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第25話 殺戮の女王

「ふんふんふ-ん♪」


 私は司教の首を槍に刺し、教会の外の地面にそれを突き立てた。


「おっと、これを忘れてはいけませんね」


 司教から貰ったペンダントを掛けようとしたが、掛けるところがない。

 仕方ないので司教の口に突っ込んだ。



「うーん、壮観です。うふ」


 教会の外には槍が何十本も突き立てられているが、そのすべてに生首が刺さっている。

 どれも苦痛と恐怖に歪んだ顔だ。


「やはりこれぞ戦って感じですよね」


 奴隷以外は皆殺しにした。


 私は平和主義者だが、このような徹底的な殺戮をおこなうこともある。

 そうすることで他の部族は私を恐れ、戦うことなく恭順する。結果的に犠牲者は減る訳だ。

 非常につらいことではあるが、王たる者はその決断ができなければならない。


 ……と長々語ってしまったが、今回のこととはまったく関係なかったりする。


「ただノリでやってしまっただけです。何も正当性はありません。てへ♪」


 私は自分の頭をこつんと叩いた。



「……しかし、やっぱり復讐はいいですね」


 私は目を瞑り、両手をいっぱいに広げた。

 ぽっかりと空いた心の穴に、何かが満たされていくのを感じる。



「おいおい……とんでもなくやべえガキがいるぞ」


 私は瞬時に身をひるがえし、戦闘態勢をとる。

 目の前には漆黒の鎧を纏った、非常に大柄な男が立っていた。


 ――馬鹿な!

 探知や兎の耳は使っていなかったが、この私の背後を易々ととっただと!?

 それも重装鎧を身に着けていながら!


「何者だ!?」

「いや……こっちが聞きてえよ。全裸で血まみれで……これ、まさかお前一人でやったのか?」


 大男はまったく警戒する様子もなく、私の自慢の作品を指差した。


 ――鑑定。



 名前 :????

 クラス:戦士(ファイター)


 体力 :158

 持久力:105

 筋力 :132

 技量 :86

 魔力 :0


 スキル:片手剣LV7 両手剣LV8 斧LV8 槌LV7 槍LV7 弓LV5 盾LV6 騎乗LV7 統率LV7……。



 ……やはりな。この男、かなりの猛者だ。

 今の私では絶対に勝てない。素直な態度をとっておくか。


「はい。私はここの奴隷だったので、復讐をしたのです」

「わはははははは! そりゃすげえ! 俺も初陣はお前と同じくらいの年だったが、そん時は5人くらいしか殺れなかったぜ?」


「正攻法ではありませんでしたから。ヤグルキノコの毒を使ったのです」

「ああ……遅効性の麻痺毒か。即効致死性の毒を使ってないあたりに、お前の恨みの深さを感じんな! わははっ!」


 錬金のスキルは持っていないようだが、毒の知識はあるのか。侮れないな。

 というよりそもそも、この異様な光景をすんなり受け入れているのがおかしい。

 8歳児にこんなことができるとでも?

 この男は、そういった怪物を見慣れているのだろうか?


「あなたは……?」

「おう、俺の名はヴォルヘルム・ツィンスベルガー。デーモンハントっていう傭兵団の団長だ。聖都モルカーナを落としに、はるばるバルチナ神王国から来てやったぜ」


 バルチナ神王国……大国側か。

 関所を突破したのか、それとも山と森を越えて来たのか、まあ、どちらにせよ――


「あなたのような手練れにここまでの侵入を許してしまっているようでは、聖都の命運は尽きたも同然ですね」

「ほーん……。お前……名前なんて言うんだ?」


「……マルチェラ」


 この名前はもう捨てるつもりだったが、本名を名乗るのは賢明とは言えぬし、他に良い名前が思い浮かばなかった。

 

「よしマルチェラ、俺について来い。聖都が陥落する様を見てえだろ?」


 今の私に最も必要なのは情報だ。

 何せ未だに、何年棺の中にいたのか分かっていない有様。


 歴史、地理、社会情勢、そういった知識を得るには、国の中央機関に所属するか、学校に入学する必要がある。

 この男が神王国の将軍だったら喜んでついていくところだが、こいつは所詮傭兵。身分としては雑兵と何ら変わらぬ。ついていくメリットはない。


「とてもありがた――」

「魔族どもを狩り殺すのも楽しいぞぉ! ちなみにこっちが本業なんだぜ? 今じゃほとんど魔族は残ってねえから副業ばっかりだけどな。がははは!」


 魔族……? 魔族……!


 ヘルハウンドに食われた孫の顔が思い浮かぶ。



「それは楽しみですね」


これにて第二章完結です。


明日5月12日(金)に第一巻発売です。どうぞよろしくお願いします。

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