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105 違和感


 俺はこの不気味な違和感について解析を始める。しかし、いくら解析を進めても違和感の正体が判明することはなかった。ただ、いくつか分かったこともある。それは……


「……なるほどな」


「どうしたんですかテッドさん。そんな極悪人みたいな顔して。人でも殺すんですか?」


「今日は解散だ。各々好きにするといい」


「つ、ついに無視し始めましたね! 酷いです!」


 そう言って、背中から勢いよく抱き付いてくるステラ。普段なら投げ飛ばしているところだが、今回は敢えて放置する。


「スカーレットちゃん! 本当は思ってないけど、お腹空いたしご飯にしない?」


「すまない。ちょっと野暮用があってな。悪いが遠慮しておくよ」


「そうなんだ! オッケー」


「……ここ最近、全然通えてなかったからな……。久々のショタコン天国……。楽しみだなぁ……。もう抑えきれん……ハァハァ」


 リンリンに聞こえないようにぶつぶつと独り言を呟くスカーレット。たしか「ショタコン天国」というのは、10歳以下の少年をキャストとして扱っている中々グレーな店だった筈だが、まぁ個人の趣味にまでどうこう言うつもりはない。興味も無いしな。


「私はギルドに飲みに行こうかな。ステラも、いつまでもテッドの背中にひっついてないで一緒に行かない?」


「んー。私は眠くなってきたので、取り敢えず宿に行って休みます~」


「りょー。じゃ先に行ってるわね」


 それぞれ別行動を開始した4人。俺はその中の一人を追いかけ、目的の場所まで一緒に歩いていくことにした。



◇◆◇



 解散してから約1時間後。俺たち「バイオレットリーパー」は、結局ギルドへと集まっていた。


「くそ! まさか今日に限って店休日だなんて。信じられん……」


「どしたのスカーレットちゃん。本当は気になってないけど、どこか行こうとしてたの?」


「い、いやなんでもない! 気にしないでくれ!」


 慌てて取り繕うスカーレット。本人は上手く誤魔化せていると思い込んでいるようだが、この調子じゃバレるのも時間の問題だな……なんてどうでもいい事を考えつつ、俺はなんとなく辺りを見渡す。すると、見覚えの無い男が酒カス共と騒いでいるのが目に入った。筋骨隆々の肉体に、上半身前面にびっしりと彫られたギルド受付嬢エレナの刺青。さらに背中には「エレナLOVE」という文字が刻まれていた。


「エレナちゃ~ん! ダ・イ・ス・キ・ダァッ!!」


 ダブルバイセップス・バックのポージングで、受付にいるエレナにゴリゴリの愛を届ける筋肉刺青男。それを見たエレナは笑顔で小さく手を振る。まさかエレナに、こんなヘビーでイタいファンがいたとはな。


「あれ? アンタたしか……ドンファン、だっけ?」


 すると、俺の隣で飲んでいたジャスパーが立ち上がり、筋肉刺青男を指さしながらそう言った。


「ん? そういうお嬢さんは……ジャスパーじゃねぇか! 七幻魔を辞めてどこかのパーティに入ったって噂はマジだったのか!」


 ドンファンと呼ばれた男もまた、ジャスパーの言葉に反応を示した。


「お前、あの全身激イタ男と知り合いなのか?」


「私が初めてこの街に来たときさぁ、実はアンタの前にアイツと戦ってたのよね。でも、あれ以来街で全然見かけないから普通に死んだと思ってたわ」


 ぼそりと呟くジャスパー。すると、ドンファンがこちらに向かってドスドスと歩いてきた。


「今の俺はあのときとは違うぜ。こちとらお前に負けてから、ずっとダンジョンに引きこもって全裸でトレーニングしていたんだからな」


「全裸の意味ある?」


 そこから、何故かジャスパーとドンファンの言い合いが始まった。そんな光景を余所に、俺は先ほどの違和感について少し考える。街に奇妙な違和感が生じたタイミングで、丁度ドンファンが帰って来た。これを偶然で片付けるのは容易だが……。まぁいずれにせよ、この男を警戒しておくに越したことはないか。早々に結論付け、俺は再びジャスパーたちへと目を向ける。


「フォオオッ! やったれドンファン! 相手が美少女だからって手加減すんじゃねぇぞッ!」


「ジャスパーさん! 頑張ってください!」


 すると、いつの間にか周辺に集まっていた酒カス共とステラたちがわーわーと騒ぎ始めた。殴り合いでも始めたのかと思ったが、どうやら、ただ酒の飲み比べをしているだけのようだ。……なんだか、コイツ等を見ていると無駄に思考を巡らせている俺がアホらしく思えてくるな。思わずため息をつき、手元の酒を飲み干そうとした瞬間──


「皆さんすみません! 緊急事態です!」


 ギルドの扉が勢いよく開けられ、ギルド受付嬢の一人が慌ただしく駆け込んでくる。


「近辺のダンジョンでモンスターが大量発生しています。至急、討伐に向かって下さい!」


 ギルド受付嬢のその一言で、あれだけ騒がしかったギルド内が水を打ったように静まり返った。



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