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34 もう一人


「あの顔は……魔法学校で見た卒アルのテッドさんと同じ顔……」


 幽霊でも見たような顔をするステラ。ステラほどではないものの、ジャスパーも驚きを隠せない様子。


「まさか……テッドさんの双子の兄弟とか?」


 恐る恐る『鑑定』を使うステラ。

 あの仮面が壊れた今なら、恐らく『鑑定』が正常に作動する筈。俺もステラに続いて『鑑定』を使ってみる。すると、驚きの鑑定結果が表示された。



----------------------------------------



テッド


レベル:107

職業:魔法使い

攻撃:535(5)

防御:535(5)

速度:535(5)

体力:535(5)

魔力:1070(10)



----------------------------------------




「テッド……えっ!? なんで……テッドさんが2人!?」


 やかましく騒ぐステラだったが、過去の俺と同じ顔に加えて、名前まで同じとなると、まぁそう叫ぶのも無理はないか。


「どういう事ですか……。まさか、ダミースキルを使ってステータスを偽造しているとか?」


「そう考えるのが自然だが、どうやらそれはなさそうだ。別のスキルを使って奴のステータスを確認してみたが、結果は変わらなかった」


「じゃあなんで……」


 それは俺が聞きたいところだな。あれこれ考えてはみたものの、奴の正体についてしっくりするような結論は導き出せない。確かなのは、奴の存在は今までの常識で推し量れるものでは無いという事だけだ。


「まさか……」


 何かに気が付いた様子のジャスパーは、胸の谷間からごそごそと何かを取り出した。それは、先ほどゴルゴン研究所でジャスパーが読んでいた紙の資料だった。


「テッド、ステラ。これ読んでみなさい」


「お前の胸の汗が染みた資料なんて読む気にならん」


「なに急に潔癖症キャラ気取ってんのよ。大丈夫よ別に汗かいてないから。とにかく読んで」


 発汗ってコントロールできるものじゃないだろ……とか思ったが、いちいち口に出すほどの事じゃないな。俺はジャスパーから受け取った資料を確認する。……随分と細かい専門的な話も多く書かれているが、そちらについては全く分からない為、以下に概要だけをまとめてみる。




 クローン計画について


・「転生者」「トリガー」を量産する事を目指した計画。


・下記条件を満たす個体をオリジナルとする。

 (1)「転生者」または「トリガー」である事。

 (2)(1)を満たさない場合、総パラメータの平均値が7以上、または1つ以上のパラメータの平均値が9以上である事。


・以上の条件で実験を進めたものの、正常なクローン個体が量産される確率は43.3%と半分にも満たなかった上、さらにほぼ全てのクローン個体がオリジナルのスペックを大きく下回る結果となった。


・結果として「転生者」「トリガー」の量産どころか、クローン技術を確立させることすら叶わなかった為、当計画を半永久的に凍結とする。




「クローンねぇ……」


 専門的な話は読み飛ばして要点だけを確認したが、まぁ、随分とくだらない事にお熱になっている連中がいるという事だけは分かった。この計画の要である「転生者」や「トリガー」については何も知らないが、オリジナル個体の条件の一つとして高いパラメータが求められている事から、両者ともに強力な戦力となる存在である事だけはなんとなく想像が付く。いや、この計画の内容について俺がどうこう考えても仕方が無いな。ジャスパーがこの資料を俺に見せてきた意味。それはつまり……


「そう。つまりあそこにいるテッドは、ここにいるテッドのクローンって事よ」


「お前、わざとややこしい言い方してないか?」


 テッド、テッドと……聞いているうちにゲシュタルト崩壊を起こしてしまいそうだ。


「く……ろーん?」


 クローンと言う言葉を知らないのか、頭にクエスチョンマークを浮かべるステラ。

 だが特に説明はしない。


「……何がクローンだ」


 すると無言を貫いていた男が、ふつふつと怒りを湧きあがらせ、吐き捨てるように呟く。


「どいつもこいつも人を劣化版コピーみたいに言いやがって……舐めるのも大概にしろよ……」


「怒ってるところ悪いんだけど事実じゃない。この資料によると、クローンはオリジナルにスペックで遥かに劣ってるそうじゃない。残念だけど、アンタとこっちのテッドの実力差はついさっき明らかになった。どっちが劣化版かなんて一目瞭然だわ」


 淡々と事実を述べるジャスパー。そんなジャスパーの態度が気に入らなかったのか、男はさらに怒り狂う。


「ふざけやがってッ! テッド、もう一度勝負だ! 今度こそお前をぶっ殺して、僕が──」


『随分と怒り狂っているな、テッド』


 直後。男の叫びは異質で重厚感のある謎の声にかき消された。


「なんだこの声。どこから……」


「この声は……」


 横を向くと、ジャスパーが青ざめた表情でガタガタと震えていた。

 どうやらこの声の主について心当たりがある様子。


『お前では『不老不死イモータル』には勝てん。大人しくしていろ』


「くっ……」


 異質な声の一言に、体を震わせながら口を閉じるもう一人のテッド。

 すると今度は、異質な声が俺に向かって話し始める。


『ククッ。しかしテッド相手にこうも簡単に勝利するとは。想像以上の成長速度だな『不老不死イモータル』』


「どうでもいい。誰だお前は」


『魔王デスピア……お前の全てを知る者だ』


 異質な声は力強くそう言い放った。



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