特に凶暴性の高いゼキラを、心中で酷評するメンバーたち。
仕方なく、先に進み続けるゼキラを追おうとするが──
「は。相変わらず偉そうだな、ゼキラ」
「ブラックファング」が倒したモンスターの死骸の上に、いつの間にか若い男が立っていた。
ゼキラはその男を睨みつけるも、すぐに首を傾げる。
「誰だお前。俺は今機嫌がワリィんだ。さっさと消えねぇとブチ殺すぞ」
「おいおい、忘れちまったのか? まぁゴリラに記憶力なんざハナから期待してないから別にいいけどな」
「あ?」
男の挑発に更なる怒りを燃やすゼキラ。
だが直後、「ブラックファング」の一人が何かを思い出したようで、驚きの表情を浮かべつつ口を開いた。
「お前もしかして……サルタナか!?」
「は。やっと思い出したか」
サルタナは狂気を孕んだ不気味な笑みを浮かべ、そう口にした。
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