26 七幻魔の加入
「ジャスパー、俺たちのパーティへ加入しろ」
ポカリ街にて。
俺のこの一言に、沈黙する3人。そんな静寂を破るように最初に口を開いたのは、当然この女だ。
「何言ってんのアンタ、バカじゃないの」
まだ冗談だと思われてるのか、半分小馬鹿にするようにジャスパーがそう言った。それに続いて、ステラが口を開く。
「そ、そうですよ! この人魔王軍の幹部なんですよ!? 私たち冒険者の天敵じゃないですか! そんな人を仲間にするなんてあり得ませんって! 大体、何の為に……え、まさか」
話している途中で何となく察しがついたのか、やかましい口を閉じるステラ。
「そうだ。ここでジャスパーを殺しても何の情報も得られない。だから、俺たちはわざとコイツに捕まったフリをする。そして、一週間後に予定通り南ゴルゴン山へ向かい、俺を引き渡す予定だった相手から情報を引き出す」
「はぁ、テッドさんらしいというかなんというか……え、ちょっと待って下さい。それ、私も捕まったフリしなきゃいけないんですか?」
「そうだ」
「嫌ですよ! 私そんな危険な事に首突っ込みたくありません! 宿でコーヒーでも飲んでるので、テッドさんだけで行ってきてくださいよ!」
「仲間を見捨てるのか。この事を知ったら、誰かさんはお前に幻滅するだろうな」
「くっ……テッドさんの卑怯者!」
まさか仲間からそんな台詞を言われるとは思わなかった。ちなみに、誰かさんと言うのはステラが見返したいと言っていた凄腕勇者の事だ。まぁ俺はソイツに会った事も無ければ名前も素性も知らない為、俺にとっては本当に「誰かさん」な訳だが。まぁ、どうでもいいかそんな事。
「さ、という訳だ。待たせて悪かったな」
「なに私抜きで勝手に話進めてんのよ。私がアンタの仲間になる訳ないでしょ」
「悪いな、お前の意見を取り入れることはできない」
「なんでよ!? 他ならぬ私が入らないって言ってるのよ!?」
強情な奴だな。仕方ない、俺はジャスパーからエレナへと目線を変える。
「エレナ。コイツをバイオレットリーパーに加入させるが、構わないよな?」
「はは、そうよ。七幻魔がパーティに加入するなんて馬鹿げた事、アンタがよくてもギルド嬢の許可が下りないに決まって──」
「えぇ、大丈夫ですよ」
「え、なんで?」
想像以上にあっさりしたエレナの返答に、怒りを通り越して唖然とするジャスパー。
まぁ、俺にとっては想定通りだが。
「七幻魔ではありませんが、過去に魔族がパーティに加入した事例もありますので、規則上特に問題はありません。まぁとはいえ、周囲の冒険者の方々が受け入れるかは別問題ですので、あまり大っぴらにするのはお勧めしませんが」
過去に、か。間違ってはいないが……まぁ今はそれについてはいいか。いずれ分かる事だろうしな。
「じゃあ決定だな。すぐに手続きだ」
「ふ、ふざけんじゃないわよ! 誰が人間の仲間になんてなるか! アンタの仲間になるくらいなら、ここで死──」
直後。俺は素早く電撃をジャスパーに浴びせ、全身を麻痺させ動きを封じる。
「がっ……あっ……くそ……。絶対、仲間になんて、なるもんか……」
「はぁ、しつこいなお前も。仕方ない、どうしても仲間にならないというのなら……」
「は、何。もしかして殺すって言いたいワケ? 上等よ、死ぬのが怖くて七幻魔なんてやってられるかっての!」
「いや違う」
俺は親指で、ジャスパーの視線をギルド内へと誘導する。
「ブヒィ……ジャスパー様ぁ、もっと魅了してくださぁい……ブヒブヒ」
「あぁ思い出しただけでイキそうだァ! イクイクイグゥゥ!! ヒャハハハッ! キモチエエエッ!!」
「愛の形は千差万別。ならば、私にとっての愛とは何か。それはジャスパー様からの罵詈雑言である。故に私は……」
──そこは、人を辞め豚に成り下がった者、快楽に向かってただ突き進む獣と成り果てた者、真実の愛を追求し続ける者など……たった1人の女に魅了され、狂人へと姿を変えた元冒険者たちが彷徨う魔境と化していた。
「……何よあれ、私の魅了であんな風になった事なんて、今まで一度も……」
「いいかジャスパー。一度しか言わないからよく聞いて欲しい」
全身が麻痺して動けないジャスパーに顔を近づけ、目を合わせる。
「今後、もしお前が俺の意に沿わない行動を取った場合、全身麻痺させて全裸にした上で、お前をあの魔境に放り込む」
「貴方たちの仲間になるわ。これからよろしく頼むわね」
「いいのか? 悪いな」
「(……見ましたかエレナさん。あのテッドさんの冷たい表情を。どっちが魔族か分かったものじゃないですね)」
「(あれは完全に悪魔ですね。ステラさん、彼と行動を共にするときは今後も細心の注意を払ってくださいね)」
何やら2人が小声で話しているが、まぁ聞かなかったことにしよう。
何はともあれ。こうして平和的な交渉の末、七幻魔の一人ジャスパーがバイオレットリーパーへと加わったのだった。
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