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さてそれからは適当に退散し、自宅に帰還。
防具選びで一気に心に疲労が溜まった様な気がするが、このままログアウトって訳にもいかない。
既に日課じみている野菜の世話と取引が残ってるからな。
「ファルマ、何かやつれてません?」
「あぁ、そりゃあとてもとても…」
せっせと畑で作業中にしていたら…いつの間にかリコリス、来てたんだな。
とても心配そうに声を掛けられた。
ってか声を掛けられるまで気が付かないとは…
流石に集中力が切れてきたか。
ゲームのやりすぎだな。
「取り敢えず収穫した物は籠に詰めてあるから」
「了解です」
いつも通り籠一杯のチーユ草を引き取って貰って代金と草から生成した種を貰う。
お金だけはわざわざ稼ぎに行かなくてもこうして手に入るんだよな。
経験値もこんな感じで稼げたらなぁ…
「はぁ…」
「…何か不満でも?」
「こうしてお金みたいに経験値も貰えたらなぁって思って」
「何を言ってるんですか、全く」
自分でも思うが、バカバカしい話だよな。
でもそう思う程には現状あのブートキャンプ、キツかったりするし…
せめてレベルを20台に乗せないと、防具の恩恵あっても変わらないんじゃなかろうか?
「ギルドで依頼を受ければいいでしょ、それなら」
「へ…?」
なんでギルド…?
ってか解決手段があったんだ…
てっきり何を馬鹿な事を…って意味だと思ったじゃん。
「もしかしてファルマ、チュートリアル…」
「どうだったかな…?」
呆れた様な、可哀想な…そんな物を見る目で見られるのは非常に心外だ。
少し記憶から今までの行動してきた事を順に思い出す。
確か…マリーにMPKされるまでは…一通りチュートリアルを終わらせたんだっけか?
で…チュートリアルじゃない、別のダンジョンに潜ろうとギルドで募集を掛けてた最中だった様な…?
そういえばその時に依頼掲示板。一瞬だけ見たような…
まぁ言い換えて、一瞬しか見る機会が無かったとも言えるな。
「よし、ギルドに行こう」
「えっ…今からですか?」
「当たり前だろ?」
そう言いながらテキパキと作業着から、初心者用の装備に着替える。
わざわざフォレストクイーンアーマーは着ない。
ってか着てたら色々とバレそうだし…偽装も兼ねてこっちにする。
「…わざわざ装備を変えても、レベル見せっぱなしだと意味ないでしょ」
「非公開可能なのか?」
「看破される事もありますけどね」
「ふ~ん…」
それはどこかで聞いた様な気がするな。
まぁ取り敢えず、リコリスからやり方を聞いて試してみる事にした。
看破可能ではあるみたいだけど、まぁ問題ないだろう。
きっと10と16って見間違えやすいし。
「それにそもそも、隠居中ってのはどうするんですか?」
「あぁ、そろそろほとぼりが冷める頃かと思ってな」
もう既に、結構出歩いてる事は黙っておこう。
特に森の件は。
「まだそこまで経ってないと思うけど…?」
「じゃあ焦れたからだな」
「ひっどい本音を聞きましたよ!今!」
まぁ、本音だしな。
大概裏で思ってる事なんてそんなもんだろ。
「で、どうする?」
「どうする?…って確かに家主の居ない家にお邪魔している訳にもいかないですよね」
「いや、誰かと一緒に居ると誤魔化しとか利くかなって思って」
「ちょっと!?」
「いや、ホントの事だろ?」
一人でノコノコとギルドに行くよりは遥かに厄介事も少ないしな。
一見全く無関係に出会って、偶々案内を買って出たって事にしておけばこれまでのチーユ草関連でも疑われる事は無いだろ。
とか何とか簡単に説明する。
「そんなに上手くいきますかね?」
「どうせここでどうしようが時間の問題だろ」
その時はいずれバレる事がバレたってだけで。
「それより、どうするんだ?」
「分かりましたよ!付いていきますよ!」
なんでかやけっぱちな雰囲気だが、とにかく了承は貰えた。
と言う訳で、ささっとギルドへ向かった。




