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中国拳法の虚実

 中国拳法は強いの?

 ここまで実情と創作物に差がある技術体系もなかなか珍しいと思います。

 ネット上では中国拳法の強さについて語る人もいたり、そっとしておいてあげなよという実践者からの哀れみの声も聞こえます・・・



 それでは始めたいと思います。

 まず、何をもってして中国拳法というかが非常に難しいです。

 何故なら流派ごとの差が非常に激しいからです。それは戦闘術として中国拳法は近代化に失敗した技術体系だったからです。


 第2次大戦後に中国政府は中国拳法の武道化を目指して各地にある中国拳法について調査を行いました。ここまではよかったのですが・・・各地にいた達人達は自称達人と呼ばれるレベルで強くなかったという悲しい現実に当たります。

 中には突然変異のごとく強い人はいたのでしょうが、あくまで例外で相当レベルが低かったとの事です。


 ただ、これは中国拳法が悪いというよりかは日本武道が先に行き過ぎていたという感じではないかと思います。第2次大戦前後の日本武道については投げ技、関節技の柔道、武器を扱う剣道と居合術及び武器術、打撃については空手があり、流派によっては防具をつけてフルコンタクトの練習もしていました。

 これに加えて総合武術的な概念で作られた合気道や日本拳法もあります。

 恐ろしい事にこれらが系統たてられた技術体系として形になっているうえに、試合や演武といった共通の評価方法があり、誰がみても強さが一目瞭然でした。

 日本の武術が早期に武道化できたのは平和が長く続いた江戸時代に武道の基礎である、試合や演武による技術の統廃合がある程度、行われていた事が大きいと思います。これに明治維新の実戦経験、富国強兵政策すべてがよいように働きました。



 当時の中国政府の担当者は悩んだ事だと思います。自国のモノをまとめなおして、日本武道より良いモノができそうになく、日本から技術を持ってきた方が効率的だからです。

 これに加えて当時の武術家というのは我が強く、ほら吹き気質なので、中国拳法同士で揉めたと思います。


 そこで中国が考えたのは実際に相手と接触して戦う技術の統一をあきらめるという事です。かわりに型競技として中国拳法を統一していきます。

 その結果、生まれたのが表演武術という型競技です。そんでも持って誰もが予想したとおりに戦闘術というよりかは芸術の分野に突入していいきます。中国側も手をこまねいていたわけではなく、散打という中国式キックボクシングの競技体系を作りますが、諸流派の協力はあまり得られなかったようです。



 中国拳法は風前の灯になるかと思われましたが・・・逆に中国拳法は別の分野でメジャーとなっていきます。ブルース・リーの出演した映画が空前のヒット作となった事から、香港カンフー映画というジャンルを成立させる事ができたのです。

 また、型競技化する事により多くの武器術の型を残す事ができ、それが映画などのエンターティメントに使うのも一役買いました。


 日本の殺陣については、剣道や居合が元で作られている関係で中国系の殺陣に比べると地味です。日本は武道化した時に武術を試合や演武という物差しで評価し使えないモノを除いてしまったためです。

 逆に中国については玉石混合のまま型競技になった関係でバリエーションが豊富です。

 この魅せるという分野については中国拳法は日本武道を超えているのではないかと思いますし、映画での実績も中国拳法の方が上です。


 その証拠に現実の歴史では中国拳法の世界的な達人というのはいません。

 逆にエンターティメントの世界においてはジャッキー・チェンやジェット・リーなどかなりの有名人を輩出しています。

 唯一の例外がブルース・リーですが彼は中国拳法に他の要素を加える事により、新たな実戦的な武道を作ろうとしていたのでベクトルが違います。ブルースの師であるイップ・マンにしてもローカルチャンピオンにすぎません。


 というのも日本武道が生まれ試合や演武をするようになったため公開試合や演武で強さを競うという風潮が生まれ、それ以前の人の強さが疑問視されるようになりました。

 なんやかんや言ってもブルース・リーの強さと伝説に異論がつかないのは彼は試合はしなかったものの演武の映像が多数残っており、試合形式の練習などのエピソードも豊富なためです。


 では中国拳法が試合や実戦で強いかというと・・・強いわけがありません。共通の物差しで評価をしてドレが凄いかというのをやっていないからです。逆にやっていないのでバリエーションが豊富です。

 リアル系の格闘技はとにかくシンプルで地味になるんですよね。


 というわけでなろう的には中国拳法は相性がいいはずなのですが、あまり採用されない傾向にあります。というのもマジカル中国拳法にしてしまうと単純に殴る蹴るとなってしまい。中国拳法の技法がいらないからです。

 リアル系を追求していくとSF的なトリックを加えて物語を進めないといけないので技量が要求されますし、すでに専門職の創作家がいろいろやっているので2番せんじになりがちです。


 なろうでも現実でも中国拳法はそっとしておいた方が無難かもしれません。

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