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はてさて先程のセンチメンタルも過ぎ去り、収穫した野菜共を台所に持ってきた。
とにかく食べられるなら優秀なものではある。
だが、食う寸前に一芝居あるのは食欲も失せる。
という訳でそういう事は料理の段階でやってもらう事にして、いざ食べるときはすんなりと口に出来る様にしよう。
そういう目論見だ。
「アァ、ココマデカ」
「ダガワレラ、ジゴクノカマデニラレヨウトモ」
「ヤボウハツイエヌモノト、オモエ」
野菜共も、これから起こる出来事に腹を括ったようだ。
早速取り掛かることにしよう。
さて、今までは戦闘やら探索やらで散々コマンドを使ってきたが…
生産に関してはまた大きく違いがあるようである。
最初にコマンド枠に料理のコマンドを入れるのは変わらないんだけどな。
この場合は見習い料理か。
「クッキング!」
コマンド発動の宣言と共に、今度は新しくウインドウとインフォが出てきた。
(見習い料理を行います。使用する材料と料理キットからコマンドを選択して下さい。)
う~ん…やり方がイマイチ良く分からんな。
取り敢えず、料理に使う素材と調理キットの所が空欄になっている。
それぞれ5枠ずつ設定できるみたいだな。
取り敢えず野菜類は後回しにする事にして、料理キットには先日買ってきた携帯料理セットを選択する。
で、調理キットを選択すると、更に切る、焼く、炒める、そして煮るのコマンドアイコンが追加された。
これらの中から使うコマンドを選択しろって事か…?
取り敢えず、モノは試しだ。
材料にマンドラダイコンと、これまた先日買ってた塩を選択し、コマンドは切るのみ選択。
これでいってみよう。
で、選択して実行すると…適当に近く置いておいたマンドラダイコンと、インベントリ内の塩が一つと、料理用ナイフが目の前に出現した。
(それでは料理を開始して下さい!
なお料理を中断する場合は料理コマンドから料理中断を必ず選択して下さい。
また、料理中止時や失敗判定時は未使用の素材以外の素材は全て消失しますのでご注意下さい。)
え~っと、これだけ?
なんかもっとこう、思った通りに加工してくれたりとかアドバイスみたいなのがあると思ってたんだけど…
まぁいいや。
気を取り直して、料理をしていこうか。
つっても大根の浅漬けだけどな。
塩をすり込んでから食べやすい大きさに切って、終わり!
あれ、逆だったかな?
まぁ塩味の大根に加工すればいいだろう。
「オヌシガ、ワシヲキザムモノカ?」
ってか今回のこのダイコンってそこそこ小さいんだよな。
どれも市販で売ってる人参よりも一回り小さいくらいだ。
二十日大根が元ネタであろうフツカダイコンの、そのまた派生だしな。
「ムリハヨセ、テガフルエテオルゾ?」
この大きさなら、土さえ流したら塩をふってそのまま食べられそうだ。
つまり切る理由を感じられない。
なんでこれを選んだのか自分で自分に聞きたいが…まぁ、どんどんやっていこう。
「イヤマテ、オヌシ…マサカ…?」
適当な大きさに切った所で塩をガッツリと振って、もみ込むようにすり込んでいく。
「ダメダ!ヤメロォ!シニタクナイ!シニタクナァァイ!」
強者から弱者への即堕ち、まさに見事という他ない。
切られただけだとあのままあの口調で続けるつもりだったんだろうか?
ともかく塩を振った時点で命乞いを始めた。
あとちなみに、手は一切震えていない。
完全に言いたい事を口走ってただけだ。
それはともかくとして…浅漬けの完成だ。
完成品は、こちら。
・マンドラダイコンの浅漬け レア度4 作成評価4
料理効果:HP継続回復(極小)
ステータス補正(極小)
コマンド封印抵抗Ⅱ
暑熱ペナルティ低下Ⅰ
マンドラダイコンの浅漬け。
素材の一言に耐えながらも調理を成し遂げた、歯ごたえが楽しい一品。
このしょっぱさは塩分補給に向くだろう。
素材の痛みは早いので、早めに食べよう。
(条件達成により、破邪取得時に消費するアビリティポイントが大幅に減少しました!)
「…なんでだぁ!!」
言いたい事はあるけどまずはこの言葉が口から出てきた。
いや、タイミング悪すぎだろ!
なんで今出てくるんだよ!
思わず声を出してしまったじゃないか!
もう少し浅漬けにコメントしようと思ってたのに…
全て持ってかれたぞ?
おのれ…破邪め!
つーか何が原因で破邪の取得アビリティが軽減されたんだ?
野菜に塩振った料理作っただけだろ。
…ってあれか?塩か?
確かに塩って、聖なる効果がある的な話はあるけど…
だとしたら全ての料理人が持っていておかしくないだろ。
塩で邪悪なモノを祓ったとかなら分かるけどさ…
邪悪なものに心当たりが………
…
……
………
ナインダヨナー…




