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123 引き金


「『焼殺しょうさつ』」


 メルがそう口にした直後、俺の体を凄まじい勢いの炎が包み込んだ。

 たしかに火力は相当なものだが、問題はない。俺は水魔法を発動し、自分の体を水で包み込む。しかし……


「……?」


 炎の勢いが止むことはなく、逆に俺の水魔法を飲み込んでしまった。こちらの想定以上に炎に込められた魔力が大きかったのか? 俺は先ほどよりも強力な水魔法を発動し、再び炎へぶつける。すると、ようやく体を包み込んでいた炎が、白い煙となって鎮火していった。同時に、火傷によってダメージを負った俺の体が修復を始めた。


「おーすごい。傷が勝手にどんどん治っていく。それがテッド君のトリガースキル?」


「トリガースキル? 何の話だ」


 俺がそう言うと、メルは目を丸くして驚く。


「テッド君、本当にトリガーについて何も知らないんだね」


「あぁ。トリガーに覚醒するとステータスが出鱈目になって、人格が変化する……ということ以外は何も知らないな」


「あー。そこは知ってんのね」


 メルは俺から目線を外し、どこか面倒くさそうに答える。


「トリガーに目覚めると、まずステータスが出鱈目なものに変化する。けど、これだけだとトリガーとしては不完全。完全なトリガーとして覚醒するには、引き金を引く必要がある。そして引き金を引いたとき、トリガーの人格が変化して、新たなスキルを得られる。そのとき得られるスキルのことを、トリガースキルっていうんだよね」


「引き金……というのは、トリガーが覚醒する為の条件みたいなものか?」


「まぁそんな感じかな『斬殺』」


 流れるように何らかのスキルを発動したメル。どこから取り出したのか、その手には20メートル程の巨大な剣が握られており、それを軽々とこちらに目掛けて振るってきた。


「食らったら真っ二つだな」


 俺は上体を反らし、轟音と共に飛んできた斬撃をかろうじて躱す。


「あちゃー避けられたか。不意打ちならいけると思ったのに、随分と冷静だよねーテッド君。さっき体燃やされても無反応だったし、痛覚とか恐怖とか、そういうのないの?」


「今のところ感じたことはないな」


「へぇー人生つまんなそうだね」


 抑揚のない声で嘲笑を浮かべるメル。


「っていうかテッド君。自分の引き金が何か自覚する前にトリガーとして覚醒しちゃったんだね。ステータスが変化してからある程度経つと、普通は自覚できるものなんだけど」


「そうなのか。お前の引き金は?」


「私は『大事な人を殺すこと』かな」


 何かを思い出したのか、歪んだ笑みを浮かべながらそう口にするメル。


「あぁそうそう。テッド君たち、サルタナ君を助けようとしてるんだっけ? だったら急いだほうがいいかもよ」


「何故だ?」


「出鱈目なステータス変化が起こった後、いつまでも引き金を引けずにいると、精神がどんどん崩壊していって、最終的には自我の無い怪物になっちゃうから。しかもサルタナ君の場合、引き金を引く前に共食いしちゃってるから、怪物化がさらに早まってるかも」


 挑発的な笑みを浮かべながら、メルは他人事のようにそう言った。



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