美少女幼馴染がいるバンドをクビになった陰キャな陰→美女ギャル四人に拾われた後に戻って来いとか遅えんだよ!
「シンジはクビ...!」
「え、ユーコ、なんでだよ!?」
ライブハウスから出たところで。
俺に辞表が突きつけられた。
おんなじ軽音学部で。目指すところはメジャーデビューで。
幼稚園時代からの幼馴染なのに。
「あのねー、あんたがいることで見た目の問題とかあるじゃんか!
それにさ、私の美声が、あんたのサブボーカルで目立たなくなってると思うわけ!」
「だから、ちっとも観客も動員できないし、
店のひとにも申し訳ないし!
あんたが、イケメンだったら!
もう少し様子見で置いておいてもいいと
思うけどさ!」
「眼鏡じゃん!!髪の毛もろくにカットしてなくて、ボサボサだしさ!」
「貧乏なのは知ってるけど!
やっぱ、見た目は気を遣ってもらわないと!」
「ビジュアルは大事よ!
ね、ほかの二人もそう思うでしょう?」
ギタリストとベーシスト。
そんでもって、キーボードの担当者
、俺よか顔かっこいい三人に尋ねてた。
三人とも俺の家庭事情を理解している男友達であるからして。
高校一年生の頃からの付き合いで
短いけれども。
そんなにきつくは言わなかった。
むしろ、俺を擁護してくれた。
まぁ、俺の声量や音域の豊富さは三人がよく分かってくれていたんだ。
「まぁ、見た目なんてのはさ、このくらいなら大丈夫だろユーマ?」とギターのユーヤが言えば、
「ああ、そうだな。
なぁ、おまえもそう思うだろ?ユータ」とベースのユーマ。
「だな、ユーヤ」とユータがユーヤにきり返した。
三人とも似た名前の奴が集まっており。
俺だけ、シンジで。
三人とも、俺とは違う、陽キャ男子ではあるが。
陰キャな俺を認めてくれていたんだ。
「同性のシンジに甘いなぁ!
大体ね、何かしら原因があるから、ライブしても人が集まんないのよ...!路上でやってもダメ、ライブハウス借りてもダメ...!!
私的には絶対、シンジのせいだと思うわ...!!」
「ユーマ達がいくらカッコよく弾いてくれてもさぁ、シンジの見た目で引き算されてると思う..!!」
「ごめん...」
あまりにも責められて。
俺はつい、ぽろりと謝罪の言葉を口にした。
「悪いと思ってるからさぁ!
出てってよ...!」
「私の方でカッコいい顔したボーカリスト探すからさぁ!!」
俺は折れた。
「ああ...。分かった」
「今日限りで俺はお前のバンドを抜けるよ...」
「うん、そうして...!!」
人は誰しも。
何か事が上手くいかないときは。
何かのせいにしたい生き物なのかもしれない。
なんてことを考えながら、俺は肩を落として歩き、でもその一方でむしゃくしゃしてたから。
そんな気持ちを吹き飛ばすべく、
一人カラオケでもしようと思った。
新しくできたばっかのカラオケ屋が目に入ったから、そこに向ったんだ。
「こーなったらな!マジで頭にきたから歌いまくってやる...!」
俺は一人、個室を占領し、
オハコな曲を設定して、マイクを握った。
何度も歌っており、自分的に大好きな曲。
つい先程、バンドの脱退を宣告され、
ムシャクシャしていたが、
曲を聞いたらどうでも良くなった。
そんくらい、俺ってば、その曲と歌うことが大好きらしい。
さて。
暫く、1番を歌いおわり、さて、そろそろ
2番に突入というところで、思わぬ事件が起きた。
え...
俺は歌うのをやめた。
な、何が起きている...!?
個室にぞろぞろと美女ギャル四人が入って来たのだ。
「あのー、部屋間違えてますよ?」
そう言うのが精一杯だった。
「そんなことはないの...」
「気持ちよく歌ってるところ、お邪魔して悪いな、とは思ってるんだけどさ...」
そんな事を髪の毛をいじりながら
四人の中で1番ド派手な金髪ギャルが。
その、俺はあんまり美容のことは詳しくないのだが、インナーカラーとでも言うのか?
ピンク色の髪の毛も2束ほど混じっており、
そのうちの一つの束を右手の人差し指でくるくるさせながら、俺に向かって言った。
「な、何の用があってここに...??」
俺は顔を赤くさせながら、
そのリーダー格と思しき、金髪ギャルに尋ねた。
「スカウトよ!」
「え」
「鍛えた声、してるわね...!?
