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198 特別命令


「……は、はァ!? ちょっとアンタ! いきなり何考えてる訳ェ!?」


 最初に沈黙を打ち破ったのは、ノアのそんな至極真っ当な一言だった。だが、それを聞いたレオは何故か他人事のような表情を浮かべていた。


「何って、一目惚れしたらプロポーズしなきゃ失礼ってモンだろ。なぁピンクちゃん? 新婚旅行どこにする?」


「はぁっ!? えっ!? な、なななんでっていうか! そもそもまだ結婚するとも言ってないし!」


「えーいいじゃん。取り敢えず1回結婚しとこうぜ。な?」


 レオに手を握られ、顔を真っ赤にするアスタロト。レオは悪い意味で自由な奴だとは思っていたが、流石に今回のは意味が分からなすぎるな。俺は黒い大剣を素早く振るい、超高速の斬撃をアスタロトとレオに向けて放った。


「うおっ!? あっぶね!!」


 レオはアスタロトを抱きかかえながら、素早い動きで斬撃を躱した。適当に放った斬撃だったとはいえ、あれだけ隙を見せておいて躱すあたり流石だな。


「おいテツオ! テメェ俺ごと殺す気か! 仲間だろ!」


「いや、別にお前は仲間じゃない。邪魔するなら斬るぞ」


 そう言って、俺はレオを睨みつけながら殺気を放った。これで冗談じゃない事を理解してもらえただろうか。


「あぁーあ。あの紫太郎マジで俺ごと殺すつもりだな。仕方ねぇ。取り敢えずドンパチ始める前に誓いのキスでも済ませとくか」


 そう言って、抱きかかえているアスタロトに唇を迫るレオ。アスタロトの顔がさらに紅潮していく。


「だ、だから結婚はしないって言ってるでしょうがあぁぁッ!!」


 アスタロトが渾身の叫び声をあげた直後。暴風の如し魔力の波がアスタロトの全身から放たれた。


「うぉッ──!?」


 あまりにも強大な魔力によって盛大に吹き飛ばされてしまうレオ。しばらく上空を舞った後、隕石のような勢いでエレナたちの前に落下した。


「まさかこの俺がこんな簡単にぶっ飛ばされるとはな。今までの比じゃねぇくらい強くなってるぜ、ピンクちゃん」


「そんな事は分かってます。それより……さっさと服を着てその汚い物を隠して下さい! 目に毒なんですよ!!」


「えーエレナが目閉じればいいじゃん。そっちの方が早くね?」


「早い遅いとかじゃなくて、そもそも服を着てない事がおかしいんですよ!!」


 顔を赤くしながらレオを思い切り蹴り飛ばすエレナ。中々に強烈な蹴りだった筈だが、それを食らったレオは「いっぽん!」と他人事のようにふざけ倒していた。


「……もう! 本当なんなのアイツ!」


 息を荒げながら取り乱すアスタロトだったが、意外と満更でもない様子。本当に下らないな。


「いい加減終わらせるか」


 俺は黒い大剣を乱暴に振り下ろす。アスタロトはそれを見て、不気味な笑みを浮かべた。


「……いい殺気だねテッド君。そんな君に素敵なプレゼントをあげるよ」


 アスタロトは手をゆっくりと広げる。


「『特別命令スペシャルオーダー』」


 アスタロトがそう口にした直後。黒みがかった虹色の魔力が、バチバチッ!! と鋭い火花を散らしながら俺とアスタロトの全身を覆った。


「なんだこれは……」


 俺は強引にこの魔力を引き剥がそうと試みるが、効果はまるで無かった。


「……『特別命令スペシャルオーダー』は禁術にして、君を手に入れる為の最後の切り札。いくら君であってもそれを解除する事は不可能だよ」


 アスタロトは得意げに続ける。


「……『特別命令スペシャルオーダー』の対象となった者たちは、ある条件を満たすまで戦い続けなければならない。先に条件を満たした勝者は、条件を満たせなかった敗者を永遠に支配する事ができる。それがたとえ、私の支配から逃れる事の出来る君たちのような存在であったとしても。そしてそれは、術者である私が負けた場合にも当然適用される」


「早い話、勝てばどんな相手でも支配できるという事か。で、その条件は?」


「相手に絶対的な敗北感を味わわせる事。まぁつまり、戦って相手の心をへし折った方の勝ちだね」


 強気な口調のアスタロト。それを聞いて、ノアたちは何故か心配そうな表情を浮かべていたが、はっきり言ってそれは杞憂だ。俺がコイツに負ける未来など存在しない。むしろ今後の事を考えれば、この「特別命令スペシャルオーダー」とやらは非常に好都合だ。俺が唯一懸念していたのは、アスタロトに勝ったその先の展開だったからな。


「面白い。お前がどこまでやれるのか見せてみろ」


 俺は人差し指を軽く動かし、アスタロトをわざとらしく挑発する。

 七幻魔第一位アスタロトとの最終決戦の火蓋がついに切られた。


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