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106 緊急クエスト


 ポカリ草原付近のダンジョンにて、C+~Aランクのモンスターがおよそ5000体ほど発生。大量発生したモンスターたちの討伐、及びその発生源の調査を依頼する。


 以上が、ギルド受付嬢が話した緊急クエストの概要だった。そして、それを聞いた俺たち「バイオレットリーパー」とドンファン、役立たずの酒カス共は大量のモンスターたちを討伐すべく、万全の準備を……


「うっ……。やばぁ……飲み過ぎたかも……」


「ふはは! ジャスパー! どうやら酒は俺の方が強いよう……おぷっ。目が回る……」


 ……する事は全くなく、全員グロッキー状態で緊急クエストを受注した。先ほどまで酒飲み対決をしていたジャスパーとドンファンは特に重症らしく、より青ざめた表情を浮かべていた。


「バカ共が」


 唯一シラフの俺は状態異常回復の魔法を発動し、その場にいる全員の泥酔状態を治す。


「え、酔いが覚めた……? もしかして、テッドさんが治してくれたんですか?」


 快調になったステラが開口一番にそう言った。


「お前たちには何も期待していないが、足を引っ張られるのはごめんだからな」


「皆さん聞きましたか!? こんな事言いながら、なんだかんだで助けてくれるのがうちのテッドさんなんですよ! もぉ~テッドさんったらぁ~。ツンデレさんなんですから! ふっふー!」


「テッド。私はずっとアンタはやる奴だって信じてたわよ」


「流石、私が認めた男だ」


「テッド君もたまにはやるじゃん。本当はそんな事思ってないけど」


 俺がさも偉業を成し遂げたかのような賛辞を送ってくる「バイオレットリーパー」の連中。余程泥酔状態に苦しめられていたらしいな。すると、一際厳ついガタイをした変態刺青男ドンファンが俺の目の前にやって来た。


「なんだ」


「ありがとよテッド。お礼といっちゃなんだが、俺をお前のパーティに入れてくれないか? 必ず役に立ってみせるぜ!」


「不要だ。消えろ」


 それだけ告げ、俺は集団から抜けて足早にダンジョンへと入っていく。


「早速お出迎えか」


 入り口には夥しい数のモンスターが待ち構えていた。何度も倒したことのあるモンスターもいれば、遭遇したことのないモンスターもいる。これは久々に新しいスキルを大量に獲得できそうだ。


「どうしたんですかテッドさ……うわっ!? まだ入り口なのにあんなにモンスターが!? すいません、怖いので私帰ってもいいですか?」


「あぁ」


「うわぁぁんひどいです! そこはちゃんと止めて下さいよぉ!!」


「泣かないのステラ。コイツってそういう奴でしょ」


 泣きじゃくるステラを慰めるジャスパー。


「はぁ……。まさか店に行けないばかりか、1日の最後にこんなクエストを受ける羽目になるとは……。仕方ない。この鬱憤はあそこのモンスターたちで晴らすとしよう」


「聞いてた通り凄い数だねスカーレットちゃん! まぁ別にビビッてはないけど!」


「さぁて。鍛え上げた俺の筋肉の力……お前たちに見せてやるぜ!」


 大量のモンスターたちを前にして三者三葉の反応を見せるスカーレット、リンリン、ドンファン。まぁ別にやる気があろうとなかろうと、俺の邪魔さえしなければそれでいい……と、言いたいところだが、それは難しいか。


 今日、ポカリ街に帰ってきた際に覚えた不気味な違和感。

 それは、俺を凝視する何者かの不気味な視線だった。

 気配をほぼ完全に消し去り、その何者かは、ただただ俺を観察し続けていた。


 そして、俺の予想が正しければ。


 その何者かは既にこの中の誰かに成り済まし、紛れ込んでいる。


「……いいエサになりそうだな」


 黒い大剣を構え、俺は小さくそう口にした。



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