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魔導図書館の小さな司書  作者: 結城 才斗
5/8

5.不穏

魔導図書館の地下へ続く階段。その階段を3人の女性が降りていく。

1人は黒髪の小さな少女であるヨム・リードナー。次に続くのが長い赤髪の後輩リンク・ナレッジ。

そして、2人の先を歩き進むのは、長い銀髪を後ろで束ねた女性リー・ライブラ。魔導図書館の館長である。


「・・・で、くだんの魔導書はどこに置いたんだ?」


リーは地下倉庫の扉が並ぶ通路を倉庫番号を確認しながら進む。

魔物を引き寄せる魔導書の事件の翌日、ヨムとリンクの2人は館長であるリー・ライブラに事の顛末を報告した。魔導書の処分についても考えなくてはならないため、リーを魔導書のところに連れていくことになった。

魔導図書館の地下倉庫の本は、通常の魔導書とは扱いが異なる。地下倉庫の魔導書は魔導図書館の管理を担う機関―魔術連盟によって"危険"と判断されたものが格納されている。そして、その危険度はランク分けされており、司書の持つ資格によっては地下倉庫には立ち入りできない区画も存在した。


「第1倉庫にしまってあります。」


リーは、リンクの案内に従い第1倉庫の扉を開ける。倉庫の中は一般に公開しているスペースと同様に整備されており、無数の本棚が並んでいる。リンクは倉庫に入ってすぐ右側に配置された机に向かった。机の上には魔導書の束が置かれている。魔導書の下には魔法陣が書かれたA4サイズほどの紙が置いてある。


「この魔導書のどれかが光を放った後に魔物に襲われたらしいんですが、馬車で走ってる最中でどれが光ったかはわからなかったそうです・・・。」


「ふむ・・。どれも今回納品される予定だった魔導書に間違いないみたいだな。」


リーは魔導書を一冊ずつ手に取り、表紙を確認していく。しかし、表紙や内容には特に異常な部分は見つけられない。ただ、漠然とした違和感だけを感じた。リーはヨムを呼んで魔導書を渡す。


「ヨム。お前はどう思う?今まで読んできた本と比べて何か感じるものはないか?」


ヨムも一冊ずつ確認していく。普段読んでる本と比べても、特に変わらない本ばかりだ。特に異常は感じられない。そう思いながら、最後の一冊を手に取ったときにヨムは違和感を感じ取った。その本のタイトルは「第六天魔王」という伝記のタイトル。ヨムはその魔導書のページをめくる。内容は以前に読んだ他の書籍にある内容とほぼ同じだが、内容が魔王について非常に深く考察されている。


「これ・・、この本、おかしいかも。今までの伝承の本達と違って、書いてある内容が魔王側に依ってて、すごく禍々しい・・・。」


「ふむ・・、しかし内容については魔術連盟によって精査されて正式に認可された内容となっているはずだ。もし人々に危害を及ぼすような危険な魔導書であれば、連盟の認可は通らないだろう。」


ヨムは頁を次々とめくる。そして、ある頁を開いた瞬間に魔導書が光を放った。それは魔法陣の書かれた頁だ。その魔法陣が唐突に赤い光を放つ。本はヨムの手を離れ、禍々しい光の中で浮かんでいた。


「これは一体・・?」


本の周りから発する風に気圧されながら、リーは本を見る。ヨムは最も本に近い場所にいる。リンクはヨムが魔導書に目を通している間に別の棚にいたため、少し離れていた。


―ようやく見つけた。我が片割れの一つ・・・。


「え・・・?」


ヨムの頭に声が響く。それはリーにも、リンクにも聞こえていないようで、二人は何も反応を示していなかった。


本の発する光は閃光のように強くなり、ヨム・リンク・リー全員が目を閉じてしまう。そして、次の瞬間には魔導書は光を失いゴトリと床に落ちてしまった。


「ふむ。この本は一体何だったんだ・・・?」


リーはヨムの横を抜けて本に近づき、それを拾い上げた。先程ヨムが開いた魔法陣の頁を開くと、そこは白紙になっている。


「まずいかもしれないな・・・。」


リーはそういって、魔導書を閉じた。ヨムは、ようやく我に返った様子で、慌ててリーに先程聞こえた声について報告する。


「館長、先程の光の中で声が聞こえたんです。『ようやく見つけた。我が片割れのひとつ。』って。」


ヨムの報告を聞いて、リーはより深刻な表情を浮かべる。


「その話が本当なら、この魔導書は『探知機』なのだろう。この魔導書を通じて"なにか"を探していたんだ。そして、それはここで見つかった。それが何かはわからんが、この魔導書を仕込んだやつは、ここにある"なにか"を狙い襲撃してくるかもしれない。」


リーは急いで地下倉庫を出る。ヨムとリンクには普段の業務に戻るように命じ、自分は魔導図書館にある"なにか"について調べてみるそうだ。


業務に戻ったヨムとリンク。不穏な空気に包まれている図書館に不安を感じずにはいられなかった。

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