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138/263

138 火の鳥


 一方。

 ステラたちは、黒い怪物と化したサルタナが生み出す無数のモンスターたちと激しい戦いを繰り広げていた。


「ちょっとヤバいですね。倒しても倒してもモンスターが無限湧きしてくるなんて……。終わる気がしないです……」


「……そうね。しかも、一体一体が微妙に強いのがまた厄介なのよね……」


 繰り返されるモンスター軍団との戦闘に、思わず弱音を吐いてしまうステラとジャスパー。


「このままでは消耗する一方だな。仕方がない。魔力を激しく消耗してしまうが、私が大技を使って一度モンスターたちを消し炭にする。その隙に、皆であの黒い怪物に大技を……」


 襲い掛かってくるモンスターたちを倒しつつ、その場の全員に作戦を伝えるスカーレット。すると……


「グギャアアァァァ゛ッッ!!!」


 突如、サルタナが叫び声を上げて苦しみ始めた。それと同時に、周囲を埋め尽くしていた無数のモンスターたちが黒い煙を上げながら、塵となって消えていった。


「モンスターたちが消えてる……。という事は! テッド君が黒い怪物を操っている人を倒したんだ! 本当はそんな事思ってないけど、テッド君グッジョブ!」


「グギリィィァアアアアアッ!!」


 断末魔のような咆哮を上げたサルタナは、膨大な魔力を口に溜め込み始める。


「マズいです! あの怪物、またあの破壊光線を撃ってくるつもりですよ! きっと、さっきまでは周りにモンスターがいたから撃てなかったんでしょうね! 優しい!」


「そんな事言ってる場合かステラ! とにかく、アレをどうにかしないと──」


「俺に任せろ!」


 ステラたちを守るように一歩前へ出るドンファン。サルタナが放った破壊光線を迎え撃つように、ドンファンは拳を繰り出した。


筋肉砲マッスルキャノン!!」


 直後。ドンファンが繰り出したストレートパンチから、強大なエネルギー砲が放たれた。そのあまりの威力に、サルタナの破壊光線は霧散し、余波だけで周囲の壁や天井が粉々に吹き飛ばされてしまった。


「……つっよ」


 まるで無数の爆撃を一発に凝縮したかのような馬鹿げた火力に、唖然としてしまうジャスパー。他の者も同様で、開いた口が塞がっていなかった。


「ちょっとドンファンさん! 何今の破壊兵器みたいな必殺技! というか、本当はそんな事思ってないけど、なんでもっと早く撃たなかったの!」


「あぁそれはすまん。筋肉エネルギーを溜めるのに思ったより時間がかかっちまってな」


 口では謝罪しつつも、満足気にすっきりとした表情を浮かべるドンファン。筋肉砲マッスルキャノンを放てたのが、余程気持ちよかったらしい。


「それはどうでもいいんだけど、あの怪物は?」


 ジャスパーの一言で、その場の全員が巻き上がる煙の向こう側へと目を向けた。


「グッ……ギ……ゴ」


 そこにいたのは、全身から焦げ臭い煙を上げながら苦しむサルタナだった。膨張した黒い細胞から作られた巨体は、干物のようにカラカラになっていた。


「あれを食らって生きてるなんて、どんだけタフなんですかあの怪物……。体は大分しぼんでますけど」


「つまり、やるなら今という事だな。皆下がっていてくれ。私が終わらせる」


 そう口にしたスカーレットの周囲を炎が包み込んでいく。炎は加速度的に大きくなっていき、渦となって巻き上がっていく。紅蓮に染まった炎がさらに熱を帯びていき、光を纏い始める。神々しい美しさを纏ったその炎は黄金へと染まっていき、やがて鳳凰のような姿へと変わっていった。


「『奥義・火ノ鳥(ヒノトリ)』」


 美しき火の鳥と化した黄金の炎がサルタナを包み込む。だが不思議と、サルタナは苦しむ声を上げなかった。黄金の光を纏いしその不死の炎は、サルタナにとってはまるで浄化だった。天に召される一歩手前のように、サルタナはただ静かに身を焼かれ続けた。



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