27 魔法都市へ
昨晩、七幻魔の一人であるジャスパーを仲間に加えた俺たち「バイオレットリーパー」は、南ゴルゴン山へと向かっていた。そんな旅の中、俺はふと疑問に思った事を口にしてみた。
「魔王軍って普段何してるんだ?」
「急に何?」
不機嫌そうな顔を浮かべるジャスパー。どうやら昨晩の一件で、俺に対して嫌悪感を抱いている様子。まぁ脅迫して無理矢理連れてきたから仕方ないか。
「いや、ふと疑問に思ってな。俺はそもそも魔王軍がどんな存在なのかよく分かっていないからな」
「はぁ? アンタそんな事も知らないとか、意外と世間知らず?」
「テッドさんは記憶喪失なんですよ。だから魔王軍どころか、そもそも自分が何者なのかもよく分かってないんですよ」
俺の代わりにステラがそう答える。
「記憶喪失? あぁ、だからアンタ、やたら情報を欲しがってた訳ね。アンタを狙う魔王様なら、記憶を失う前のアンタの事を知ってるんじゃないかって」
「そういう事だ。で?」
話が脱線しかけたので、再度質問に答えるように促す。
ジャスパーは気だるそうに口を開く。
「魔王軍は魔王様の目的達成の為に作られた、魔族によって構成された軍。その目的は『世界を元の姿に戻す』こと……って魔王様はよく言ってるけど、正直真意は測りかねてるわ。まぁ、邪魔な人間を排除して魔族だけの世界を作りたいとか、そんなところじゃないかって私は勝手に思ってる」
「街や村を襲ったりはしないのか?」
「命令があれば襲う場合もあるわ。けど基本的に相手にするのは冒険者パーティの連中ね。魔王軍の下っ端たちはモンスターと協力して冒険者たちを倒していく。それを各自ノルマにして日々行動しているわ。でも、私たち七幻魔は魔王様から命令があるまでは基本待機。よほどの強者が現れない限り、私たちの出番はないわ」
「暇なんだな、七幻魔って」
「アンタのおかげで暇じゃなくなったけどね」
「もしかして、俺に感謝してるのか?」
「んなわけないでしょ。ただの皮肉よ」
「そうか」
適当に空返事する俺をキッと睨みつけてくるジャスパー。
だがキツイ態度の割には、随分と饒舌に答えてくれたな。無理矢理連れてきた俺が言うのもなんだが、この女には魔王への忠誠心と言うものは無いのだろうか。いや、多分ないんだろうな。魔王とは直接会った事が無いって言っていたし。魔王軍に入ったのも、大方強い奴と戦えるからとか、そんなところだろう……と、適当に予想してみる。
「まぁ要するに、魔王軍は人類の敵ってわけですよ」
「お前がまとめるのかよ」
急に割って入って来て簡潔な結論を口にするステラ。そんなステラに対して、ジャスパーはどこか呆れ気味に口を開く。
「いや、他人事みたいに言ってるけど、アンタ──」
「わぁテッドさん、ジャスパーさん! 見て下さい! 魔法都市ですよ!」
「……全然聞いてない。このパーティに話をまともに聞ける人はいないの?」
「俺がいるだろ」
「アンタは人が話してても常に感情が乗ってないじゃない。ステラの方が全然マシよ」
「傷付いた」
「ほらそれよ、それ」
なんてくだらないやり取りを中断し、俺とジャスパーはステラの指差す方向へと目を向ける。
「魔法都市。住人のほとんどが魔法使いと噂の都市か。まぁ特別用は無いから、先へ進むとするか」
「え、何言ってるんですかテッドさん! ここまで来て魔法都市へ行かないなんて事があるでしょうか、いやない!」
「いやある。一度直接見た場所は瞬間移動でいつでも来れる。また今度連れてってやるから今回はナシだ」
「えぇ~!?」
「なんか……アンタたちって親子みたいよね」
それはステラが子供過ぎるせいだと思うが。よく泣くし。
「テッドさんお願いします! そ、そうだ! 魔法都市の人たちが放つ膨大な魔力に触れれば、テッドさんもいくつか魔法を取り戻せるんじゃないですか!?」
「それはまた今度でいい。そんなに行きたきゃ一人で行ってこい」
「うわぁ~ん! ジャスパーさぁん!」
ジャスパーに泣き着くステラ。ジャスパーはそれを少し可哀想な目で見つめる。
「ま、まぁ行ってもいいんじゃない? この子もこんなに行きたいって言ってるし、南ゴルゴン山に着くまで、時間に余裕はある訳だし」
「お前ら、母親と娘みたいだな……。はぁ、仕方ないか」
「やったぁ~! 今夜は魔法都市で一泊ですね!」
勝手に一泊する事にされてしまったが、まぁいいか。ジャスパーの言う通り、時間には大分余裕があるしな。こうして俺たちは、少し寄り道をして魔法都市へと向かう事へとなったのだが、この時の俺はまだ知らなかった。
この魔法都市に、俺の失われた記憶に関する大きな手掛かりが眠っているという事を。
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