ステラの異変②
いよいよ、ユウキは戦士となってステラの世界へと次元を越える。
「ステラ様!」
レグルスが、落下してゆくステラを受け止め、後方へと下がると、サルガスが、瞬時にリーダー格のアンドロイドと対峙した。
ステラを傷つけられて、怒りに燃えるサルガスは、エネルギー弾を数発撃ち込み、相手が怯んだところを、怒りの剣の一撃で、敵のアンドロイドを簡単に倒してしまった。
闘いは、十剣士などの活躍によって、ネーロ軍のアンドロイド部隊を撃退する事が出来た。
ステラの怪我は、戦闘スーツの防御システムのお陰で軽い熱傷で済んだが、いつもなら負けるはずもない相手に後れを取った、精神的ショックの方が大きかった。
「ステラ様は弱くなられた。半年間のブランクのせいかも知れないが……」
レグルスが顔を曇らせて、病室の外でサルガスと話していた。すると、
「サルガス、明日から戦闘訓練をするわ。付き合ってくれる?」
病室から、ステラの声が聞こえて来て、サルガスは「了解!」と元気に答えた。
次の朝から、ステラはサルガスを相手に特訓を始めた。だが、何度戦っても、ステラの身体の動きは戻らなかった。ステラは、それでも、サルガスに挑んでいったが、焦れば焦るほどに動きは鈍るばかりだった。
「ステラ様、これくらいにしましょう……」
サルガスが、剣を引くとステラはガックリと膝をついた。
「何故、力が出ないの!! 何故……」
ステラの目から悔し涙が溢れた。
「ステラ様……」
サルガスは、ステラをどう慰めたらいいのか分からず、彼女の傍に佇むばかりだった。
サルガスは、この事をレグルスに報告した。
「あれだけ強かったステラ様なのに、信じられません。暫く戦闘は無理かもしれません」
「そうだな……。一度、アレク将軍の指示を受けてみよう」
アレク将軍は、軍の総司令官で、ステラの姉アトリアの夫でもある。レグルスは、その足でライト王国の防衛本部に将軍を訪ねた。
アレクは、何やら机に向かって書き物をしていたが、顔を上げ、笑顔でレグルスを迎えた。
「将軍、ステラ様の事は聞かれましたか?」
「ああ、格下の相手に後れを取ったそうだね」
「はい、このまま戦線に立つのは難しいかと思われます」
「そうか、あのステラが……。やはり、半年間のブランクのせいか?」
「どうも、それだけではないようです。地球で出会ったユウキという青年に恋をしているのではないかと思われます」
「ああ、彼のことなら聞いている。ユウキはステラに振られたと聞いたが、違ったのか?」
「はい。ステラ様自身は気付いていないようですが、間違いないでしょう。
愛する人を残して死にたくないという死への恐怖心が、無意識のうちに彼女の動きを鈍らせているのだと思います。何時かは、乗り越えなければならない試練かも知れませんが……。姫様が不憫でなりません」
レグルスの眼に涙が光った。彼は、恋さえ自由に出来ないステラの境遇を思い、涙したのである。
「そうだな、この戦争さえ無かったら、ステラは皇位後継第一位の王女として幸せな人生を送れたはずだ、私もそれが口惜しい。レグルスは、ステラの師匠だったな。……ステラ無しでこの戦いに勝てないだろうか?」
「それは無理です。この国の戦士にとってステラ様は希望ですから」
「そうだったな。酷なようだが、彼女が腹を決めるしかないという事か……。一度、女王様を交えて、ステラの気持ちを確かめてみるよ」
その日の午後、ステラは母アンドロメダに呼ばれて王宮へ戻った。
女王の執務室に入ると、アンドロメダ、アレク将軍、ロータスの三名が厳しい顔で彼女を待っていた。