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そんな出来事から、時は少し進んで…
「さて、次はここだ」
「分かった」
エルフ達が再生可能な採取地に案内する。
そこで俺が魔法を使い、更に骨粉を撒く。
現在…何箇所目だっけかな?
結構移動が多いせいで覚える気になれない。
それに、だ。
「フォレストワスプ来ます!数は9!」
こうして一々魔物の登場があるからな!
そんな些事に気を回すのも面倒って訳だ!
「やれるか?ファルマ!」
「問題ない、全て貰うぞ!」
「分かった!」
で、確認もそこそこにワスプの群れに一人で突っ込んでいく。
理由は勿論、最大限得られるだけの経験値を貰う為だ!
「パワーアシスト!」
「スピードアシスト!」
「マジックアシスト!」
アルベルト率いるエルフの集団から援護を貰い、更に距離を詰めていく。
なんだか視界の端にSTR20%アップとか、MAG30%アップとか不穏なインフォが流れているが…もう慣れた。
気にしたら負けな気もするし。
「落ちろ!プッシュエアロ!」
それから安定の、プッシュエアロ。
勢いに負けて地面スレスレまで落ちてきた所に、俺の手に握られているショベルが一閃。
描く軌道が一匹、二匹と確実に蜂を捉えながら駆けていく。
そして…数拍の間を置いて蜂は分解されるように消えていった。
「次、来ます!クロウベアが五体!」
しかし、悲しいかな。
今回は雑魚との一戦が終わった程度では休む暇が貰えないみたいだ。
つかクローベアってなんだよ…
初見の魔物じゃないか。
「いけそうか?ファルマ!」
「一匹くれ!取り敢えず戦ってみる!」
「…分かった!」
エルフ軍団は四匹のクロウベアを前に、十二人で立ち向かう様だ。
一匹に対して三人で立ち向かう計算になる。
先程の蜂九匹程度なら一人で余裕なエルフ達が、だ。
…もしかして?
これ、結構強い奴か?
『グルガァァァ!』
とか考えてたらさっそく取り残された一匹がこっちに向かってきた。
それから間合いを計り、腕を振り上げる。
勢いを乗せた爪の一撃…か?
クロウの名に恥じない立派な爪をお持ちである。
まぁ、避けるけどさ。
ついでにカウンターでクマの腕を裂きながら駆け抜けて、反転。
向き直ると地面に爪を埋めて、裂かれた腕の痛みを堪えるクロウベアの姿が…
って、な~んで地面が抉れるんだ?
全く…やってられないな!
ぶっちゃけ…協力してくれと言う裏で我ながら無茶な要求をしているなぁ…とは思っていた。
それに俺もこのまま採取に不都合が出るのは不本意だ。
だけど対価の無い仕事はする気にはなれないし…
かと言ってべらぼうに強い武器を寄越せだの、珍しい魔法を教えろだのというのは受け入れられないだろう。
先ほどの魔法の様の例があるからな。
と言う訳で、あの要求に落ち着いた訳だ。
別にこの要求を向こうが呑まなくてもいい。
本命は強くなることでも、このエルフ共を守る事でもないし。
というか断られるとばかり思っていたのだが…
「それは一体、貴様はどれだけの強さを得れば良いのだ?」
「…へ?」
「具体的には…レベルだったか?それはいくら必要なのだ?」
まさか割と前向きに受け入れられるとは思っていなかった。
それも思いっきり敵意を持たれていた、アルベルトの姉に。
なんとなくさっきまでと違った雰囲気を纏いながら…
…ってかなんか呼びにくいな。
これからは姉ベルトと呼ぶ事にしよう。
勿論心の中で、だ。
その姉ベルトがいきなりレベルなんて言いだしたのだ。
何と言うかここに来てメタい。
ちょっと戸惑うのもしょうがないと思うんだ。
「…取り敢えず、40は超えるレベルが必要だって話だ」
「そうか…」
そして少し驚いた様な、ちょっと意外だと言わんばかりの表情を顔に貼りつけた後…
「それなら、存外早く達成できそうだな」
まるで肉食獣。
そう思わせる様な笑みを浮かべながらそう言い放ったのだ。
(経験値獲得により、キャラのレベルが上昇しました!)
