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41 決戦前日


 明朝。

 ポカリ街の宿の一室で目を覚ました俺は、身支度を済ませギルドへと向かっていた。どうやらそこで、明日の魔王襲撃に向けて、今から作戦会議を行うらしい。

 しかし、随分と街が静かだな。普段は賑わっているポカリ街だが、今日は何故か住人一人として見当たらない。


「まぁ、入って見れば分かるか」


 今やお馴染みの場所と化したギルドへと、俺は足を踏み入れる。


「遅いですよテッドさん!」


 ギルドの中に入ると、我らが「バイオレットリーパー」のメンバーであるお騒がせ娘のステラ、元七幻魔のジャスパー、さらにギルドの飲んだくれたち、レッドホークのメンバーたちが、一つのテーブルに集まっていた。

 そして、よくよく見てみると、見覚えのないメイド服の女たちが十数人と、幼い少年が一人混ざっていた。


「誰だそいつら」


「テッドさん! 初対面の人たちに対してなんて態度ですか!」


「朝からうるさい、いいから説明しろ」


 四六時中やかましいステラの口を手で塞ぐと、ギルド受付嬢のエレナが間に割って入って来た。


「まぁまぁテッドさん。彼らは別の街のギルドパーティ『ホワイトパール』の皆さんです」


 エレナの紹介を受け、幼い少年が一歩前に出る。しかし、よくよく近くで見てみると、随分中性的な顔つきだな。華奢な体躯やさらさらの白い髪も相まって、思わず女子と間違えてしまいそうだ。


「初めまして、君がテッドだね。僕はアルト、『ホワイトパール』のリーダーだ。よろしくね」


「お前みたいなガキがパーティのリーダー? 『ホワイトパール』ってのはおままごと集団なのか?」


「貴様! アルト様に対してなんだその態度は!」


 俺の発言がお気に召さなかったのか、アルトの後ろに控えていたメイドたちが一気に前に出る。俺とメイドたちは互いに睨み合い、出会って早々一触即発の空気が流れる。


「まぁまぁ落ち着いてよ皆」


 だがそれを、メイドたちの後ろからアルトがなだめる。


「しかし、アルト様……」


「いいんだ。僕は究極の美少年……ショタの頂点に立つ男だ。小さな体に大きな器を持つ選ばれし人間である僕は、この程度の事で怒ったりはしないさ」


 何言ってんだコイツ。最初と最後以外、何を言っているのか全く分からなかった。

 思わず周りを見ていると、ステラやジャスパー、その他の連中もポカーンとしているのが見えた。

 どうやら気持ちは同じらしい。だが……


「「キャーー! 流石です、アルト様!」」


 何故か歓喜するメイドたち。

 そのさまは、神を称える教徒たちのようだった。なんだか見ているだけで疲れてきたので、俺はメイドたちから目を逸らし、エレナへと視線を向ける。


「で、エレナ。なんで別の街のショタコンパーティがこのギルドにいるんだ?」


「ショタコンって……ま、まぁそれは置いておいて……。今回の魔王軍襲撃に備えて、いくつか別のギルドに応援要請をさせて頂いたんですよ。それに応じて下さったパーティの一つが『ホワイトパール』の皆さんという事です」


「なるほど。その言い方だと、他にもパーティが来るのか?」


「えぇ、『ブラックファング』というパーティが……」


「『ブラックファング』だってぇ!!?」


 突如、飲んだくれの一人が「ブラックファング」という名前に反応して叫び出した。それに釣られてか、他の飲んだくれ共もざわざわと騒ぎ始める。


「なんだ、知ってるのかお前ら」


「当然だろ! 『ブラックファング』といえば、現存する冒険者パーティの中でトップクラスの武闘派集団だ。実力は折り紙付きだが、その分悪い噂が絶えなくてな、とにかく恐ろしい奴らなんだよ」


「へぇ。悪い噂というのは?」


 俺が聞くと、飲んだくれたちの代わりにエレナが何故か溜息混じりに答える。


「他の冒険者から金銭やアイテム、武器を奪い取ったりといった恐喝、恫喝行為、非合法の魔法ドラッグの使用……噂では、報酬次第で人殺しも請け負っているなんていうのも聞いた事がありますね……」


「なんで捕まらないんだ?」


 あまりにも冒険者離れした「ブラックファング」の素行の悪さに、シンプルに疑問をぶつけてしまう。すると、エレナが苦笑しながら俺の問いに答える。


「噂だと『ブラックファング』が所属するギルドが証拠を隠蔽しているとかなんとか……」


「揃いも揃ってクソ人間の集まりって事か」


「お、おいテッド! お前それ、『ブラックファング』の前で絶対に言うなよ!」


 飲んだくれの一人が、顔面蒼白で怯えながらそう口にした。

 いつもつまらない事で盛り上がってばかりいる飲んだくれにしては、珍しく面白い表情だな……なんて、どうでもいい事を思ったりした。


「で、その『ブラックファング』は今日はまだ来ていないのか?」


「来るわけないじゃないか。彼らみたいな下品な集団が時間を守るとでも思っているのかい?」


 いつの間にか、近くで話を聞いていたアルトがそう答えた。

 俺がそんな事知る訳ないだろ……と言いかけたが、なんとなくまたアホなメイド共と揉めそうな気がしたので、口にするのは止めておいた。というか、その言い草だとアルトの方は『ブラックファング』と面識があるみたいだな。そんなどうでもいい事を思っていると、エレナがこほんと咳ばらいをし、テーブルに一枚の紙を出した。それは、ポカリ街全体が描かれた見取り図だった。


「さて皆さん。まだ全員揃ってはいませんが、これより明日に向けた作戦会議を始めたいと思います」


 俺たちに向けて、エレナがよく通る声でそう言った。



お読みいただきありがとうございました!

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