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 ジャンル別日間のVRゲームランキングで100位以内に入りました。

 皆々様のブクマに感謝です!

 

 どうやら、転送先が無く…ここはどこかの人外魔境…

 なんて言うご都合的な展開も、不具合も特にないみたいだ。

 一度見た限りのうろ覚えだが…それでも見たような気がする景色が映っている。

 ここがリスポーン拠点、導越の神殿だったかな?

 神を奉る神殿でもあり、ゲームプレイヤー…所謂導かれし者のリスポーン地点になる箇所だ。

 また、一度訪れた事のある町へのポータルともなる便利神殿でもある。



「はぁ…やっと戻ってこれたぁ…」



 前人未到の魔境に放り込まれた挙句、地獄の一丁目を経験してから神様と雑談して来たんだ。

 もう、疲れない訳がない。

 リスポーンしたお陰か、HPは満タンだけどな。

 気もすっかり抜けて、周囲の様子も気に掛けずにどこか気の抜けた声を漏らす。

 これで一心地着いたら、きっとこれまでの溜飲も…



「随分と遅い帰還だにゃ!待ってたんだお~!」



 …下がる訳が無かったな!うん!

 こうして聞くと、人の事を小馬鹿にするような喋り方だ。

 なんて考えながら声に導かれる様に素早く間に合せの武器(執着の尖骨)を抜き放ち、コマンド選択。


 構える、踏み込む、突く…



「天閃!」



 天閃は一気に相手への間合いを詰めてから刺突を繰り出す武技だ。

 ウインドスラストは突きを出しながら飛ぶような動きをするが、天閃は突くのは間合いを詰めてからだ。

 こっちの方が万が一の誤爆が少なくて済む。

 どうやらそれくらいを考える程度に理性は残っていたようだ。

 で、尖骨と短剣との勝手が違いに少し驚いたが、発動したコマンドは寸分違わず奴の心臓を狙う軌道を描く。

 そのまま、刺され!貫け!

 ついでにくたばれ!



「マジックバリア!」



 と強く願ってみたが、流石攻略組と言われるだけあってか俺の奇襲にも反応してみせた。

 青々としたバリアが展開され、俺の刺突は奴に当たることなく阻まれる。



「チッ!」


「乙女にはぁ~…もっと丁寧に~…ス・ル・も・の!だにょ?」



 なんてほざくこの目の前の杖使いは、マリーと言う。

 上はビキニ一枚、下はホットパンツにロングブーツっていう軽装って言葉もびっくりの格好だ。

 どちらかと言うと棍というのが正しい均一な太さの杖と合わせて…エロティックな雰囲気を醸し出している。

 ついでに言うと、キャラクターは人間一択なこのゲームで「~にゃ」だの「だお~」だのと付ける痛い奴でもある。

 この二つが合わさり非常に残念な奴って所に落ち着くな。

 主に頭のネジがぶっ飛んだって意味で…

 で、アバターの上に表示される簡易ステータスではレベル46…

 総合して攻略組でもトップクラスの強さを誇っている変人だ、余計にタチが悪い。


 そんなのとまともに殺りあっても勝てないのは…頭じゃ分かってる。

 だけど…沸騰するような殺意が頭を巡り、体を動かしてもいる。

 だから俺は攻撃を止める事もしないし、あわよくば仕留めてやるつもりだ!

 目に物見せてやる!

 つ~かお前が乙女?痴女だろ笑わせんな!



「一回くたばれ!このMPK!」


「え~聞き分けの無い子はやだぴょん!」



 なんてほざきながら何やらステータスをいじっている。

 くそ…構える、払う、払う…



「二段打ち!」


「わぶ!危ないにゃ!」



 左右からの二連の打撃も彼女には当たらない。

 くそ!うざってぇ!

 で、アイツが何をしてたかと言うと、だ。


(マリーさんから決闘(デュエル)が申し込まれました、受けますか?)


 律儀にも決闘(デュエル)申請なんてしてきやがった!

 答えは勿論YESだ!連打してやる!!

 その後事故に見せかけて仕留めてやる!


 カチカチカチ…


 デュエルは文字通り決闘だ。

 受けるには最低限、現在のHPが最大値の10%以上あればいい。

 で、制限時間5分。

 開始時のお互いの体力の現在値を100%として、時間内にそれが残り10%を切るまでお互いに削り合うだけだ。

 で、時間内の決着時…つまり開始時からHPの10%を切っての決着ではHPは元の値の10%以下にはならない。

 また時間切れ時はお互いに削ったダメージを開始時のHPでの割合換算して削った割合が多い方が勝敗が決まる。

 つまり回復があったら時間切れまで粘れるけど、削られすぎてたら結局負けって事。

 勿論、途中でギブアップもあるが…するつもりもさせるつもりもないぞ?

