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107/263

107 誰


「よっしゃ! いくぜお前らぁ!」


「「おぉう!」」


 大量のモンスターたちを前に、酒カス共が叫ぶ。そして……


「「乾杯ィーーーーーー!!」」


 手に持った酒を一斉に飲み始めた。本当、何しに来たんだコイツら。俺は無能な酒カス共を無視して、黒い大剣を構える。


「ダンジョンの奥から強い反応がある。俺はそこへ向かう」


「はいはい了解。じゃあ私たちは雑魚の掃除でもしてるわね」


「勝手にしろ」


 吐き捨てるようにそう言い、俺はダンジョンへと足を踏み入れる。そして、スキル『紫電』で電光石火が如し速度でモンスターの群れを通過した。モンスターたちは一瞬で俺を見失い、辺りをキョロキョロと見渡し始める。その直後……


「「グギャァアァァァッ!!」」 


 阿鼻叫喚と共に、100体以上のモンスターの体が真っ二つになっていく。切断されたモンスターたちの体から、大量の血が噴水のように吹き出した。


「ひ、ひぃ! いきなりグロイですぅ!」


 後ろからそんなステラの声が聞こえてきたが、俺は無視して先に進むことにした。



◇◆◇



「なんだ今の……。移動も攻撃も、まるで見えなかったぞ」


 一瞬でモンスターたちが100体以上斬り殺されるという異様な光景を前に、思わずそう呟くドンファン。


「まぁ私を倒した男だし、あれくらいは当然でしょ」


 何故か少しドヤ顔でそう口にするジャスパーに少し疑問を抱きつつも、ドンファンは話を続ける。


「というかいいのか? テッドの奴、一人で勝手に行っちまったぞ」


「あー大丈夫よ。ウチのパーティは個人プレイ重視だから」


「そうなのか?」


 周囲のスカーレット、リンリンに確認するドンファン。2人は黙って頷く。


「なんというか、自由なパーティなんだな」


「リーダーのアイツが一番好き勝手に動くからね。しかもウザいくらい強いし。なんでパーティやってんのか不思議なくらいだわ。あーそうだ。ねぇステラ。アンタ最初にテッドと仲間になったとき……」


 バイオレットリーパーの初期メンバーであるステラに話を聞こうとするジャスパー。しかし、周囲にステラの姿はなかった。


「ほらね?」


「何がほらねだ! どいつもこいつも好き勝手いなくなって! 協調性がないにもほどがあるだろ!」


 パーティメンバーでないにも関わらず、一番的を得た指摘をするドンファン。それを聞いたスカーレットは思わず苦笑いを浮かべる。


「ま、まぁ。このパーティはそれでいいんじゃないか。それよりも皆。まずは奴らをどうにかしないか?」


 そう口にし、周囲のモンスター軍団を見渡すスカーレット。


「賛成! テッド君が随分倒したとはいっても、モンスターはまだまだ沢山いる訳だしね! 本当はそんな事思ってないけど!」


「なぁ。さっきから思ってたんだけどよ、その口癖なんなんだ?」


「あー気にしなくていいわよドンファン。特に意味とかないから」


「ひどいよジャスパーちゃん! 本当は傷ついてないけど! あ、そういえばいい事思いついたんだけどさ──」


「「グギャアオッ!!」」


 中々戦いに来ない「バイオレットリーパー」に痺れを切らしたのか、モンスターの大群が一斉にジャスパーたちに襲い掛かってきた。



◇◆◇



「なんでお前がここにいる」


 モンスター軍団をジャスパーたちに押し付け、ダンジョンの奥へと進んでいた俺だったが、何故かステラが俺を追いかけてやって来たのだった。


「モンスターたちから逃げ回っていたら道に迷っちゃいまして……。気が付いたら1人になっていたので、テッドさんの魔力を辿ってここまでやって来ました!」


「邪魔だ。帰れ」


「酷いです! こんなか弱い乙女をあのモンスターの群れにもう一度放り込むんですか!?」


「そう言ってる。それに、お前はか弱い乙女でもなんでもないだろ」


「えっ!? ま、まぁ。これでもテッドさんたちと一緒にたくさん戦ってますからね! 上級職にもなりましたし!」


 俺の一言を急な誉め言葉と受け取ったのか、顔をほのかに赤くしながらそう口にするステラ。しかし、俺はそれを否定する。


「いや、そうじゃない」


「え? じゃあどういう意味ですか」


「お前ステラじゃないだろ。何者だ」


 きょとんとするステラに向けて、俺ははっきりとそう告げた。



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