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 分かっていた通り、そこからは至って普通のワンサイドゲームだった。

 つかアイツ、魔技使わない方が強いってなんだよ…

 杖を棍として振り回しているだけで手も足も出せない。

 武器の打撃が直撃すれば四割近く、時々混ざる蹴りなんかでも余裕で一割以上持ってかれる。

 しかもあからさまに手加減されてるってのも分かるし…

 コイツ…魔法使いっぽかったけどその正体は武道家かよ…



「にゃはは!流石にひよっ子じゃこれが限界かお~?」



 まぁ、それは置いておいて…

 それで実は…デュエルはまだ続いている。

 制限時間はそろそろ一分を切るって所だ。

 ついでにお互いのHPは満タンに近い状態に戻ってもいる。


 どうして俺のHPが満タンまで回復してるか…って?

 答えは簡単だ、こいつが回復してくるからな。

 俺のHPが一割近くまで減ってるのを確認すると、俺に向かって魔技が飛んでくる。

 まぁ時々失敗するがな、呪いのせいで。


 どうやら、呪いの効果は一定確率でコマンドをキャンセルする事みたいだ。

 魔技だけでなく、武技のキャンセルされるのはこの戦いで地味に役立っている。

 まぁそれもさっきまでだが…

 でそれも効果時間が過ぎたのか、たった今奴の簡易ステータスには呪いの状態異常は消えた。



「ほらほら!もっと攻めてくるの!」



 相変わらず煽ってくるが、その顔は余裕の表情から捕食者のそれに変わっている。

 明らかに(なぶ)る気満々だって分かる。



「プッシュエアロ!…二段突き!」



 ともあれ、こちらは煽られた通り攻めるしかない。

 出来るなら…ここから一矢報いてやりたい。

 そんな心持ちで魔技で足止めしてから武技で攻めていく。



「そんなそよ風も…っとヘボヘボな突きも…」


「だらぁぁぁ!!」


「単調な攻撃も見飽きたにゃ!」


「ガフッ!」



 コマンド間の隙はなるべくコマンドを使わない通常攻撃で埋めていくつもりだったが、どうにも見切られている。

 こちらが攻撃と繋いで行く前にカウンターでケリを入れられて…ガクッとHPが減る。

 つか単調な攻撃って…こっちは始めて間もないんだ!

 攻撃の手札なんてそう何枚もある訳無いだろ!

 短剣コマンドと風魔法コマンドしかないんだぞ!

 って待てよ…?



(残り40秒!)


「そろそろとっておきで沈めてあげるお~ん」



 唐突な閃きと被る様に制限時間のインフォと、マリーのとっておき宣言がなされる。

 全く…とっておき、ねぇ…?

 そういえば俺にもまだ一つだけ使ってない、この場で役に立ちそうなコマンドがあるじゃないか。

 一矢報いるって意味でも最適だし。

 短剣コマンドでも風魔法コマンドでもなく、たった一つ。

 執着の尖骨を装備中に使えるコマンド…[呪い]だ。


 これをどう使うかは…ぶっちゃけ良く分からない。

 とにかく逃げられない様にしながら何かしら組んでみる必要があるだろうな。

 さて、どうする…?



「まぁまぁ?楽しかったから?また遊んでにゃ~」


「ほざけ!お前との縁もここまでだ!」



 まずは…構える、呪い、展開…

 呪いは武器の固有コマンドだから構えてみたが…これでどうだ!!



「カースフィールド!」



「それは釣れにゃい…ってなんにゃ!?」



 何とか無事に発動したか…

 で、カースフィールドの範囲は…俺を中心に周囲10メートル程か?

 そのくらいの範囲の地面から、髑髏を模したモヤが湧き出てき始めた。

 近くで見物していた奴らは軒並み範囲外に逃れたみたいだ。

 …で、これだけか?

 特に奴に状態異常が掛かった様子はない。

 こりゃどういう効果なんだか…



「そっちがとっておきならこっちもいくにゃ!乱打(らんだ)閃華(せんか)!」


(残り30秒!)



 どうやらこっちのとっておきを潰す作戦か?

 まぁあからさまに危険な技に見えるからな、これ。

 更に呪いの効果は切れてるので、遠慮なく武技で真正面から距離を詰めて仕留めにくる。

 こっちの攻撃が大したことないのを良い事に被弾を無視しての特攻だろうな。

 それなら、好都合だ!


