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 さて、姿を隠しながら約一時間…とその半分。

 昨日より時間がかかったのはMP回復の為だ。

 道中で気になった採取ポイントに試してみたのはいいんだが…

 プロテクション・エリアは消耗がデカいからな。

 戦闘の事も考えると、一々休憩を取らざるおえなかったって訳だ。

 ちなみに戦闘は一度も無かった。

 ここまでは、な?



 ブウゥゥゥン!


「おっと!…天閃!」



 飛んできた一匹に、カウンターでコマンドを撃ち込む。

 そして、ザックリと抉るような傷を作り消滅した。



「よし!次!」



 森に入ると、待っていましたとばかりに蜂の群れが襲い掛かって来た。

 まぁ、フォレストワスプだな。

 数はさっきのも含めて5、昨日より多い…

 おまけに昨日よりも強めの奴なのか、どうにも連携しようと動き始めた。

 全く、厄介な!



「落ちろ!プッシュエアロ!」



 下向きに押し込む風を蜂共の頭上から落とす。

 空を飛んでいる相手だし、基本は迎撃するしか方法が無い。

 だけど数が多いと連携して攻めてくるから、迎撃の隙もそうそう出来ない。

 …つまる所、面倒なのでこれで対処してみたって事だ。

 地面に落ちることはなかったが、バランスを崩したのか隙だらけだ。

 と言う訳でコマンド枠を出して、っと…


 構える、溜める、踏み込む、縦切り…



「パワーバッシュ!」



 力強い踏み込みからの、威力を乗せた一撃が蜂を切り裂く。

 割と隙はデカイが、当たると威力が大きいコマンドだ。

 まぁこれ以上火力が出てもオーバーキルだけど。

 さて、もう一撃!



「パワーバッシュ!」



 最近は魔法中心で短剣の出番が少ないからな。

 ここいらで短剣に出番が有っても良いかと思ってな。

 それに一々魔法を使っていたらMPが持たんし。

 たまには血湧き肉躍る戦いってのもいいと思う。

 …と言う訳で最低限の魔法だけで、こうして意識して短剣を使っている。



「スローイング!」



 立て直される前に石のククリナイフで一撃。

 少し狙いが逸れて羽を抉っただけだが…それでも十分だ。

 HPバーが減少しているしな。

 コマンド無しでも十分に仕留められる域だ。

 と言う訳で距離を詰めて、シャベルで一閃。

 さて、残り一体…



「どこ…って痛ってぇ!」



 最後に残った一匹に狙いをつけようとした所で、右腕に痛みが走る。

 見れば前腕に太い針と…蜂だ。

 この野郎!背後じゃなくて横からかよ!

 いい度胸してるじゃねぇの!

 どうせこのまま噛み付くとかしてくるんだろ!



「クソッ!」



 左腕で翅を掴み、針を引き抜くがてら捕獲する。

 で、そのまま刺されない様に、噛まれない様に振りかぶって…



「必殺!トンボ殺し!」



 思いっきり地面に叩きつける。

 コマンドも何もあったものじゃない、純粋な物理攻撃だ。

 できるだけ真下に、勢いを逃がさない様にしながら叩き落とす。


 ちなみに命名は適当だ。

 なんか子供って秋に、トンボを地面に叩きつけて殺してるじゃん?

 なんとなくそれが思い浮かんだだけだ。

 それをゲーム内で、蜂相手にやった訳。

 …デカイ蜂だけどな!



「よし、これで…殲滅完了!」



 すぐさま腹を掻っ切り、消滅させる。

 トンボは殺せるが蜂が殺せるとは言ってないしな。

 しっかり止めまでこなさないと。



「アースヒール!」



 HPもアースヒール一度で全快出来る範囲だ。

 それでもMPは殆ど消費無しで済んでいるので、十分な戦果だろう。

 対処を覚えればこんな物か。

 昨日は少し刺されまくったしなぁ…



「で、採取ポイントは…」



 気を取り直して、昨日なんやかんやしていたあの採取ポイントに向かう。

 ピピッドの実があの場所だ。

 一応周りに魔物が潜んでいないか注意しながら進んでいく。

 いたら殲滅するだけなんだが…



「案外呆気なく着いたな…」



 もう一戦を期待する間もなく、到着。

 森の浅いところだし、しょうがないっちゃあしょうがないんだけどさ。



「う~ん…やっぱり品質は悪いか…?」



 ぱっと見、何の変化もない。

 それはつまり品質に変化も無いって事だろう。

 品質で見た目に大きく変化があるのはわかってるしな、チーユ草で。



「よし、プロテクション・エリア…!」



 と言う訳で早速コマンドを展開する。

 範囲は…ギリギリ朽ちた木の洞全域を指定出来た。

 よし!後は…



 …ガサリ!



「貴様!動くな!」


「…へぁ!?」



 洞の肥料になりそうな骨粉を撒こうとしたら、突如目の前に謎のマントで顔を隠した奴が弓を構えて草薮から飛び出してきた…

 ってか微妙に声が高いな…

 顔が見えないから分からないが…恐らく女か?

 いや、顔を見ても分からないか。


 つーか何だ?全く…

 いきなり出てきて動くなって。

 …PK(殺っていい)か?



「貴様らの森に対する悪行もここまでだ!」


 ガサガサガサ…!



