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43 魔王軍襲来


 作戦会議を行った翌日の朝。

 いつものようにギルドへ向かっていると、周辺が見知らぬ甲冑の集団で溢れ返っている事に気が付く。


「もしかして、こいつらが例の……」


「そう、彼らが魔法騎士団さ」


 そんな声が俺の足元から聞こえてくる。

 そこにいたのは「ホワイトパール」のリーダーであるアルトだった。


「アルトか。こんな所で何やってるんだ?」


「何って、魔法騎士団の人たちと作戦の再確認だよ。まぁ正直僕一人いれば街を守る事なんて造作も無いんだけどさ、勝手な事されて足を引っ張られるのはごめんだからね」


「それはまた、大した自信だな」


「当然だよ。僕はショタだからね」


 自分の実力に自信がある事とショタである事に、一体何の因果関係があるのかはさっぱり分からないが、聞いても理解できそうも無いので、それ以上口にするのは止めておいた。


「他の連中はどうした?」


「あぁ。君が配属された魔王城突入チームの人たちだったら、皆ギルド前にいるはずだよ」


「分かった」


 そう言って、俺はその場から立ち去ろうとするが……


「いってぇな。どこ見てんだテメェ」


 振り返った瞬間、ガラの悪そうな集団の一人と思わずぶつかってしまう。

 一瞬、街のチンピラかと思ったが、纏っている雰囲気が明らかにこの街の人間のものではなかった。


「お前らこの街の人間じゃないな。何者だ?」


「あ? お前、人にぶつかっといて詫びも無しかコラ」


 中心にいる大柄な銀髪の男が、俺の胸ぐらを掴んでくる。


「顔面50発と有り金全部で許してやる、さっさと謝れ」


「何かを許した人間の行動とはとても思えないな」


 まさか魔王軍が来る直前に人間と揉める事になるとは思わなかったな。

 しかもこの男……先ほどの素早い動きといい、やはりただのチンピラでは無い……相当な実力者だ。ぱっと見、コイツの後ろにいる連中も、この男に近い実力を持っている事は間違いない。魔王軍と戦う前にこいつらとやり合うのは得策ではないな。ここは大人しく謝って……


「やぁゼキラ、久しぶり。どうやらギリギリ間に合ったみたいだね」


 すると、アルトが俺の前に出て、銀髪の男に話しかけた。


「何馴れ馴れしく話しかけてきてんだクソガキ、ブチ殺すぞ」


 ゼキラと呼ばれた銀髪の大男は、殺気剥き出しでアルトを睨みつける。

 だが、当のアルトはまるで意に介さず話し続ける。


「レオはどうしたの? 姿が見えないけど」


「なんでテメェにそんな事教えなきゃならねぇんだよ」


「だって、レオのいない君たち『ブラックファング』なんてオマケみたいなものじゃない? ちゃんと戦力になるのか心配でさ」


 ブラックファング。

 今回の応援要請に応じたもう一つのパーティ。飲んだくれたち曰く、冒険者とは思えないほど素行が悪く、数々の悪行に手を染めているらしいが……そうか、こいつらがその「ブラックファング」か。なるほど、噂に違わぬ素行の悪さだな。

 そう思った直後。

 ゼキラの鋭い蹴りがアルトに向けて放たれる。だが、アルトは一瞬で蹴りの射程外へと移動し、これを躱す。ゼキラの蹴りも相当なものだったが、それを躱したアルトの反応速度も尋常ではない。


「瞬間移動まで使って避けてんじゃねぇぞクソガキ!」


「いやそりゃ避けるでしょ。てかそんな事より君さぁ、僕の事蹴り飛ばそうとしたよね? ショタの頂点であるこの僕をさぁ……本当、万死に値するんだけど」


「は。万死だぁ? 本当、ガキってのは覚えたての言葉をすぐ使いたがるもんだな。意味分かって言ってんのか? あ゛ぁコラァ!!?」


 まるで獣の咆哮のような叫びをあげたゼキラは、猛スピードでアルトへと突進する。一方のアルトも膨大な魔力を纏い、強力な魔法の発動に備え始める。


「全く……お前らが揉めてどうするんだ」


 そうして、俺が両者の激突を止めに入ろうとした、次の瞬間。

 周囲を……いや、ポカリ街全体が異質な空気に包まれる。

 この感じには覚えがある……そう、かつて南ゴルゴン山で感じた魔王デスピアの魔力と全く同じものだ。


『緊急事態! 魔王軍襲来! 総員、ただちに配置に就き、戦闘に備えてください!』


 普段はクールなギルド嬢、エレナの慌ただしい声がポカリ街全体にアナウンスされる。


「ついに来たか」


「……テッド、上を見てごらん」


 そう言って、遥か上空を指差すアルト。

 ポカリ街の上空数百メートル。

 そこには、巨大な城を乗せた島のような物体が浮遊していた。


「あれが魔王城か」


 遠方からでも感じ取れる、魔王城の圧倒的存在感。

 空間を軋ませるような威圧感を肌で感じ、俺は思わず笑みを零した。



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