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さて、そんなこんなで収穫したチーユ草の総数はおよそ600程にのぼった。
二籠にぎっちりと詰まったチーユ草が、とても輝かしくみえる。
「ありがとうございます!これだけあれば…」
「良いポーションを売りさばけるってか?」
「えぇ!二、三日はこれでやっていけます!」
十分多すぎる量だとしか言えないだろうと思っていたんだが…
しかしこれでも二、三日程度か…
まぁ消耗品だし、単純に600って物凄く多い量では無いか。
「それと、これは報酬って事で…」
という訳で手渡されたのは36000ミルス…
あれ?一つ辺り40ミルスじゃないのか…?
合計24000ミルスの筈だが…どう見ても36000ミルスだ。
「少し多くないか?」
「いや~流石にこれだけの仕事であの報酬だと…ねぇ?」
「あぁ、成る程」
何を納得したかって?
そりゃあ最初に提示した価格は市場の半分って話だ。
これだけの結果を出して、では言った通りに…ではどうなるだろうな?って話。
人間、得な方へと流れるって事さ。
「一応、市場の半額とは言ってもNPCへの売却額よりは多いので良いかと思ってたんですけど…気が変わりました。」
「そうか…」
俺としては報酬が増えることには文句はない。
今なら金庫もあるし、安全面で問題はないしな。
「それで、次の仕事についてだが…」
取り敢えず、今回支給された種は全て使い切ってるしな。
明日も収穫するには、まず種を貰わないと。
種が無いと何も出来ないのが辛い所だよな、農家って。
…もう農家と言うよりハーブ栽培家でもいい気はするけど。
コロコロ転職するな、俺。
「あぁ、ちょっと待って下さい!」
で、彼女はそれだけ告げるとまず適当にごそっとチーユ草を風呂敷の上に広げた。
それから視線をキョロキョロと回して…コマンド入力か?
他人から見てるとこう見えるんだな。
「ダウングレード!」
彼女がそう宣言すると目の前にあったチーユ草が霞のように消え去り、凄まじい量の種が目の前に出現した。
「次はこれだけの量をお願いします!」
「あぁ、分かった」
そうして先程の種を全て渡されたのだが…
インベントリの総数では450となっている。
今日収穫した量よりは若干少ないが、これでも結構な量だ。
「さて、これで今日は一旦お暇といきたい所なんですが…」
「まだ何かあるのか?」
「えぇ、実は凄く大事な事がありまして…」
なんだろうな一体。
ひどく困った様な顔をしてるけど…
これから調合作業するのに人手が足りないとか?
いや、あれか…?
「…金は貸さんぞ?」
前もってそれだけは言っておこう。
まぁ、まさか取引をして支払った金を即座に返してって言うのは無いだろう。
そんなバカ丸出しの行動をする訳…
それなら奮発せずに先の取引通りに金を払って、後で渡せばいいんだし。
「あぁお金じゃなくて!調合するのに場所を貸して欲しいんですよ!
あの広いキッチンなら一気に調合が出来そうだなって!」
「あぁ、そう言う…」
無駄に広いもんな、ウチの台所。
五人くらいは余裕で並べたりする。
それに言っちゃああれだが、無駄にでかい竈まであるし。
まぁ竈に見合う大釜は無いがな。
つか料理で使う様な場所で調合…ねぇ?
なんだかこのゲームの生産って酷く曖昧な気がしてくるな。




