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101 狐疑


「俺の……俺の穴がアアアアアアァッ!?」


 腹部から大量出血したアイナの死体を見て叫ぶナーガ。すると何を思ったのか、ナーガは床に這いつくばってアイナの血を舐め始めた。


「あったけェな……。まだ使えるか? ……使えるか! 死んだ直後くらいなら生きてる時とそんな変わらないっしょ! 3秒ルール3秒ルール! キシシェ!」


「何してるの?」


 這いつくばった姿勢のままズボンを下ろそうとするナーガの背後から、ニナの声が聞こえてくる。ニナは一瞬ナーガを見た後、すぐにアイナの死体へと目を向けた。


「あれ。アイナ死んでるじゃん。もしかしてナーガがヤったの?」


「キシシ! ちげェちげェ! 俺もちょうど今来たとこォ」


「ふぅん。それ死にたて?」


「ぽいぜェ。俺の舌調べ」


「へぇ」


 仲間の死体を前にしても、普段と変わらぬ調子で会話するナーガとニナ。そんな異常な2人の背後から、メルが遅れてやって来た。


「ひ、ひいぃっ!? あ、アイナちゃん!? な、なにこれぇ! ど、どどドッキリ!?」


 あまりにショッキングな光景を前に、動揺を隠せないメル。大声で慌てふためくメルの反応がおかしかったのか、くすっと小さく笑うニナ。だが、反応としては明らかにメルの方が正常である事は言うまでもない。


「ざァんねェんメルちゃん。こいつァドッキリでもなんでもねェぜ。キシシシャッ!」


 愉快そうに笑うナーガ。ニナがそれを見て小さく笑い、口を開いた。


「実はこの宿を貸し切る時に結界を張っていてね。外からは誰も侵入できないようにしておいたんだ。仮に僕の結界を破るほどの猛者がいたとしても、結界が破られればすぐに分かる。だから、外部の人間がアイナを殺せるとは考えにくい。つまり……」


 一度間を作る事で、ニナは次に口にする言葉を強調させた。


「アイナを殺した人間はこの中にいる可能性が高い」


「そ、そんな……」


 青ざめた表情で震えながらそう口にするメル。


「キシャシャッ! いいねェ面白くなってきたねェ! 前に読んだ探偵漫画みたいな展開だなァ! なんだったっけかあのセリフ! なんかが1だった気が……あァ! 『犯人はいつも1人!』みてェな!」


「1つなのは真実だね。犯人をいきなり単独犯だと決めつけるなんて、君は探偵失格だよ。ナーガ君」


「キシャシャッ! コイツはいけねェや!」


 弛緩しきったやり取りで笑いあう2人。だが傍から見ていたメルは、2人がどうしてここまで平静を保てているのか、理解に苦しんでいた。


「さてと。じゃあ僕はアイナの体を調べてみるよ。勿論2人の許可が下りればだけど」


「キシャ! 別に構わねェよん。俺とメルちゃんじゃ、どの道アイナちゃんの体を調べても細かい事までは分からねェし。俺らが調べて分かる程度の証拠を犯人が残してるとも思えねぇしなァ!? メルちゃァン!!」


「ひ、ひいい!? は、はぁい!?」


 突然大声を出すナーガに驚くメル。だが、ナーガは何の理由もなしに声を荒げた訳ではないらしい。


「ぶっちゃけ言うとなァ、俺は一番お前を疑ってんだぜ? メェルちゃァ~ん」


「な、なななんで私が!?」


「日頃からアイナちゃんにいじめられちゃってさァ、ムカついて殺しちゃったんじゃなァいのォ?」


「ち、違うよ! 大体私の実力じゃ──」


 メルが言い終える前に、顔を近づけ睨みつけるナーガ。


「もしお前が犯人ちゃんだったら、俺はお前を許さねェぜ? 大切な穴……仲間が殺されたんだ。犯人は絶対に俺が殺ォす! たとえその犯人が仲間だとしてもなァ! キシャシャシャシャァッ!!」


「ひっ! は、はい……!」


 狂っているとしか思えない発言と共に、怪物のような笑い声を上げるナーガ。メルの脳内は恐怖の感情で塗りつぶされていた。


「……へぇ。なるほどね」


 その傍らで、納得したように呟くニナ。どうやらアイナの体を調べて何かが分かったらしい。


「2人共。聞いて」


 一言。ニナがそう口にしただけで、騒々しかったナーガが即座に口を閉じた。


「アイナの体を調べて、面白い事が分かった」


「おォ!? もしかして、もうアイナちゃんを殺した奴が分かったのかァ!? 流石ニナちゃァん! 探偵顔負けだなァ!」


 ニナの言葉に子供のように食い付くナーガ。ニナは上品に笑って、ナーガの質問に答える。


「結論から言うね。アイナを殺した人間は……」


 そう言って、ニナはある人物を指さした。

 その先にいたのは……


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