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128 本気


「『悪鬼羅刹あっきらせつ』」


 俺がスキル名を口にした直後、体から黒紫のオーラが放出される。膨大なオーラは徐々に何かを形作っていき、やがて巨大な悪鬼のような姿へと変化した。


「まさか『絞殺』を膨大な魔力で強引に引き剥がすとはね……。ていうかそのスキル、たしかサルタナ君も使ってた気がするけど、何なの?」


「さぁな、俺もよくは分かっていない」


 俺は短くそう口にするが、別に適当に言っている訳ではない。この「悪鬼羅刹」は『復讐の剣(エリーニュス)』でコピーしたという訳ではなく、いつの間にか使用できるようになっていたスキルだ。つまり、俺も詳細な事は何も知らないのである。しかし、サルタナもこのスキルを使えるというのは予想外だった。奴に聞くべきことがまた増えてしまったな。


「大丈夫? そんな曖昧な認識の力で、本当に私を楽しませられるのかな」


 薄暗い闇を帯びた瞳で、メルがこちらを見つめてくる。こちらを推し量るようなその視線を押し返すように、俺は答えた。


「残念だが……ここから先、お前に楽しむ余裕を与えるつもりは無い」


 俺は手を突き出し、離れているメルを掴むように拳を握る。そして、かつてガイアからコピーした空間魔法を使い、メルの動きを封じる。


「……? あれ、なにコレ。体が動かないんだけど」


「『悪鬼羅刹・形態変化』」


 俺は悪鬼羅刹の魔力に、イカズチの雷の魔力を付与していく。迸る黒紫の稲妻と共に、悪鬼羅刹の体に龍の紋様が浮かび上がり、より禍々しき鬼神の姿へと変わっていく。


「『悪鬼羅刹あっきらせつ大嶽丸おおたけまる』」


 悪鬼羅刹が姿を変えると共に、空間を引き裂くような黒きいかずちが迸り、ダンジョンの地表を削り取るほどの暴風が吹き荒れる。


「あははっ! まるで嵐だね、凄いなぁ!」


 身動きが取れない状況で、超自然の如し力を目の当たりにしても、メルは心底楽しそうに笑っていた。


「いいねぇ! それじゃ私も本気の本気出しちゃおうかなぁ!」


 そう言うと、メルは体に力を込め始める。そして、俺がメルの「絞殺」を振りほどいたように、強引に空間魔法による拘束を解除した。


「この拘束を解くとはな。本当に大したものだ」


「あははっ! こんな楽しい戦いを指を咥えたまま終わらせる気は無いからね!」


 直後。

 純白の光がメルの体を包み込んでいき、彼女の背に白き翼を授けた。


「まるで天使だな」


「えっ? それって天使みたいに可愛いってこと?」


「いや違う。単純に外見がそう見えるってだけだ」


「あははっ。そんなガチで否定しなくてもいいのに~。でもまぁ、折角テッド君が天使って言ってくれたし、お礼に君を天国に連れて行ってあげるよ!」


 白き翼がより強く発光すると同時に、メルの手に純白の弓矢が握られる。それに対抗すべく、俺は鬼神の手に漆黒の太刀を与える。天使の姿をした血みどろの怪物を、地獄の底へ叩き落す為に。


「『一撃必殺』」

「刹那」


 天の光で造られた矢と、地獄の稲妻を纏った一太刀。

 互いの本気の一撃が同時に放たれ、煌びやかな光と禍々しい爆発が辺り一帯を包み込んだ。



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