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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

撮影現場 ~最後まで見ると死ぬ映画~

作者: 回道巡
掲載日:2021/12/01

 「きゃぁあっ!」

 悲鳴が響く。

 「あの映画を見て一週間後に死ぬなんて……、そんなの本当だって思う訳……っ!?」

 頭に過ぎった経緯を、後悔と共に口にしたのが、頼子(よりこ)の最期の言葉となった。

 「……」

 憐れな頼子を一瞬で絞め殺した黒髪の死霊は、そんなことをしたとは信じられないような細腕を這わせ、よろりと立ち上がる。目元どころか顔の半分以上が見えない程に前髪の長いその女は、そのまま“こちら”へ視線をむけ――

 「はい! カットぉ!!」

 小気味いい拍子木の音に重ねて、監督の威勢いい声がスタジオに轟く。

 「どうでした?」

 「すごく良かったよぉ、私も思わずぞくぞくしちゃった」

 むくりと起き上がって自分の死に様の感想を聞いた頼子に、前髪をかき分けながら死霊が朗らかに答える。――ここは映画「死ネマ」の撮影現場。

 「監督はどうでした?」

 頼子役の女優が次いで感想を尋ねると、監督は拍子木を見ていた。

 「お祓い用……でしたっけ? それ」

 「ああ、知り合いの神主に借りたものなんだが……ほら」

 監督の手元では、綺麗な白木の拍子木にヒビがはいっていた。

 「なんか不気味ですねぇ」

 歩み寄ってきた死霊役の女優も、自分の体を抱くようにする。

 「どうした?」

 ふと頼子役女優の顔色が悪くなったことに、監督は気付いた。

 「いえ……この映画の撮影も、最後のシーンまで終わったな……って」

 最後まで見ると死ぬ映画という題材が、今更の不気味さを醸し出す。

 「……スタッフさん達は?」

 「ああ、今君たちに渡す花束を取りにね」

 続いた呟きに監督が答え、揃って広いスタジオの出入り口へと視線を向ける。だが時間が経っても誰も現れず不安から言葉も続かない。

 「あがっ!?」

 沈黙を破ったのは監督の苦鳴。

 「ひぃっ!」

 頼子役女優の戦慄が続き。

 「――ぃゃぁぁああ!」

 死霊を演じた女が何かに気付いて上げた悲鳴を最後に、場は完全に静かになった。

 

 後に残るは三つの体。伏して動かず、もはや生気も見当たらない。

 

 「――」

 完全に沈黙したと思われた場に、微かな擦過音。

 それはぎこちなく動いた指先が床を擦る音だった。

 そして何かに引き上げられるような不自然な動作で、かつて死霊役女優だったモノが立ち上がる。

 それは確かに“こちら”を凝視する。前髪に覆われているはずの両目が、はっきりと感じられる。そして――

 ――最後まで読んだわね。……あなたのことも、見えているから。ほら、本当は薄々と、背中に感じているでしょう? もうそこに――

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― 新着の感想 ―
[良い点] 何が起こったか謎の三つの体、静かに動き出すモノ、ラストのセリフ、とても怖かったです。
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