28 魔法学校の首席
今回は基本的に綿あめ食べてるだけです。
「すごいですね魔法都市は! テッドさん、私あの魔法の絨毯が欲しいです!」
「そうか」
ステラの我儘で魔法都市へと寄り道する事になった俺たちは、魔法都市の入り口付近にあった繁華街のような場所を歩いていた。繁華街は想像以上に賑やかで騒がしく、人込みが嫌いな俺はすっかり疲弊しきっていた。そんな中、どこか不安そうな様子でジャスパーが話しかけてきた。
「ねぇ。アンタの擬態とやらは本当にうまくいってるんでしょうね」
「あぁ、心配いらない」
魔法都市の周辺には魔族、モンスター用の感知結界のようなものが張られている。その為、魔族やモンスターが少しでも魔法都市に足を踏み入れると警告が鳴ってしまうらしい。そこで俺のスキル『擬態』を使って、俺たち全員の気配や魔力をごく普通の人間のものへと変えることで、何とか結界をやり過ごすことに成功したのである。
「というか、アンタがさっき使ったスキル……『擬態』だっけ。便利なスキルよね。使用者であるアンタだけじゃなくて、私たちに対しても使えるなんて」
「あぁ。今までは自分にしか使った事が無かったが、やってみたら意外とできた」
「へぇー器用ね」
「そうかもな。というか全然興味ないだろ、お前」
「興味ないっていうか、コピー能力を持ってる不死身の怪物が何やってのけても今更驚かないでしょ」
「確かにそうかもな」
空虚な会話を繰り広げる俺とジャスパー。まぁ昨晩殺し合ったばかりでいきなり仲良くしろというのがそもそも無理な話だけどな。
「テッドさん、ジャスパーさん! アレ食べましょうよアレ!」
子供のようにはしゃぎながら、俺たちの少し先を歩くステラが嬉々とした様子で何かを指差す。ステラが示す先には屋台があり、看板には「魔法綿あめ」と書かれていた。
「魔法綿あめですって! 一体どんな味がするんでしょうか!」
「綿あめだろ」
「全く本当につまらない人ですねテッドさんは! 魔法で作った綿あめですよ? 普通の綿あめとは絶対違うに決まってるじゃないですか!」
「材料が同じなら味も同じだろ」
「そんなの食べてみないと分からないじゃないですか! ね、ジャスパーさん?」
子犬のような眼差しでジャスパーを見つめるステラ。
俺と同じように淡々とした反応が返ってくるかと思ったが、ジャスパーの目線は意外にも「魔法綿あめ」に釘付けだった。
「綿あめか……。私、食べたことないかも」
「えぇ、そうなんですか!? 綿あめ食べたことないなんて、人生半分は損してますよ!」
そんな訳あるか。半分が綿あめでできた人生なんてスカスカにも程がある。
だが当のジャスパーはというと、ステラの誇張表現を真に受けてしまったらしく、すっかり「魔法綿あめ」から目を離せずにいた。
「……私も食べてみたい、かも」
「やったぁ! テッドさん、これで2対1ですよ!」
「はぁ分かったよ」
面倒になった俺はステラとジャスパーに金を渡す。
「わーい! 行きましょうジャスパーさん!」
「え、えぇ……」
ステラに手を引かれ、共に屋台へと向かうジャスパー。我儘な妹とそれに付き合う姉のようだ。この2人を見て、ジャスパーが七幻魔だとはきっと誰も思わないだろう。
「向こうで待ってるぞ」
屋台にも魔道具店にも興味が無かった俺は、聞こえるか聞こえないか位の声でそう言い残し、そのまま繁華街を抜ける事にした。
◇◆◇
10分後、綿あめを買い終えたステラとジャスパーと合流し、人通りの少ない所にあったベンチでそのまま休むことにした俺たち。しかし……
「はい、あ~ん♡」
「いらん。そんな事より、ちゃんと残さず食べろよ」
「うぅ……ギガントサイズにしなきゃよかったぁ……」
少し涙目になるステラ。人間の顔面10個分に相当する巨大綿あめを購入したステラだったが、口を付けから数分でもう飽きてしまったらしい。やる事なす事、本当に子供そのものだな。
「魔法綿あめは、普通の綿あめとは味が違うんじゃなかったのか?」
「いえ、全く一緒でした」
「クソだなお前」
「うわぁ~んジャスパーしゃぁん!」
「はいはい。私も一緒に食べてあげるから泣かないの」
「ぐすっ……はい」
まだジャスパーがパーティに入ってから1日も経っていないが、すっかり関係性ができあがった様子。アホの相手を押し付けられるので、俺としても正直助かる。ステラの相手をするのは、どんな強敵と戦うよりも疲れるからな。
そんな事を思いながら空を眺めていると、突如、見知らぬ老人がこちらに目線を向けてきた。
「なんだじいさん」
「おっとこれは失礼。お主がワシの昔の教え子に似ていたものでのう……つい」
「そうか、じゃあな」
「うわぁ、テッドさん……貴方って人は本当に誰に対しても不愛想なんですね」
「……テッドじゃと?」
ステラの発言に目を丸くして驚く老人。
何をそんなに驚いているのか疑問に思っていると、再び俺と目を合わせてくる老人。
「……お主、テッドなのか?」
「……? あぁ」
「やはりそうか! 髪色や瞳の色は違うが、やはりお主じゃったか!」
「なんだと?」
俺の外見に変化があったのは、俺がレッドホークを追放されて隠し部屋の怪物に殺された後。
その外見の変化を指摘できるという事は、つまりこの爺さんはレッドホーク加入以前の俺……記憶を失う前の俺の事を知っているという事になる。
「お爺さん。テッドさんを知ってるんですか?」
「あぁ、勿論じゃ。なにせテッドは、かつて我が魔法学校の首席だった男じゃからのぉ」
「えっ! 魔法学校の首席!?」
爺さんの一言に驚いたステラの叫び声が、大きく響き渡った。
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