(コマンド使用により、短剣のレベルが上昇しました!)
(コマンド使用により、風魔法のレベルが上昇しました!)
(コマンド使用により、土魔法のレベルが上昇しました!)
(コマンド使用により、呪術のレベルが上昇しました!)
「はぁ…はぁ…」
とにかく、身体がダルイ。
しかもそれだけじゃない。
戦いが終わるまで極限に集中する事を強いられた頭も、休ませろとその働きを鈍くしている。
結果、呼吸をするのでさえ意識的にやっていると錯覚するような疲労をこの身に感じているのだ。
それに…戦闘中の出来事だぞ、あれ。
ちょっと前の出来事が走馬灯の様に頭を流れていたのは…
人間、極限まで集中するとああいう事が起こるのだろうか?
ってか本当に…なりふり構っている状況じゃなかった!
周囲の森への悪影響を考えて使わないようにしていた呪術でさえ引っ張り出しての、ギリギリの勝利だった。
本当に、なんだよ!あのクマ!?
爪に当たったらダメ、蹴られてもダメ、噛まれても勿論ダメ!
ついでに毛皮に擦れると小さくないダメージが入るのだ!
おまけにこっちの与えられるダメージなんて高が知れている。
おおよそ人が一人で相手にする生き物じゃあないな!
「大丈夫か?」
「なんとか、な」
心配して声を掛けてきたアルベルトは別段疲労した様子はない。
ってかエルフ組は余裕をもってクロウベア四匹の討伐をやってたな。
全く、羨ましい限りだ。
「で、どうかした…のか?」
「…いや、何でもない」
…で、心配とは別に何か言いたげな様子である。
他のエルフ達も同様だ。
心配というか、呆れというか、驚きというか…?
取り敢えず…よく分からん!
まぁ…でも確かにこれじゃあ前途多難ではあるか。
恐らくこのクマだって森の奥に行けばわんさか出てくるだろうし。
「次はもうちょい楽に戦えるだろうから、安心してくれ」
「えっ、あぁそうだな!」
呼吸も整ってきたので、そろそろ起き上がる。
まだまだ森の中を探索しなければ行けないしな。
それで、取り敢えず結論を言うと…だ。
彼らにしてみれば40レベルとは『え?たったの40レベル?』であった訳である。
俺たちからしてみれば、トップクラスでもロクに到達していない段階なのにな!
現に姉ベルトのレベルは既に70近いらしい…
まぁエルフは殆どMAGやらDEXに振るらしいがな。
そのせいか姉ベルト曰く、接近戦は思いのほか苦手らしい。
少なくとも関節を極めているのを力技で外す奴らが苦手って言ってもなぁ…
説得力とは一体…
何はともあれ…俺みたいな低レベルの雑魚でも、奇襲で接近戦に持ち込めたなら勝てる確率があるって訳だ。
それに加えて今回は姉ベルトの油断もあった訳だが。
だって普通に魔法を使われていたら一撃でお陀仏だろうし。
「さて次は…あっちだ」
「キビキビ行くぞ、人間!」
「あぁ…分かってるよ」
と言う訳でエルフ監修の元、西の大森林再生兼レベリングツアーが催されている訳だ。
それを提案した俺の心は、埋め尽くさんばかりの後悔と一欠片のやる気で満たされている訳だが…
全く、ちょっとピピッドの実が欲しかっただけなのにな…
一度無茶な要求を突っぱねられて、妥協した様に本来の案を呑ませる。
そうやってエルフとの交流手段を手に入れようとしていたんだがな…
とんでもない事になったもんだ。
果たして俺の身は持つのだろうか?