 ってか向こうもしないだろう。


 カチカチカチカチ…


 で、連打していたからか凄まじい勢いでデュエル開始までの10カウントが減っていく。

 これ、バグか?まぁいいや。

 それ…10、9、8、7、6…

 アイツは態々周囲に演説するように話す為に背中を向けてカウントを見ていない。



「優しいマリーちゃんは…」


 2…構える、突く、1…突く…


「チミの様な駆け出しが…」


(デュエル!スタート!!)


「二段突き!」



 悪いがこっちはお前への殺意に満ち溢れているんだ!

 コマンドの先行入力で開始の合図と共に武技を放つ。

 使ったコマンドは二段突き、名前の通り素早く二回突きを繰り出す武技だ。



「悪の道に落ちゃあぁぁぁ!」



 向こうはデュエルまでの時間を完全に測り損ねていたし、完全に不意を突く形となった。

 的確に背後から首と心臓部を刺し抜いてやった。

 どちらも大抵の生物に設定されている弱点(ウィークポイント)でそこへの攻撃はダメージの増加やクリティカル判定、その追加効果判定が上がったりする。

 だが…それでも…



「にゃぁぁ!いったぁぁい!!」



 流石に攻略組トップクラスと言うべきか…こちらの火力不足を嘆くべきか…

 二回ともクリティカルで、ダメージの増加まで乗ったのに…減ったHPは5%以下でしかない。

 確かにこれなら痛いで済むレベルだろうよ。

 一々…ふざけやがって!



「しかも呪いって!何があるんだお!?」



 だけど正体不明の呪いが向こうに掛かったみたいだ。

 一度も効果を確認してなかったから正体不明なんだがな。

 奴の簡易ステータスの欄に呪いのアイコンと、その右下に1という数字が小さく浮かぶ。

 本当、良く分からんな。

 いい効果だと期待はしてるが…とにかく!



「だらあぁぁ!」



 コマンドはギリギリ間に合いそうも無かったので、普通に両手で執着の尖骨を握り殴りかかる。



「何をそんなに怒ってるんだにゃ!」


「てめぇの胸に聞けや!」


「私の豊満なおっぱいに何を聞くんだお?お?」



 殴りかかった一撃は片手で持った杖で防がれた。

 そのまま骨と杖で鍔迫り合いをしながら、もう片手で胸をボインボイン揺らしている。

 明らかに言葉でも行動でも人を挑発してるってのが分かるが…

 乗ってやるよ!その挑発!



「てめぇが初心者用の迷宮だって騙して魔窟に放り込んで!」


「だにゃあ!」


「…っく!」



 流石に46レベルともなればSTRにも結構振っているのだろう。

 そもそもこっちの両手持ち対片手持ちで互角だったんだ。

 普通に両手で杖を握っただけで鍔迫り合いで押し負けた。

 まぁそのまま押し倒されるのを防ぐべく一旦距離を取り、コマンドを組んで…



「天閃!…骸骨モンス擦り付けて一人で逃げたって事をよぉ!」



「マジックバリア!」



 どうせ防がれると思っていたが、予想とは大きく外れた。

 本来向こうが発動させるはずのマジックバリアが発動しなかったからな。



「な!失敗(ファンブル)!?」


「だ…らぁ!」



 本来発動するはずのそれが発動せずに意表を突かれたのか棒立ちのままだ。

 そのまま発動した天閃で詰め寄り、腹に刺突を一撃見舞う。



「ぎにゃふぅ!」



 今度は弱点(ウィークポイント)が狙えなかったからかクリティカルではなく、更にダメージもHPバーが減ったかさえ分からないっていう悲惨な一撃だ。

 おまけにマリーも息を吐き出したくらいで堪えた様子はない。

 それにまた呪いが掛かるって事も無い…

 更に、更に…だ。



「もう…もう怒ったにゃ!」



 腹に一撃入ったはずなのに怯むどころか狂戦士の如く杖で前方を薙ぐ。

 身をよじってかわそうとしたが…ギリギリの所で杖が肩口がかする。

 くそ!滅茶苦茶痛てぇし!

 おまけに人の苦労を嘲笑う様に、それだけで俺のHPバーを一割程吹き飛ばす。



「マリーちゃんがチミに正義の一撃を浴びせ倒してやるにゃ!」



 俺があれだけやって一割も削れてないのに、向こうは武器を掠らせるだけで一割も持っていく。

 そんなのが今度は杖を構えて、仕掛けてくる姿勢を見せている。

 もう勝率は万に一つもないだろうよ。

 だけどそれは元々分かっていた事だし…

 勝てないなら、精一杯やれる事をやるだけだ!


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