177 竜王會
「竜王會。世界トップクラスの竜族たちで構成された組織。まさにちょうど僕が仲間に誘おうとした人たちだね」
俺が説明を求める前に、竜王會について簡単に説明するシャドウ。世界トップクラスの竜族というだけあって、コイツ等全員が相当な実力者である事が見て取れる。
「いやぁ本当に助かるよ。でもどうして僕たちに協力してくれる気になったんだい?」
それは俺も同意だ。この状況で俺たちの味方に付くという事は、アスタロトが率いる世界中の勢力を敵に回すという事とほぼ同義。それは当然コイツ等も理解している筈。一体何が目的なのだろうか。
「あの女に操られた仲間を取り戻す為だ。俺たちとて、お前のような魔族と組むのはごめんだが、今はそうも言ってられないだろう。それにあの女には俺たちのシマを荒らされた件もある。ケジメはつけさせないとな」
静かに怒りを口にする竜王會。どうやらアスタロトの奴、この件以前にも竜王會と揉めていたようだな。すると、隣のシャドウと神楽が何やら小声でコソコソと話し始めた。
「(……おいどうするんじゃ。前に竜王會にアスタロトをぶつけたのはお主じゃろ)」
「(……ま、まぁバレなきゃ大丈夫でしょ)」
どうやらアスタロトが竜王會と揉めた原因はシャドウにある模様。2人はさらに耳打ちを続ける。
「(……まぁ、もしバレたとしても心配いらないよ。僕には神楽シールドっていう強力な盾があるからね)」
「(この期に及んでわらわを盾にするつもりかこのクズが! というかお主はそんな事せんでも逃げ切れるからいいじゃろ!)」
「(万が一に備えて保険を掛けておく事が大事なんだよ、神楽ちゃん)」
「オイ、何をこそこそ話している」
竜王會の一人が2人に近づき、厳つい顔つきで睨みつけた。
「なんでもないよ。タロちゃんの勝手な行動には僕も困り果てていてね。いい加減お灸を据えてやろうと思ってたところなんだ」
そう捲し立てるシャドウ。まぁ今回の件についてはそれで間違いないだろうが、以前自分が命令した事まで全てアスタロトに罪を被せるとは……元上司としては反面教師もいいところだな。なんて思っていると、竜王會の一人が今度は俺の方に近づいてきた。しかし随分とデカいな、体長5メートルほどだろうか。竜王會の中でも一際大きな体をしている。まぁそもそもコイツ等は人間ではないので、当然と言えば当然かもしれないが。
「何か用か?」
「お前か。あの女に10億の賞金を懸けられたテッドという男は」
厳つい表情でそう口にする大男。どうやらアスタロトが作った手配書を見たらしいな。
「あぁそうだ。それがどうかしたのか?」
「なるほど。あの女に支配されない連中という事で、ある程度の実力者が揃っているのは分かっていたが、その中でもお前は別格のようだな」
「どうだろうな」
俺がそう言った直後、凄まじい重圧が周囲の空間を一瞬で支配した。それが目の前の大男が放った殺気だと気が付くまでに、そう時間はかからなかった。これまで幾度となく猛者たちと対峙してきたが、この男の殺気はそれらとは一線を画する……まさに竜王と称するに相応しいものだった。……まぁだからなんだという話だが。大気を震わすほどの重圧を、俺は同レベルの殺気で押し返した。
「ふっ俺の威圧に眉一つ動かさぬとは……。聞いていた通り面白い男だな」
薄く笑みを浮かべる大男。聞いていた通り、か。大方アルトが何か余計な事を吹き込んだのだろうが、その内容には別に興味がない。それよりもこの男の感じ……どこかで会った事がある気がするのだが、俺の勘違いだろうか。
「俺は竜王シドラ。この竜王會のボスを務める男だ」
そう言って、シドラは俺に握手を求めてきた。俺は手を差し出しそれに応じる。すると、手のサイズが違い過ぎる為か、俺の手がシドラの手に握られて完全に見えなくなってしまった。
「テッド……なんかおててちっちゃくてかわいい♡」
まるで子供や小動物でも見るかのように、そんな事を呟くノア。いや、どう見てもシドラの手が大きいだけだろ、なんて思ったが、そんな誰の目から見ても明らかな事をいちいち口にするのも馬鹿らしいので、心の中に留めておく事にした。
まぁそんな事はどうでもいい。
とにかくアルトのお陰で、俺たちは竜王會という強力な戦力を仲間にする事ができたのだった。
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名称:シドラ
ランク:SSS
属性:炎
備考:竜族の王
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