127 殺殺
「ナーガが一番強い?」
「そうだよ。この私よりもね」
そう言って、メルは俺の目をまっすぐと見る。どうやら嘘で言っている訳では無いようだが、俺は少し違和感を覚えていた。ナーガは上級職の召喚士だが、そのレベルは70にも届いていない上、ステータスも魔力以外は平均程度。とてもじゃないが、ニナやメルを凌ぐ実力があるとは思えない。
「ふふっ。まぁ可視化された情報だけでナーガ君の力を推し量るのは難しいだろうね。私たちトリガーみたいにさ!」
そう言って、メルは爆発的な脚力で空中へと跳び上がった。
「トリガーは戦えば戦うほど強くなる。でも、トリガーのレベルを上げるには同じトリガーを共食いするしかない。そうすることでトリガーの力は格段に進化する。悪いんだけどさテッド君、私のレベルアップの為に、ここで死んでもらうよ」
空中で静止し、腕を大きく広げるメル。
「『焼殺』」
先ほど俺の体を燃やしたときと同じ技名を口にするメル。水魔法の準備をする俺だったが、今回の技は先ほどとは別物だった。神々しい光の球体がメルの背後に出現し、眩い光を全方位に向けて放った。
「……なんだこの光」
メルが放った光を浴びた俺の体が、ジリジリと焼き焦げていく。
「同じ技名なのに、全然違う攻撃が来てビックリしちゃった?」
俺を見下ろしながら、メルは挑発的な笑みを浮かべる。
「『殺殺』。それが私のトリガースキル。自分がイメージした『殺し』を具現化する能力だよ」
「殺し方をいちいち口にしてるのは、その殺しに対する自分のイメージを固める為……ということか」
「せぇーかい☆ だから同じ『焼殺』でも、こうして違う技になっちゃうってわけなんだ。騙してごめんねー」
「別に。そもそも能力の詳細を明かす義理もないだろ」
「いやぁ私は『鑑定』でテッド君の能力を覗いたのに、テッド君は全然私の能力見てくれないからさ。そんなのフェアじゃないじゃん。ていうーか何で私の能力ちゃんと確認しなかったの?」
「最初から全部分かっていても面白味がないからな」
「あははっ。弱点の光属性で焼き殺されそうだってのにその余裕……君も君で狂ってんねぇ。あぁそれともう1つ。私の体と殺しの技には、魔法とスキルの力を半減させる効果があるから、要注意ねぇー」
わざわざ不要な忠告をし、不気味な笑みを浮かべると、メルはそのまま腕を前に突き出した。
「『絞殺』」
直後。目に見えない何らかの力が、俺の首を凄まじい力で締め上げた。なんとか振りほどきたいところだが、この不可視の力に対して、現状こちらから干渉する術がない。仮に絞め殺されたとしても俺は復活できるが、その前に体を光で焼き尽くされて死を迎えることだろう。
「あはは! さぁさぁテッド君どうする!? このままだと死んじゃうよぉ?」
心底楽しそうに俺を煽ってくるメル。
たしかにこのままでは、メルの言う通り死は免れないな。
……仕方ない。こうなったら、出し惜しみは無しだ。
俺は頭を切り替え、メルを本気で倒すべく行動を開始した。
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