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やばい…!
何がやばいかって!?
罠が…見つからない事さ!
かれこれ五分くらい逃げ続けてるが…見つからないどころか罠を踏むことすら無いぞ!
罠の一つや二つ…すぐに見つかると思っていた俺が甘かったのか!?
「「「「「「ケタケタケタケタ!!!!!」」」」」」
そして絶賛トレイン中だ!
後方からは、もはや骨の壁と化した死霊軍団が迫ってくる。
あれは全部アークスカル・ノービスだろうか?
だからなんだっていう話になるんだが…
「プッシュエアロ!」
なんて考えながら、魔技を発動させて僅かにでも足を止めようと画策する。
これで最前列の骨は足止めできるが、津波の様に押し寄せてくる骨軍団の後続が押し寄せてくるので効果はあまり無い。
無いよりましってくらいだな。
そして次のクールタイム終了まで、またひたすら逃げるだけだ。
一応、このゲームのコマンドには次のコマンドに対するクールタイムがある。
それも、二つだ。
次のコマンドが選択出来るまでの共通クールタイムと、同一の名前の武技、魔技がコマンド出来る様になるまでのアーツクールタイムだ。
共通クールタイムはコマンドで使用した枠数×約0.5秒だけ、次のコマンド枠を呼び出してコマンドを選択することが出来なくなる。
先行して入力も出来ないので、実質もう少し間が開くと思っていい。
で、アーツクールタイムは武技や魔技毎に大きく差があり、同一の名前でも基本的に多くコマンド枠を使えばクールタイムが伸びる。
例えば風魔法と放出で作るプッシュエアロよりも、集中を混ぜたプッシュエアロの方がクールタイムが長いし…
で、アーツクールタイムが終わってないのにコマンド入力をして武技や魔技を使用しようとするとどうなるか?
答えは…そのコマンドは失敗する。
更に言うと、共通クールタイムはそれでも発生するので、間違って使うだけ損をするって訳だ。
で…何でこんな事を考えてたんだっけ?
そうそう、今使ってるプッシュエアロのアーツクールタイムは12秒だって言うためだ。
つまり12秒に一度、俺はこの魔技を使って逃げおおせているわけだ。
プッシュエアロ様々だな。
なんでこんな手をさっき逃げてる時に思いつかなかったんだろうな?
まぁ…初心者が魔物からガン逃げする為の方法なんて考えないってのが答えだろうよ。
それで話は戻すが、プッシュエアロは一々後ろは振り向かずに適当に放っている。
つか後ろに振り返るだけ無駄だ。
後ろに使えば大抵当たるんだから。
しかもそれでなんだかくたばってるっぽいし。
転んだ骨はどうやら後続に踏み潰されてるらしいな。
それ以外に考えられないし…
(アークスカル・ノービスの戦闘不能に伴いダメージ蓄積した分の経験値を獲得しました!)
(コマンド使用により、風魔法のレベルが上昇しました!)
流石に格上でも、転ばせたり怯ませる程度の経験値が何度も入った所でキャラのレベルは上がらないか…
3レベルから4レベルに上がったあの時はかなり貯蓄があったからな。
反対にアビリティの方は格上相手ならメキメキ上昇していくんだな。
風魔法のレベルアップインフォは何度か見ている。
これはこの追いかけっこが終わった時が楽しみだ。
…な~んて考えたのは見事にフラグだったらしい。
「…!行き止まりか!?」
視界の先では唐突に、迷宮からの死刑宣告がなされた。
この通路の先は曲がり角でも、丁字路でもなかった。
壁は行き止まり、無情にも紫色の炎の松明が取り付けてあるだけだ。
いや、それ以外にも…何か…
「!?クソ!プッシュエアロ!」
悪態を吐きながら、恐らくこれで打ち止めになるであろうプッシュエアロで、後ろの骨共を吹き飛ばす。
何で打ち止めになるかって?
それは別のコマンドを組むからだ。
目の前の行き止まりは…只の行き止まりじゃなかった。
それっぽい宝箱が一つある行き止まりだ。
そして、宝箱と言ったら…トラップやら鍵がつきものだろ?
その宝箱にもこれ見よがしに錠なんてついてるし。
全く、最初のダンジョンにあるまじき…ってここは違うか。
場所に見合った、錠持ちの宝箱だ。
で、共通クールタイムが過ぎたのを確認してコマンド枠を出せるようになったら、すぐにコマンドを組み始める。
集中、集中、開錠…
まだ一度もこのコマンドは試した事は無い。
ぶっつけ本番になるが…成功してくれよ!
「アンロック!」
どうやらこの組み合わせで「アンロック」が発動するみたいだ。
コマンドの発動に合わせて利き腕設定していた右腕が青白く光る。
ついでに視界端で『開錠対象に直接触れて下さい!』とテロップが出ている。
それを確認したら迷わず、駆け寄った宝箱の錠に触れる。
そして…一秒…二秒…三…びょ…
ガチャ!
反射神経のテストがあったなら、かつてない高スコアを叩き出せそうな程の速度で外れた錠を投げ捨て、箱を開けた。
感動も何もあったもんじゃない。
俺の速度は感動を置き去りにするんだ。
…で、碌に中身の確認なんかしない。
そんなの後でいい。
今はあるもの全てアイテムボックスに放り込むだけだ。
なのだが…入っているのは一個だけか…
…シケてやがんな!?おい!
「ガッ…!」
で、そうこうしている内に背後から衝撃が襲いかかる。
そのまま、引き倒される様にして地面に叩きつけられ…骨っ子の軍団と顔合わせ…
どいつもこいつも痩せちゃって、まぁ…
…骨だからなぁ。
「「「ケタケタケタケタケタケタケタケタ!!!」」」
どこか喜んでいるような…恐怖心を煽っている様な…良く分からないが歯を打ち合わせる行為を、骨軍団の各員が行っている。
それ、流行ってんの?
なんて引き倒されて仰向けに取り押さえられたまま考えていた俺の前に一体のスケルトンが立つ。
手には一本の、凶悪な見た目のダガーが握られている。
こう…皮膚をガリガリと剥げて、肉をゴリゴリと削ってきそうな見た目だ。
それで人の頬をペチペチと叩き、やはりケタケタと歯を打ち合わせる。
…どうやら俺も同類にさせられるようだな。
ここは何か遺言でも残しておくべきか…?
「優しく…してね…?」
いや、違うな…
確かにそんなセリフを言うべき状況かもしれないけど…
多分性別が、違う。
ってかこんな遺言嫌だ。
ザクッ…
「痛ってえぇぇぇ!!」
ザクッ…ザクッ…
「あ…がぁ…」
ザクッ…ザクッ…ザシュッ…
「ガアァァァ!!」
「「「ケタケタケタケタケタ!!!」」」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
で…結局訂正する機会も、俺の遺言が聞き届けられる事もなくHPバーが無くなりくたばりましたとさ。
今日の更新はここまで。
早速ブクマしてくれた方々がいらっしゃって嬉しい限りです。
是非とも感想やブクマ、評価等して頂けたら幸いです。