14 B級クエスト
『バイオレットリーパー』というパーティを結成した俺とステラ。
クエストをクリアしてはギルドで報酬を受け取り、またクエストを受ける……そんな日々を繰り返していたが、未だに俺の記憶の手掛かりは見つかってはいなかった。
そんな俺たちは、今日もまたギルドへと足を運ぶ。
「よぉステラちゃんとクソテッド! 毎日毎日クエストご苦労さんだなぁ!」
ギルドに行くと、必ずといっていいほど酒を飲んでいる冒険者たち。
だが、こいつらが冒険しているところを俺は一度も見たことがない。
「そーいやよぉ、最近は『仮面の男』の噂全然聞かねぇよな」
飲んだくれの冒険者の一人がそんな事を言い始めた。
他の飲んだくれたちもそれに続く。
「あぁ、あの冒険者を無差別に誘拐してるって噂の。そういや聞かなくなったな」
「大方、つえー勇者に返り討ちにでもあったんだろ」
「かもな。まっ俺たちには関係ないけどな! カンパーイ!」
「ウィ~」
いや、お前たちが仮にも冒険者なら関係大アリだと思うが……。
まぁ本人たちが無関係だと思うなら別にどうでもいいが。
俺たちは飲んだくれたちを通り過ぎ、足早に受付へと向かう。
「こんにちはステラさん、テッドさん。本日もクエストですか?」
「はい!」
受付にいたのはエレナ。
この光景も随分と見慣れたものだ。
エレナはクエスト一覧に目を通し始めると、何か少しばつの悪そうな顔をした。
「申し訳ございません。今日のC級までのクエストは、全部他の冒険者たちが持っていっちゃいまして、今あるのはB級クエストのみなんですよ……」
「B級かぁ……あはは、確かにそれは厳しいですね」
苦笑を浮かべるステラ。
B級クエストは、最低でもレベル50以上が推奨されている高難易度クエストだ。
現在のステラのレベルは30弱。普通なら受けるだけ無謀と言うものだが……
「分かった。それを受ける」
「テッドさん! いくらなんでも無茶ですよ、私のレベル31ですよ?」
「俺がいれば大丈夫だろ」
「まぁテッドさんはそりゃ問題無いでしょうけど……はぁ、分かりましたよ」
しぶしぶ納得するステラ。
呆れた視線を俺に向けた後、エレナへと向き直す。
「じゃあそのB級クエストをお願いします」
「分かりました。まぁお二人ならきっと大丈夫でしょうが、お気をつけてください」
「あぁ。で、その内容は?」
「はい。今回のクエストの内容は……」
エレナのクエスト説明を聞く俺とステラ。
クエストの難易度が高いこと以外は普段の流れとなんら変わりない、いつも通りの俺たちの日常。
だが、この時の俺はまだ知らない。
この日、俺たち『バイオレットリーパー』に大きな変化が訪れる事を。