 構える、呪い、射出…

 やはり念の為、構えておく。

 外しておいてここで万が一にも失敗(ファンブル)なんてしたら目も当てられないからな。



「カースバレット!」



 で、今度は髑髏を模した魔力弾が相手に向かって飛んでいく。

 おぉ!地味に格好良いな!これ。

 こう、デスメタル感が出てるっていうの?



「こんにゃの!」



 あと、やはりさっきのコマンドは突進系か…

 あぁ…武技の発動中はあまり大きく武技の動きから外れる事は出来ない。

 特に突進系は進行方向さえまともに変えられないからな。

 こうして使いどころを間違えると格好の的だ。

 そういう点ではさっきまでの俺はかなり手加減されてるってのが分かるな。

 突進系ばっか使ってたし。



「痛くも痒くも…」



 なんて言ってるが…変化はすぐに見られた。

 突進の速度が目に見えてガクッと落ちている。

 それに棍を振る速度も目に見えて遅いしな。

 速度(AGI)を減少させる追加効果か?



「お、重い…の!」


(残り20秒!)



 何はともあれこれじゃ折角の速度を活かした連撃も見る影がない。

 それでも防具の都合上、当たれば大ダメージだろうから避けるがな。

 今更だが、初期の防具のみだぜ?



「カースショック!」



 今度のコマンドは構える、呪い、放出だ。

 やっぱ魔技のコマンドは打ち出すのが多い関係上、そう大きく隙を晒さなくていいな。

 相手の連撃コマンドの間にも手軽に打ち込める。

 で、カースショックを使った途端、執着の尖骨の先から怨嗟の念が混じった様なエフェクトの衝撃波が迸った。



「わぶ!」



 やはりモロに当たってもダメージこそ無いようだが、武技がキャンセルされてその場に尻もちを着く。

 ノックバック効果の強い衝撃波か…

 プッシュエアロもそうだが…これ結構優秀だよな。

 …ってノックバックだけじゃないのか?

 マリーの簡易ステータス欄の状態異常には、呪いの隣に…もう一個アイコンが表示されている。

 これはえっと…恐怖状態?



「わ…わあぁ…」



 なんだか良く分からんが…さっきまで猛禽類みたいな目をしていたのに…

 今は恐ろしいモノを見るような目でこちらを見てきてる。



「…ふにゃあぁぁぁ!!」


(残り10秒!)



 あ、逃げた!…逃がすか!

 時間も僅かだし…試せるだけ試してやる!

 再びコマンド枠を出し、入力する。



「呪刻突!」



 構える、呪い、突く、で発動する刺突が背を向けた奴の背中を穿つ。

 突いた箇所に小さな髑髏の刻印が黒く浮かび、ケタケタと笑い始めたと共に紫光を発する。



(残り5…4…)


「痛い痛い!焼ける様に痛いにゃ!」


「カーススパルタン!」



 もうヤケっぱちだ!

 構える事さえせずに入力したコマンドは…呪い、払う、払う。

 紫紺の光を帯びた執着の尖骨を振り回し、対象を二度全力でぶっ叩く。

 ビキリとヒビが入ったような音がするが…知ったことか!



「痛い!熱い!止め!止めてにゃぁあ!」


「うるせぇ!てめぇに皮を剥がされて!」


「にゃ!?」


(時間切れです!戦闘を中止してください!)


「肉を削がれてくたばる気持ちが分かるかあぁぁ!!」



 もう、最後は攻撃するよりも叫んじゃったな。

 時間が切れたってのもあるが…

 心の中の溜まりに溜まった鬱憤が噴火し、そして限りなく溢れ出たような気がする。

 とにかく精一杯の魂の叫びが出来た。

 で、なんか燃え尽きた。



「はぁ…はぁ…」



 全てを出し切ったせいか、立っているのも億劫なレベルの疲労感に襲わて…そのまま仰向けに倒れこむ。

 ついでに耐久力がなくなったのか、手に持っていた執着の尖骨が粉々に砕け散った。

 終始受けには使ってたし、特に最後は無茶したもんな。

 固有コマンドを使ってももしかしたら減ってたのかもしれないし。



(戦闘結果がでました!発表されます!

 プレイヤー・ファルマの減少HP割合:327%

 プレイヤー・マリーの減少HP割合:29%

 判定により勝者はプレイヤー・マリー!)



 やはりと言うか…決闘(デュエル)では勝てなかったか。

 俺の目の前にでっかくYOU LOSE!と表示されている。

 つか喰らいすぎだな…10倍差ってなんだよ…

 まぁ、それでも…



「なんで痛みが引かんにゃいの!痛いにゃ!」



 一矢報いる事が出来たしいいか。


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