ユウキの試練②
ユウキは二週間ほどでカプセルから出ると、ライト王国から来た医療チームの手術を受けたが、下半身の麻痺は治らなかった。
彼は、新築されたステラハウスで療養する事になり、ステラが看病についた。
破壊尽くされた、サウスシティだったが、ライト王国の応援もあって、基地の復興工事が始まっていた。
ユウキは窓越しに、その建設の槌音を聞きながらも心は虚ろだった。戦士となって、この国のために働きたいという願いが潰えた今、彼の心を支えるものは何も無かった。
「ねえ、車椅子で散歩しようか?」
ステラが、ベッドから降りようとしないユウキに声を掛けた。
「……そんな気分じゃない」
ユウキが、虚ろな顔を背けた。
「そう、じゃあ二人でゆっくりしましょう」
「君も忙しいんだろう。僕の事はいいから、任務についてくれ」
「私の任務は、此処であなたの妻を演じる事よ」
「……」
弱気になったユウキが涙ぐむと、ステラがベッドに入って、優しく彼を抱きしめた。
それから一月が経った頃、ステラの愛に包まれたユウキは、次第に元気を取り戻しつつあった。彼にとっての支えがステラの存在だった事を、今更ながら思い出したのである。
その日は、ステラが、彼を散歩に誘った。
「あなた、岬まで散歩しない?」
「そうだな。海が見たくなった。行こう」
ユウキは移動カプセルに乗って、ステラを伴い岬へと向かった。移動カプセルは、直径二メートルほどの球形の乗り物で、重力制御で何処へでも飛んで行ける優れものである。
「こいつは凄いな。面白いぞステラ!」
ユウキは移動カプセルを操って、自在に飛んで見せた。
「余り、はしゃぎすぎたら、落っこちるわよ」
二人は、久しぶりに笑い声を響かせながら、岬の先端へとやって来た。
海は凪いで、太陽を浴びた波がキラキラ光っていて、爽やかな風が二人の頬を撫でた。
「ああ、気持ちがいいな。生き返った気分だ」
ユウキは、大きく深呼吸をして新鮮な空気を吸い込んだ。
「ほんとね。お弁当でも持ってくればよかったわね」
二人は、暫く岬で時間を過ごしていたが、不意にユウキが真剣な目になって話し出した。
「ステラに聞いてほしい事があるんだ。このままでは、僕は、ステラのお荷物になるだけだ。この国の為に戦う事も出来ない。そこでだ、戦士として戦える方法が一つだけあるんだ。例のエイリアンのスーツを着用しようと思っているんだ」
「でも、それを装着すれば、人間ではいられなくなるんでしょう。私は反対だわ」
「何故だい。機械になってしまっても完全に死ぬわけじゃない、自分というものは残るはずだ。ステラを忘れたりはしない。この世界で、戦えない戦士は死んだも同じじゃないか。苦労して此処迄来た意味がない」
「私と夫婦になれたじゃない、それだけでも来た意味はあったわ」
ステラは、ユウキに寄り添い、自分の腕を絡ませながら、彼の目を見つめていた。
「分かってくれステラ。博士に二人の赤ちゃんを抱かせる約束は守れそうもないが、どうせ死ぬなら、この国の為、いやこの星の為に戦いたいんだ!」
ユウキが懸命に頼んだが、ステラは首を縦には振らなかった。彼女は、戦士として戦いたいというユウキの気持ちは、痛いほど分かっていたが、エイリアンのスーツは余りにも分からない事が多すぎて、不安が先に立ったのである。
そして、機械となったユウキを愛する自信もなかった――。
次の日、ステラがライト王国に出掛けると、ユウキは、密かに移動カプセルに乗って、ストレンジ博士の研究所に向かった。
「ユウキ、そんなもので此処まで来たのか!? 出歩いてもいいのか?」
移動カプセルに乗ったユウキを見て、ストレンジ博士があきれ顔で言った。
「戦闘スーツの様に早くは飛べませんが、二時間で来られました」
ユウキは、さすがに疲れた様でフーと息を吐いた。
「その様子では、ステラに内緒でやって来たんだな」
「バレちゃいましたか。それで……博士に折り入ってお願いがあるのですが」
「エイリアンのスーツの事じゃな」
「やはりお見通しですか。あのスーツを着用させて下さい。ステラは納得していませんが、こんな身体になって肚が決まりました。お願いします!」
「……本当にいいのか? 命の補償もないんだぞ」
「このまま生きていても、戦士としてこの星の為に貢献する事は出来ません。私は、どうしても戦士にこだわりたいんです。お願いします!」
「そこまで言うなら、いいだろう。万が一の時は、骨は儂が拾ってやる!」
博士は、そう言ったものの、目の前のユウキの顔をしばらく見つめていたが、思い切ったように踝を返し、奥の部屋の鍵の掛かった引き出しから、エイリアンのスーツの指輪を取り出し、彼に渡した。
ユウキがその指輪を装着すると、コバルトブルーの孔雀の戦闘スーツが彼を包んだ。




