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131/263

131 名も無き怪物


 スカーレットたちの前に突如として現れた黒い怪物。その姿は、黒い肉塊から蜘蛛に似た巨大な脚がいくつも生えたような、実に歪で禍々しいものだった。


「ステータスが文字化けしている……。まるでテッドやサルタナのようだが、モンスターでこの表記は初めて見るな……」


「このステータス……前に戦った青い竜イカズチと同じ……」


 黒い怪物のステータスを確認し、それぞれ既視感を口にするスカーレットとステラ。だが、この黒い怪物の正体があのサルタナだとは、当然ながら気が付いていない。


「どうしましょうか皆さん。逃げますか?」


「……残念だがステラ。どうやら逃がしてくれる雰囲気でもなさそうだぞ」


 素早く剣を構え、その剣身に炎を纏わせるスカーレット。それと同時にジャスパー、リンリン、ドンファンも臨戦態勢をとる。


「グギリィヤアァッ!!!!」


 悍ましい咆哮を上げると同時に、黒い怪物は邪悪な波動を全身から放った。勢いよく広がる邪悪な波動は、辺り一帯を不気味な瘴気で満たしていった。


「ステラバリヤー!!」


 瘴気を浴びる直前、ステラはユニークスキルを発動し、スカーレットたちの体を虹色の光で包み込んだ。


「すまない、助かったぞステラ!」


「いえ! それよりも、この黒い空気……。直接浴びたらかなりヤバい事になりそうです。私のバリヤーがある内は大丈夫ですが、皆さん気を付けて下さい!」


「了解! ありがとうステラちゃん! 本当は感謝なんてしてないけど!!」


 そう言った直後。

 リンリンは超人的な脚力で怪物の頭上へと跳び上がった。


爆脚ばっきゃく・ジケロ・ハ!!」


 そして、勢いよく落下しながら鋭い踵落としを怪物に放った。同時に、爆脚ばっきゃくの効果による大爆発が発生し、辺り一帯を爆風で吹き飛ばした。


「やっほぉー! 気持ちいいいい! 本当はそんなことないけどーー!」


----------------------------------------


リンリン


レベル:85


職業:バトルマスター(上級職)

副職:格闘家(レベル100)

攻撃:680(8)

防御:595(7)

速度:765(9)

体力:510(6)

魔力:255(3)


----------------------------------------



「あいつ……。あんな不気味な怪物を前にして戦いを楽しんでやがる」


 爆風に乗って空中を愉快に舞うリンリンを見て、にかっと笑うドンファン。


「俺も負けてらんねえなあ! 『筋力蓄積(チャーージ)ッ!!』


 スキル名を叫び、モストマスキュラーのポーズをとるドンファン。


「ドデカいのかますまで少し時間がかかるからよ! それまであの怪物の相手頼む!」


「分かった! 行くぞジャスパー、同時攻撃だ!」


「仕方ないわね…」


 スカーレットとジャスパーは同時に炎を発生させると、怪物に向かってそれぞれ攻撃を放った。


竜炎獄突りゅうえんごくとつ


地獄の業火(ヘルフレイム)


 あらゆるものを消し炭に変える業火に身を焼かれ、怪物はその場で暴れ回り、苦しみだす。


「はーよく燃えるわねぇ。私の火力に匹敵する炎を出せるなんて、流石レベル130の竜騎士スカーレット様ね〜」


 半分おちょくるような口調でスカーレットを褒めるジャスパー。しかし当のスカーレットは、手に持った剣を遠い目で見つめたまま呆然としていた。


「どしたの」


「あぁいや……。さっきの攻撃、何故だか嫌な手応えがあってな……。それに今の感覚、どこかで感じたことがあったような……」


「気のせいっしょ。てか、あんなグロい怪物に攻撃して気持ちのいい手応えがあるわけないでしょ」


「……まぁそれもそうか」


 どこか釈然としない表情を浮かべたまま、スカーレットは再び剣を構える。

 それが、名もなき怪物を人へと戻せる最後の機会であったことを、彼女は知る由もなかった。



お読みいただきありがとうございました!

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