 この一言で、更に謎のフード達が増えた。

 気が付けば結構な数の集団に囲まれてしまった。

 生憎と首は動かせなさそうなので、正確な数は確認出来ないが…



「腕を上げろ!妙な真似はするなよ!」


「あいよ~」



 取り敢えず言われるまま手を上げておく。

 従う理由は無いが…未知数の相手に一人でやり合うのは分が悪そうだし。



「で、アンタ達は誰?」


「貴様!動くなと言っている!」


「いや、動いてないし…」



 俺は喋るなとは言われてないぞ?

 正確には口を動かしているけどさ…

 ま、それを言われるまでは黙る気は無い。

 それを言われたら黙るがな。



「動くなってのは良いけど…せめて理由は教えてくれよ?」


「貴様らが森を荒らしているからだ!」


「俺は何もやましい事はしてないぞ?」



 きちんとアフターケアまで欠かさない、立派な農家の一人だと自負してるんだが?

 もし何かあっても『俺は悪くねぇ!』と声高に言える自信がある。



「嘘だ!貴様がそこの枯れ木に何をしようとしていたか見ていたぞ!」


「お前の目は節穴かよ…」


「なんだと!?」



 ちょっと煽っただけでこれだ。

 さっきから問答している女?の沸点は低いようだ。

 これは…もしや?

 …上手く行けば逃げられるか?



「お前の目には何も見えてないって言ってるんだよ」


「き…きさまァァ!」


 …ヒュン!



 威嚇代わりか、わざと頬を掠る様に矢を放ってきた。

 よし、好都合だ。

 次の矢を番えるまでには僅かだが時間がかかるはず…!



「プッシュエアロ!」



 向こうの取り囲んでいるだけの奴も油断していたのだろう。

 いや、警戒していなかったと言うべきか?

 こちらが武器も構えずに、言われるがままに手を上げてただ立ってるだけだったしな。

 まぁ他の奴らはそこまで好戦的ではないだけかもしれないが…



「甘…なっ…!?」



 プッシュエアロで指定した方向は、茂みからこちら側…

 女?は吹き飛ばされると思って身構えたせいもあって、思いっきり吹き飛んできた。

 俺も奴がいた方に駆け出していく。

 そしてこのまま…隙間を縫って…



「だがやはり甘い!」



 しかしこちらの思惑通りにはいかないみたいだ…

 弓を即座に捨てて懐から短剣を取り出してきた。



「くらえ!高速突き!」



 そしてそのまま勢いを乗せての刺突…

 しかも単発の武技コマンドじゃねぇか!

 刺さったらヤバイ奴だ、これ。



「クソ!」



 もうこうなったらヤケだ!

 甘いのはどっちか思い知らせてやる!

 幸いにも単発コマンドは動きも単調だし、いけるか…?

 こちらも武器を抜いて…コマンド枠を出す。


 構える、集中、溜める、払う、受ける…


「パリィ!」



 発動したコマンドはパリィ。

 弾き防御といった方が良いか?

 どこかの重装歩兵が得意そうな奴だ。

 で、今回はそれに基本コマンド重ねがけの強力な奴だ。

 狙いは奴の持っている短剣。

 最悪腕でもいいがな…

 高速で突っ込んで刺突をかまそうとして来る奴に、狙いを定めて…



「でりゃあ!」



 かなり神経を尖らせたが、その甲斐あってか寸分の狂い無く刃と刃が擦れ合い…弾かれる。

 奴の持っていた短剣が、な?

 …まさかリーチの短い得物同士でこんな事が起こるなんてな。

 向こうはきっとフードの下で面白い顔をしてるんだろう。

 まぁそれはいい。

 そのまま勢いで突っ込んで来る隙だらけの奴の後ろを取り、足を掛けて転ばせる。

 ついでに上から押さえ込んで拘束、首筋にシャベル(短剣)の刃を当てる。



「おっと、動くなよ?」



 今取り押さえてる奴にも、周りにいる奴どちらにも告げる様に言う。

 このまま弓でも放てば俺は倒せるけど、こいつは道連れだ。

 死なば諸共って奴だ。



「そっちが先に攻撃してきたんだ、文句は無いだろ?」


「くっ…!殺せ!」


「そうしたら人質の意味が無いだろ」



 つーかそのセリフはいかんでしょ。

 まるで俺が変態みたいじゃないか!

 って待てよ…?

 これはもしや…?



「ちょっとお顔を拝見…」



 可能性は十分にあるだろう。 

 いや、こいつがそうだとしても別にどうするって訳でもないけどさ。

 と言う訳でフードに手をかける。

 つーかみたい所は顔じゃなくてだな…

 まぁうつ伏せだからそもそも見れないけど…



「貴様!やめろ!」


「嫌だよ…っと」



 それで、フードをめくって出てきたのは…

 やはりというか金髪。

 そして、人のそれよりもかなり長い耳。

 キャラメイクで耳の形はある程度弄れるが、長さについてはほぼ弄る事は出来ない。

 人の形を超えない調整から、ひょっとしたら居るのでは?と囁かれていた種族だ。



「おぉ、エルフ」



 そう、エルフだ。

 俺が戦っていたのは金髪の見た目麗しい種族と名高いエルフ様だったようだ。

 まぁ…こいつの顔が良いのかは知らんがな!


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