始まり
ここは、とある種族が数百年に一度集まると言われている集会。
現実とは少し違い、世界の秩序から外れ、時の流れも狂っているここは、彼女たちにとって憩いの場でもある。
湖や、海、空、山、森、花園…様々な自然に囲まれている広場に、彼女たちは集まる。
時に戯れ、時に相談し、話に花を咲かせる。
この広場に来る彼女たちの姿形、住んでいる世界は様々だ。
魔術に長けたもの、知識に長けたもの、長寿に不老不死。能力も多岐にわたる。
そんな彼女達は、どの世界でもこう呼ばれた。
……魔女、と。
賑やかな場所。人とは違い偏見も常識も魔女それぞれ。
東の魔女に嫌われれば西の魔女に好かれる、という言葉があるように、好みも趣向も本当に様々の魔女達が集まる。
もちろん言語も違う彼女たちだが、この広場では共通の言葉を発している。
「ごきげんよう、皆様」
「久方ぶりですわぁ〜」
「皆相変わらず変わらんのぅ」
あちこちで顔見知りの中でも特に親しいもの同士で集まる。
「マリア様もお変わりありませんわ」
「そうかの?最近は村人達がまた流行病だとかで昼夜騒いでいて寝不足なんじゃがの」
「そうなんですかぁ〜、大変ですねぇ?」
マリアと呼ばれた魔女はほかの二人の魔女と同じテーブルで紅茶を楽しむ。
「時に、雪之丞とイザベラはなにか進展はあるかえ?」
「特にございませんわ。私の世界はいつでも銀と白のみです」
「こっちも〜、毎日お花が咲いてますよぉ」
「そうかの…」
魔女達は日々退屈をしていた。特に人から恐れられている魔女は何年も一人で退屈をしのがねばならない。
大半の魔女は日夜研究をしているが、能力や体質によってはそれが出来ない魔女もいる。
「退屈をしのげるような何かが欲しいのぅ」
「そうですわね。色があるといいですわ」
「私のところは妖精がいるので退屈にはならないですが〜、せめてご招待出来ればいいのですがね〜」
「ふむ…」
魔女の世界の一つの禁忌。他の世界の魔女が誰かの世界に行くことは最大の禁忌とされている。
なぜ禁忌とされているかは、今の魔女達の間では知られていない。
「あ、そろそろ時間のようですわね」
「ですねぇ。寂しいですわぁ」
「ふん、また数百年後じゃの」
三人は終了の鐘の音と共に立ち上がり、各々の帰る道へと向かう。
一人は山へ。一人は花畑へ。そして最後は丘へと歩みを進めた。