表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/133

第20話 対校試合

「諸君! 我々に敗北は絶対に許されない! 必ずや、勝利を!!」

「おおおおおお!!!!」


 総大将フォンゼルが掲げた剣に(なら)い、生徒たち一同が各々の武器を掲げる。



 ドロシーが退学してから約2か月後の9月4日。

 我らがケテル・ケロス勇者学院と、ルーチェが入学する予定だった地方勇者学院との対校試合が開催された。


 砦を攻める側と守る側に分かれ、攻撃側は砦を突破し、玉座に置かれている王冠を持ち帰ったら勝利。

 守備側は一定時間王冠を守り切るか、攻撃側の総大将を討ち取れば勝利である。


 攻城戦と籠城戦、両方を学ぼうという訳だ。

 なお、守備側は超有利なので、人数は半分となっている。



 この時に性女アーテルは、何人かの男を見定め股を開く。

 それが原因で、後にレオンティオス、バルト、ステイフの3人にいざこざが起きるのだが、今回はその心配はいらない。



 さて、そろそろ始まるぞ。まずは俺達が攻め手側だ。

 ここからは本当に笑える。今回も存分に楽しませてもらおう。



「よおおし! 全員とつげえええええき!」

「……え?」


 フォンゼルの号令に生徒たちの眼が点になる。


「どうした!? 突撃の命令を出したのだ!? さっさと砦を落とせ!」

「は、はい!」


 ガチガチに守りを固めている相手に突撃って……俺は必死に笑いをこらえる。


 フォンゼルは、魔法の威力に頼り切った正面突破しかできない。

 それゆえ、魔法を封じられると、どう戦っていいのかが分からないのだ。



 パシュパシュパシュッ!


「――そこの4名、退場!」


 案の定、フォンゼルの命令に忠実に従った4名が、城壁の守備隊から一斉攻撃を受け退場となった。


 もちろん、練習用の武器を使い、互いに手加減して攻撃している。

 魔法は殺傷能力が高すぎるので、使用禁止だ。


「く……おのれ……! レオンティオス! お前の武勇で何とかしてみせろ!」

「御意!」


 レオンティオスは背中に木の大剣を背負ったまま、悠然(ゆうぜん)と城門へと向かって行く。


「我が名はレオンティオス・キャルタンソン! そちらの大将に一騎打ちを申し込む!」


 城壁の上にいる地方勇者学院の生徒たちは、互いに顔を見合わせ、首を傾げた。

 そして彼等は、レオンティオスに矢を一斉に放つ。


「レオンティオス卿、退場!」

「おのれえええええ! 卑怯だぞおおおお!」


 そりゃそうだろ。向こうには、一騎打ちに応じるメリットがないのだから。


「あははははー! こりゃ負けるなー!」

「クーデリカ公女殿下、笑いごとではありませんぞ! 我等王族が下級貴族や平民に負ける事など、あってはならないのです!」


 だったら、もっと頭を使え、頭を!


「よし! 身分の低い者から前に並べ! それから再度突撃だ!」


 俺達を盾にしようという訳だ。これが次期国王かと思うと、本当に泣けてくる。


 ちなみに、この無茶な突撃で毎回全滅して終わりだ

 その後の、フォンゼルの八つ当たり説教とビンタは最高に面白い。



「魔王太子殿下より、全軍による突撃はお止めになるようにとの事です」


 通訳の男は、緊張した面持ちでフォンゼルに話しかける。


「……何だと? この私の戦術に文句があると言うのか?」


 フォンゼルは、デスグラシアをギロリと睨みつける。

 こんな展開は初めてだ。デスグラシアが口出しした事など、一度も無かった。

 一体何があった?


「あの射手をどうにかしないと、全滅は必至と仰っています……」

「そんな事は分かっている。だが、向こうの方が有利なのだ。正面から撃ち合っては勝てん。それならば、さっさと門を突破し、制圧した方が良い」


 フォンゼルの言っている事も一理ある。

 守備側の射手は、高所かつ、城壁に身を隠しながら弓を撃てるのだ。

 対して、攻め側には一切身を隠す場所がない。弓矢の撃ち合いでは、圧倒的に不利なのだ。射手を仕留めてから、門を攻撃する事は現実的でない。


 デスグラシアが俺の前に来る。


『ニル、私の膂力(りょりょく)であれば、木槌の一撃であの門を破壊できると思う。私を矢から守ってはもらえまいか? 王太子の愚策のせいで、皆の名誉が傷付くのを避けたいのだ』


 なんと……クラスメイトの誇りの為に、フォンゼルに意見したのか。

 フォンゼルのアホな作戦に乗って、全滅するのを笑っていた俺とは、大違いの気高さだ。ちょっぴり恥ずかしくなってきたぜ。


『もちろんです殿下。必ずや、御身を守りぬいて見せます』


 そういう事であれば、本気を出すしかない。

 デスグラシアの想い、必ずや成就させてやろう。


「王太子殿下、私と魔王太子殿下で門を突破します」

「ははは! たった2人だけでだと!?」


 実は2人だけの方がやりやすい。

 全員を矢から守るのは不可能だが、自分とデスグラシアだけなら手が届くからだ。


「左様でございます」


 生徒たちがざわめく。

 矢が降り注ぐ中、魔法無しで門を破壊できるはずがない。――そう思っているのだろう。


「ふっ、無理に決まっているだろうが、お前達が退場したところで何も問題無い。やってみるがいい」

「御意」


 その見下した笑みが、驚きに変わる瞬間が待ち遠しいぜ。



『殿下、王太子の許可が下りました』

『うむ、大儀であった』


 デスグラシアは武器置場から大木槌を取り、肩に担いだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