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スタート

私はいつも全力で走り抜く。


いつも学校では、かけっこで一番。

私の唯一自慢できる事は、走る事だけだった。


勉強をしても、なんでか脳みそは理解してくれないし、眠くなっちゃうし!


やっぱり私は体を動かして、動かして、動かし続けないと『幸田(こうだ) 絢愛(あやめ)』らしくないと思うんだ。


だから、わたしは今日も部活の陸上部で大会に向けて練習する。


「よーい…[パンッ!]」


顧問の先生が大会先と同じスターターピストルを新調してくれて、みんなで使い倒す。


「やっぱり、絢愛は耳がいいね!スタートうますぎる!」


「そうかな?ありがとう!」


私のスタートを褒めてくれたのは、親友の結美。

結美とは、保育園の時からずっと一緒。


この部活を進めてくれたのも結美からだった。


結美はかっけこが苦手だったけど、私と鬼ごっこばっかりしていたからいつもいい接戦をするまでになった。


絢愛「結美!このあとさ…」


「結美先輩!」


部活終わりに、岩盤浴を誘おうとすると一個下の下級生の男の子が結美に声をかけた。


結美「あ、坂本ちゃん。どうしたの?」


「えっと…。」


結美はそのまま汗を水で流し、洗顔の石鹸を手に伸ばす。


坂本君は私を見てなんだかモジモジし始めた。


絢愛「…?」


「幸田先輩、ちょっと結美先輩借ります!」


と言って、洗顔途中の結美を連れてってしまった。


絢愛「わぁ!わっかいなぁ!頑張れ!」


と手を振り、成功を祈りながら自分の荷物と結美の荷物をまとめた。

私は水道の縁に腰をかけて、結美と坂本くんを待っていると結美一人で帰ってきた。


絢愛「お帰り!」


結美「ただいま。待たせてごめんね!」


絢愛「いいよいいよ!坂本くんは?」


結美「帰ったよ。」


絢愛「ふーん?ま、彼氏出来たらちゃんと惚気話聞かせてね!」


結美「…うん。」


ニコッと結美は笑い、自分の荷物を持って、更衣室に向かう。

私もそれについていく。


坂本くん、ダメだったかー。

結構仲よくてクラスにも遊びに来てくれてたんだけどもう来なくなっちゃうかなー。


誰もいなくなった更衣室を広く使い、着替え始める。


結構遅くなっちゃったから、岩盤浴はまた今度で行きつけのお団子屋さんに行こっかな。


結美「絢愛、岩盤浴行く?」


絢愛「え!行きたいと思ってた!」


結美「やっぱりね、そういう顔してたもん。行こ。」


絢愛「うん!」


結美はいつも私の考えている事がお見通しだ。

いやぁ、こんな子の彼氏は幸せ者だろうなー。


着替え終えて、まだ使っていない体育着を岩盤浴帰り着る用に持って外に出る。


絢愛「日が暮れると、まだちょっと寒いね!」


結美「そうだね。この時期いつも何着るか迷うよね。」


絢愛「それ!本当、寒いか、暑いかどっちかにしてほしいってもんだ!」


結美「今日は贅沢3時間みっちり岩盤浴しちゃおう。ドバドバ汗かきに行こう!」


絢愛「えー!いいの!?門限は?」


結美「門限破るのが青春って絢愛言ってたじゃん。」


絢愛「そうだね!ま、連絡入れとけば大丈夫大丈夫!」


結美「今入れとこー。」


二人で携帯を出して、親に連絡してあとは機内モードで一切の連絡を遮断する。


電車に乗って、地元の岩盤浴に行き、三時間で4リットルの水を飲む大記録を結美は出した。


日がどっぷり暮れてもう21時が過ぎ、コンビニでアイスを買い歩きながら家に向かう。


絢愛「あーこんな遊べるのも高校生までかー。」


結美「なんで?大学は?スポーツ系のところ行くんじゃないの?」


絢愛「ううん。災救で働こうと思ってる!」


災救は、正式名 災害救済特別区と言って、

私たちの生きているこの時代が災害時代と名ずけられるほど災害が多発していて、

その災害で困ってる人を助ける団体のことだ。


元は自衛隊や消防団など公務員の人たちが人命救助をして、みんなの命を救っていたが災害の起こる数が多すぎて人員が足りなく、その力になるために民間が立ち上げた物だ。

支援金を全て被災した人たちに使っていることが毎年HPでUPしているので、とても評価が高い団体でもある。


私は、体を動かす事しか能がないから、一番向いていると思っていた。


結美「陸上選手になるんだと思ってたよ。」


絢愛「ううん!私よりももっと脚が速い人なんて世界に行ったらわんさかいるし、元々は結美と遊ぶために始めた事だからこれだけは嫌いになりたくないの!」


結美「そっか。…じゃあ私も災救に行こっかなー。」


絢愛「え!いいの?歌やらないの?」


結美「それは、歳とっても出来るから。災救なんか若くないと出来ないじゃん。」


絢愛「あわわ!嬉しい!」


食べかけのチョコアイスを持ちながら、結美に飛びつく。


結美「危ないよ!アイス落ちる!」


絢愛「絶対わたし達、ソウルメイトだよね!」


結美「かもね。」


結美はふわっと笑った。


きっと結美とはおばあちゃんになっても一緒にいて、日が当たって気持ちいい庭で日向ぼっこしながらお茶菓子食べるんだと思う。


私は幸せ者だ。

こうやって、大好きな友達と一緒にいられて。

自分の家族も、元気に生きている。


同じ国に住んでいる子の中には、災害で親や友達、大切な人を失った人がたくさんいる。

その中でみんなと居られる奇跡に毎日感謝している。


でもどんなものにも、終わりがやってくる。

それは私が思ってるより、はるかに早く残酷に大切な人を私から引き離した。



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