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189 竜王の娘


「まさかスカーレットがアンタの娘だったとはな」


 シドラから語られた事実に、俺は驚きを隠せなかった。そうか……シドラと初めて出会った時にその雰囲気に既視感を覚えたのは、コイツ等が親子だったからか。


「はーなるほどね。娘相手だからアンタもどうしていいか分からねぇって事か」


「そういう事だ。おまけに、スカーレットは他の奴とは異なる術式をアスタロトに施されているようでな」


 スカーレットに向けられたシドラの視線を追う。よく見てみると、スカーレットが纏っている黒い装束が正体不明の黒い細胞によって構成されている事が分かった。あれは……サルタナを黒い怪物に変えたのと同種のものだな。


「あの黒い細胞によってスカーレットは飛躍的にパワーアップしたみたいだが、随分と不安定な状態だな」


「あぁ……。力ずくでどうにかなる問題じゃなさそうだからな。正直手を焼いていたところだ」


 シドラは困惑した表情を浮かべる。たしかにこの男の強さは世界最強クラスだ。だが、世界最強クラスの力を持っている事と万能である事はイコールではない。恐らくこの男は戦闘や破壊には特化しているが、繊細な魔法やスキルの扱いは不得手としているのだろう。まったく、そんなところまで娘と同じだとはな……。


「スカーレットは俺がなんとかする。その間、周囲の相手は任せる」


「すまない助かる……。お前のような頼りになる男がスカーレットの仲間でよかったよ」


 安堵した表情を浮かべるシドラ。まだ助かった訳でもないのに安心するのは早いと思うが、まぁ別にいいか。


「えーもしかして俺も雑魚の相手? 勘弁してくれよテツー」


「そうだ。これやるから遊んでろ」


 新しいあだ名で呼ばれた部分には特に触れず、俺はある武器を取り出し、乱暴に放り投げた。レオはそれを片手で受け取った。


「はー純白な光に包まれた素晴らしい聖剣ですなー」


「なんだそのよく分からないキャラは」


「武器ソムリエだからな俺。で、これ元々お前の武器?」


「……いや。ただの拾い物だ」


 レオに渡した武器。それは、以前サルタナが使っていた聖剣だ。先日、サルタナの死骸付近に落ちていたから一応拾っておいたが、俺は光属性の剣を使う事ができないからな。


「……へぇ。キレーなナリしてる割に、随分と血ぃ吸ってきたみてぇだな」


 聖剣を眺めながら、あくどい笑みを浮かべるレオ。これ以上ないくらい聖剣が似合っていないな。まぁ元の持ち主も決して聖剣が似合う男ではなかったが。


「じゃあ雑魚は任せる。適当に散らしておけ」


 それだけ言い残し、俺は瞬間移動でスカーレットの目前へと移動した。俺が黒い大剣を抜くと同時に、スカーレットは素早く炎剣による斬撃を繰り出した。


「いい反応だ」


 スカーレットの斬撃を大剣で受け止める俺。

 その直後、脳髄に強い電流が走ると同時に、様々な光景が走馬灯のように流れてきた。この感じには覚えがある。以前、サルタナの聖剣に触れた際に起きた現象と同じものだ。


 だとすれば、これは……スカーレットの記憶か。


 刹那で流れ去っていくスカーレットの記憶。

 そして俺は、彼女の本当の願いを知る事になる。



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