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「すいませ~ん、誰かいませんか~?」
「あぁはいはい、入ってま~す…っと」
取り敢えず要件だけ聞いてお引取り願おうかな。
そんな事を考えながら玄関のドアを半開きで開ける。
真正面に立つ相手を全身くまなく観察できる上に、こちらが見られるのは顔半分だけという超絶テク。
必殺、日本人風ドアガードだ。
扉に引っ掛けるあのチェーンでもあれば完璧なんだけどな。
まぁそりゃいい。
「あ、お取り込み中でしたか…?」
「たった今、手が開いた所ですけど?」
見ればちょっと可愛らしい感じの服装の…女の子でした。
服装はヘッドドレス風カチューシャと若草色のドレス。
それに白色のエプロンでいかにも生産系って感じの服装だ。
下手にフリフリがついてない実用的なデザインもなんだかベテランって感じがするな。
更にメガネも付いて、ベテランの町娘だ。
「それで何の用かな?」
「えっとあの…玄関先の場所って?」
「…俺の所有地の畑だけど?」
なんだ?作物でも分けて貰いに来たのか?
それとも家購入者特有のイベント?
ってかあんなもの、色々な意味で売れないぞ?
「えと、ここの家主様って…?」
「俺だが?」
しかし、ちょっと回りくどいな。
なんで一々確認を取るんだ?
「何かウチの畑に用事でも?」
ちなみに俺のこの家には二つ庭がある。
今回耕した、表通りに面する小さい庭、そして裏庭だ。
様子を見て裏庭も耕地にしようか悩んでいたが…その時期は早まりそうだ。
「あの、実はこれを…育てて欲しくて…」
そう言って差し出してきたのは、なんかの粒…?
いや、種か。
「一つ貰って、鑑定してみても?」
「えぇ、はい」
一応断りを入れてから種を貰い鑑定を使う。
まぁここら辺はマナーだな。
勝手に覗き見したりとかはするもんじゃない。
まぁ遠隔距離で鑑定が使える程、探索のレベルが上がってないだけだがな。
それに交渉が前向きに進んでいる事も示せるだろう。
どうせ今育てられるのは大根に芋にトマトだけなんだし…
ハロウィン用のパンプキンくらい邪魔にならなきゃ問題はない。
・チーユ草の種 レア度3
チーユ草が花を咲かせ、見事に紡いだ次世代の命の結晶。
種を埋めてから一日半程で薬草として収穫できる。
どんな土地にも芽吹く能力はあるが、品質は土質と生育環境に大きく依存する。
また土質によって様々な性質を持つようになる特異な薬草の種でもある。
薬草としての用途以外に育てた土地に灰にして撒き、栄養が肥沃なだけのつまらない土質に戻すのにも使われる。
これまた風変わりなモノを持ってきたな。
レア度の割に、良い物じゃないか?
「中々面白そうな代物だな…」
「は、はい!それを育てて欲しくて…」
「ふーむ…」
ぶっちゃけこれを育てるのに反対はないんだが…
このまま、はい分かりました。と言って契約を成立させるのは不安だ。
こっちも慈善事業じゃないしな。
無料でやってくれるもんだと思ってましたぁ~(笑)なんてやられたら思わず畑の肥料にしてしまいそうだ。
ただでさえ土壌汚染の激しい耕地が更に汚染されてしまうのは避けねばなるまい。
ってか男女問わず、他人に無償の善意を要求するって奴は一定数居るからな。
そう言う奴かどうかを見極めるのにも、交渉は絶対いる。
それにこれは遂に来た…契約農家デビューという奴ではないだろうか?
いや、農家始めたのは昨日だが…
とにかく色々としっかり契約内容を詰めていきたいところだ。
「色々と聞きたい事もあるんだけど、いいかな?」
「えぇ、いいですよ!」
という訳で一旦我がホームにご招待する事にする。
しかしお持ち帰り的状況だと言うのに全く邪念も湧いてこないな。
まぁ…ゲームだし…
そういうのは現実でやってエンジョイするべきだな。