是非、うちら四人のバンドのメインボーカリストになってくれないかと思ってさ...」
え。
捨てる神あれば、拾う神アリ、ってヤツですねこれ!!
「どうかしら?」
そう言いながら、ソファに腰を下ろしてきた。
いや、座るのは勝手だけどな。
困ったことには。
金髪ギャルが俺の横にピタリと座り、
上目使いをしてきたもんだから、
俺は益々赤くなった。
しかもな、
谷間、見せてきてだな...
いかんせん、女慣れしてないから
刺激が強過ぎる。
「ここのカラオケ屋、ドアの立て付けが悪くなってるらしくてさ。漏れてた歌声とか、四人で聞いて、満場一致で決めたの。
是非、うちのバンドに欲しい人材だって...!」
「い、いや、でもさ。
俺は見た目も悪いし、その...」
「一回追い出されているんだよね。
美少女幼馴染が結成したバンドからさ、、
見た目の問題で...」
「ふーん。そんなに悪い見た目じゃないわよ?
ねぇ?そー思うわよね?ナツもトーコも
アキもさ?」
「うん、そんなに卑下したもんでもないと思う!!」これは赤毛のショートカット女。
「悪くないわ...」そう言ったのは茶髪ボブの女。
「ちょっと、失礼...」
俺の前髪と眼鏡に手をかけたのは
ブルーアッシュ?だと思うけど、そんな髪色をしたロングヘアの女だった。
俺の目の前に
突っ立っていた三人が、まだ、誰が誰だか不明だが。
寄ってきて、
前髪をかきあげたり、眼鏡を勝手に外したりした。
「うん、悪くない!!」と言ったのは金髪ギャル。
「や、やめろ、、触るな...!!」
と叫びたかったが。
ハーレムっぽくて、
悪くないな、と思っている自分がいた。
「あなたの分の会計も私が払うからさ!
もっと声聞かせてくれない??」
金髪ギャルにそう耳元でささやかれ、
俺は嫌とは言えなくなった。
しかもな。タダで歌えるとか、ラッキーだし!
しかも、美女ギャル四人に囲まれているって、
俺、すげえええ、なんて思いながら、
何曲か歌う羽目になったのだった。
さて。
俺は滅茶苦茶歌声褒められて。
外見も悪くないなどと言われて。
二つ返事で、新しいバンドへの加入を決めた。
その後、四人それぞれの名前が判明することになった。
金髪ギャルのハルって女が、
俺に残りの三人を紹介してくれた。
極めて覚え易い。
何しろな、
春夏秋冬だったから。
まず、茶髪ボブが、ナツで。
赤毛ショートがアキ。
最後にブルーアッシュのロングヘアが
冬の子と書いて、トウコって読むんだと
教えてくれた。
「俺はシンジ。よ、宜しく!
今、高校二年生!」
「マジ!?うちらと一緒だ!!」
ハルがキャッキャと騒ぎ、
どうやら、四人のなかで、1番明るくて
元気のいいまとめ役らしかった。
「あのねー、あと、言ってなかったけど、
私のママね、ボイストレーナーしてるの!」
「シンジ、ちょっとトレーニング受けてみない?更にその声に磨きをかける意味で!」
「いや、でも、うち、貧乏で
お金があんまなくてさ...」
「それ、
大丈夫よ!ママはボーカリスト見つけたら
無償で指導したげる!って言ってたし!」
「ま、マジ...!?」
ね、願ってもない、展開だぞ...!?
最早コレ、ラッキーとしか言いようがないな。
俺、幼馴染に捨てられて良かったと思った。
ドラム、ハル。
ギター、アキ。
ベース、ナツ。
キーボード、トウコ。
俺、ボーカル。
バンド名はgals plus one。
略してギャルプラ。
俺はもう、
加入後に、ハルママからみっちり、ボイストレーニングも受けて。
そんで、更に有難いことに、
髪の毛をカリスマ美容師と名高いナツママに
切ってもらって。
まぁ、色々お金が浮いたので、
コンタクト代は隙間時間のコンビニバイト頑張って捻出することにした。
俺、イケメン化と。
更なるイケボ化に、成功した。
まぁ、詳しく書かないけど、
ハルママのしごきは鬼の様だったけど。
何回かハルの家のそばのちっちゃなライブハウスで歌った。